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2022年3月の記事一覧

2021年に観た映画(第31回 日本映画批評家大賞発表に想う)

2022年3月31日、日本映画批評家大賞の公式サイトにて「第31回 日本映画批評家大賞」が発表されたのを機に、私的レビュー(2021年版)もまとめておく(別に批評家でも何でもないが、何となくタイミングが良いかなぁ、と)。

第31回 日本映画批評家大賞作品賞

『偶然と想像』(濱口竜介監督)

主演男優賞

古⽥新太 『空⽩』

主演女優賞

瀧内公美 『由宇⼦の天秤』

助演男優賞

鈴⽊亮平 

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探していたのは「自分」~映画『リング・ワンダリング』~

探していたのは「自分」~映画『リング・ワンダリング』~

20世紀の終わりごろ、「自分探し」なるものが流行った。
『自分はどこから来て、どこへ行くのか』

ここで問われるのは、"事実として厳然としている"生まれ育った環境や、"どう生きてどんな最期を迎えるのか"といった「現実の自分像」とは無関係の、もっと根源的な「ルーツ」あるいは「魂」といった類のものだ。

その流行は、科学文明が高度に発達して、世の中のことは科学で説明がつく、という価値観が当たり前になっ

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フィルムに希望を託す~映画『焼け跡クロニクル』~

フィルムに希望を託す~映画『焼け跡クロニクル』~

2018年7月27日。京都・西陣の、ある家が火災で全焼した。

そんなナレーションで始まる『焼け跡クロニクル』(原まおり・原將人監督、2022年。以下、本作)は、その家の住人だった映画作家の原將人氏と奥様のまおり氏によって映画化された、一家の被災体験ドキュメンタリーである。

序盤、仕事中に「家が燃えている」と知らせを受けたまおり氏が家に戻る様子、既に鎮火した自宅、そして近くに避難していた家族の姿

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食べることは生きること~映画『あしやのきゅうしょく』~

元気が出て幸せになり、そして何より、お腹が空く。

『あしやのきゅうしょく』(白羽弥仁監督、2022年。以下、本作)は、そんな映画である。

「兵庫県芦屋市市制80周年記念」として製作された本作は、それ故ネガティブなことが起こらない、爽やかでハートウォーミングな物語である。
そんな本作こそ、心が重くなるようなことで溢れかえった今を生きる我々にとって最も必要な映画ではないだろうか。

タイトルが物語

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