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【毒親連載小説 #9】母とわたし⑦

また、これは
小学校低学年ぐらいのこと
だったのだろうか。

これは本当に最悪な出来事だった。

また、あのいつもの夫婦喧嘩で、
母はお酒も入り、いつもに増して
感情的に暴れ続けていた。

酒の勢いもあったのだろう。
母は泣き叫びながらなんと
私たちの目の前で
首を吊ろうとしていた。

あのシーンは今でも脳裏に
こびりついて離れてくれない。

母は突然、椅子によじ登り、
リビングの天井にタオルか
何かの紐のようなものを吊るし、
その紐を握り締め私たちに向かって

「もう死んでやる!!!!!」

こう何度も泣き叫び続けていた。

小学校だった私は、
このただごとではないこの状況に

「もうやめてよ!!!ねぇ、お願い!!!」

と、椅子によじ登った母の足を
必死で掴み、泣き叫びながら懇願した。

世界でも有数な平和な国、日本。

しかし、
私の生きる世界はとてもじゃないが、
平和な国に住んでいるとは
到底、思えなかった。

いつ始まるか分からぬ面前DVを
ずっと受け続けながら、
ここは、平和な国の中に
ひっそりと存在する、
見えない紛争地域そのものだった。

私はこのいつ始まるか分からぬ
この家庭内の紛争に、
常に恐怖と不安に晒されながら、
かろうじて生き延びてきた。

(なんでこの人たちは離婚しないのだろう…?)

日常的にいがみ合う
両親の姿を見ながら、
私は小学校の頃から
ぼんやりといつもこう考えていた。

いっそ、離婚してくれた方が
私は幸せになれるのに…

夫婦喧嘩のつらさに直面するたびに
私はいつもそんなことを考えていた。

両親が離婚し、
解放された自分をイメージする。

そうやって自分を慰めていなければ、
とてもじゃないがこの生命を
つなぐことはできなかったことだろう。

(つづく)

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