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【毒親連載小説 #18】母とわたし 16

他にもうっかり
お味噌汁をこぼした瞬間に
バチーンと平手打ちをされたり、
私が失敗すると
容赦ない体罰が待っていた。

それは痛みというムチ与えることで、
私をコントロールする方法だった。

こんな風に母は、
弱くて抵抗のできない幼い私を、
まるで虫けらや畜生かのように
扱われてきた。

密室で誰も見ていないからと
こんな仕打ちをしておきながら、
自分がやったことはまるで
何もなかったことにかき消し
のうのうと生きている母を見て
私は心のどこかでずっと許せずにいた。

あの頃の母は、
良心の呵責もない鬼畜
そのものだった。

しかし当時、
自分には一人で生きる力などなく、
抵抗することすら許されなかった。

こんな人として
屈辱的な扱いを受けながらも、
この居場所のない家庭で
ただただ縮こまり、
親という仮面を被っただけの
鬼畜の顔色を伺い、
自尊心も何もかも全て投げ打って、
命乞いをしながら、
ただただ虫けらとして黙って
この家に留まり続け、命をつないできた。

(生きてて本当にごめんなさい)

私は母と暮らしているうちに、
次第に自分の頭の中で
こんなことをいい続けながら
理由なき罪の意識にさいなまれた。

そして毎日「理由なき懺悔」を
するかのように生きてきた。

私は一体、
生きているのか生きていないのか
さっぱり分からなかった。

それでも
この地獄のような苦痛の日々は
ただただ、続いていくのだった。

密室でだけ起きる「気づけない虐待」。

母親のこの尋常ではない行為も、
悲しいかな、
日常的に起こり続けることで
人間というのは慣れてしまうようだ。

私はいつしかこの
身体的、精神的苦痛から逃れようと、
感情の扉をバタンと閉じ
「感じる力」を封印した。

それは、この家庭に順応するため、
ただ生命だけをつなぐために
必要なことだった。

自ら死ぬことも選べない私は、
この肉体をかろうじて
生かすための苦肉の策だったのだろう。

(つづく)

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