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【毒親連載小説 #22】父とわたし 3

父が私の元に突然やってきて
「今、経済状態がよくない」。
そう一言切り出し、
あれこれとごちゃごちゃと
言いくるめられた。

そして当時、貯めていた
アルバイト代20万円を全て
持って行かれてしまった。

私はこの家で世話になっている以上、
父の要求に応じるほかなかった。

また、拒絶できる理由も
拒絶するという選択肢もなかった。

私は黙ってそのお金を
差し出すほかなかったが、
なんだか釈然としないような
悔しいような気持ちを
ずっと抱え続けていた。

私は父が一時的に
このお金を借りるだけで、
あとで返してもらえるのでは?
と勝手に想像していた。

しかし、父はまるで
何事もなかったかのような素振りで、
その後もそのアルバイト代が
戻ってくることはなかった。

私はその時の父の行動に
ずっとわだかまりを感じていた。

(何が悔しかったのだろう…?)

今の私にそう自問すると
「家のことは子供である私に言う前に、
 夫婦である母に相談すべきこと
 なのではないの?」
と思った。

また、私はお金を持って
行かれたことよりも、
もっと悔しかったことがあった。

それは、父がまるで私のことを
「自分の所有物」かのように扱う
その態度だった。

私が頑張って稼いだお金は父のもの。

だから持って行くのも当たり前。

そんな感じでアルバイト代を
持ち出されたことは本当に嫌だった。

父の私への「所有物扱い」によって、
私の自尊心はことごとく踏み潰された。

そんな「親の所有物であるわたし」に
自己肯定感や自尊心など存在する
余地などなかった。

いや、そんなものを持っては
いけなかったというのが正しい。

この父の私に対する扱いが、
私の父に対する根本的な
わだかまりの原因だったと思う。

この頃から父は、
お金がかかることに関して、
あからさまに表情を変え、
冷淡に反応するようになった。

この父のお金に対する
尋常ではない執着は、
確実に父と私、そして
家庭関係に亀裂が入り始めていた。

その決定的な出来事が起きたのは
高校3年の頃だった。

(つづく)

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