2022年5月27日~28日 酒。読書。観劇。それだけ

私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。

たとえば、2022年5月27日~28日にかけて……

2022年5月27日

18:30 ブロードウェイミュージカル『RENT』 @シアターオーブ

2年間待ち望んだ公演である。
2020年は、『RENT』のJapan Tourだけでなく、シアタークリエでの日本人キャスト公演も中止に追い込まれてしまったので、本当に「ようやく」という感慨が深い。
COVID-19という新しいウイルスが世界中に蔓延している現在において『RENT』は、新たな解釈と共感が生まれる作品になったのではないかと思う。


22:00 近所の居酒屋→スナック

いい芝居を観た後は、真っ直ぐ家に帰るのが惜しい。
最寄り駅から近い居酒屋でビールを飲みながら、芝居を振り返る。

(食事のラストオーダーが終わった時間で、お店の好意で簡単なおつまみを出してもらった)

このお店は「洋風」と謳っている「居酒屋」で、だからなのか意外なのかは分からないが、ウイスキーの品揃えが凄い。
特にスコッチウイスキーの種類が豊富なのだが、ブロードウェイミュージカルを観た帰りなので、アメリカンウイスキー(バーボン)にする。

注文したのは「ワイルド・ターキー」

「ワイルド・ターキー」と言えば、昔、毎年年末に伺っていた岡山県岡山市のバーを思い出す。
今住んでいるところに当時あった焼鳥屋の高齢男性の常連さんの娘さんが嫁ぎ先の岡山で始めたバーで、「もし岡山に行くことがあったら娘の店に寄ってやってください」と言われて馬鹿正直に伺ったのが始まりで、以来、年末の帰省の折に、(わざわざ)岡山で途中下車して一泊するようになった。
必ず閉店後にオーナーであるその娘さんと深夜の食事をするのだが、年末ということもあり、忘年会や納会帰りの客でお店が混んでいることが多かった。
そんな時、私の前には「お客さんが帰るまで勝手にやってて」とターキーのボトルが置かれたものだった。
そのバーも様々な事情で閉店し、きっかけとなった焼鳥屋もなくなり、そして、その高齢男性も亡くなった。
そんなことを思い出しながらターキーを飲み干し、店を出る。

ほとんど食べていないので何か食べさせてもらおうと、行きつけのスナックへ向かう。
行きつけになった理由は、岡山でそのバーを営んでいた彼女が地元に帰省した折に、「あなたのボトルを入れたから今すぐ来い!」と電話してきたからだ。
それ以来行きつけになったお店のドアを開けると、何と、そこに彼女がいた!
コロナ禍になってから初めての帰省らしい。
聞くと、亡くなった父親(そのバーを紹介してくださった高齢男性)の7回忌だそうで、「それだけは絶対に実家でやる」と決心して帰京したのだそうだ。
偶然の再会を喜び、互いの近況を報告しながら、日付が変わるくらいまで飲む。
こんな運命的な再会ってあるんだな。
嬉しくてニヤニヤしながら帰途につく。


2022年5月28日

今振り返れば、「言葉」について考えた一日だった。

12:30 舞台『奇跡の人』 @東京芸術劇場プレイハウス

世界は「名前(=言葉)」で出来ている、ということを痛感する物語。

終演後、池袋から三軒茶屋に向かう途中、渋谷の啓文堂書店で本を物色し、目についた古波蔵保好こはぐらほこう著『料理沖縄物語』(講談社文庫、2022年。原書は1983年出版)を購入。沖縄に縁はないが…

18:00 舞台『青空は後悔の証し』 @シアタートラム

世界が「言葉」で出来ているが故、それが不完全であり、結局「言葉」では世界や自身は語れない、ということを痛感する物語。
プロデューサーとして普通にロビーにいらっしゃった小泉今日子さんにドキドキする。

20時過ぎに終演し、そのまま三軒茶屋から渋谷行きのバスに乗り、終点まで行かず途中下車する。

やっぱり、観劇の後は「お酒」である。

20:30 酒とさか菜

京王井の頭線・神泉駅の近くにある、日本酒をメインにした居酒屋。
このお店は、かつて、渋谷東急本店の向かいで「酒菜亭」という名前で営業していて、Bunkamuraシアターコクーンで芝居を観た帰りに寄ることが多かった。

その「酒菜亭」について、太田和彦著『新精選 東京の居酒屋』(草思社、2001年)を引用する。

主人は静岡の方で、酒も(略)静岡勢を中心に(略)全国の銘柄を揃えている。
(略)
数年前、静岡で「たかつか」という古い居酒屋に入り、風格ある店内と年配の優しい女将さんに、すっかり心なごんだことがあった。
「息子は渋谷で居酒屋をやってるんですよ」と言う女将さんに、それが酒菜亭とわかり、ときどきうかがいますと話すと、「ありがとうございます。息子をどうかよろしくお願いいたします」ときちんと手を前に頭を下げられ、恐縮してしまった。
(略)
しばらく間があいて酒菜亭に行ったとき、主人にこのことを話すと、「その母は先週亡くなりました」と言われ、胸がふさがれた。
店に顔を出す奥さんは、日本酒利酒師の資格をもっている。
(略)
酒も調味料も本物。一本筋の通った主人の姿勢は、客の信頼を得て今の時代にすっかり定着し、若い人も中年も確実にファンを集めている。

今日は、若者と女性客が多い。みんな、思い思いに日本酒を楽しんでいる。
カウンター席に案内され、まず「橋」(山口・酒井酒造)を注文し、静岡おでん(もちろん、黒はんぺん入り)をつまみに飲む。
2杯目の日本酒を選ぼうとして「冠馬」(島根県・簸上清酒合名会社)が目に留まり、「明日、日本ダービーだから」(私は競馬をやらないが……)と、女将にそんな話をしながら注文。
カウンターで話を聞いていたマスター(太田さんの文章では「主人」となっているがお店では「マスター」と呼ばれている)と、店員さん(具志堅用高氏のご子息)と暫し日本ダービーの話をする(繰り返すが、私は競馬をやらない)。
こうなったら競馬繋がりで、「十水とみず」(山形・加藤嘉八郎酒造)→「船中策」(高知・司牡丹酒造)→「ノ蔵」(宮城・一ノ蔵)と、お店にある、名前に数字が入った日本酒を全て注文(各100mlだから合計500ml……といっても、たかが3合弱じゃないか!)。
気分良くお店を出て、帰途に着く。
……翌日、当然、馬券は買っていない(一応、テレビ中継は見た)……



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