「あなたは大事な人だから」
行きつけのお寿司屋さんでカウンターの席に座っていると、背後で
「あなたは大事な人だから、迎えに行くよ、あなたは大事な人だから・・・、あなたは大事な人だから・・・」という話声が聞こえてきました。
私とその方以外には客のいない小さな店内に「あなたは大事な人だから」という穏やかでやさしい声が何度何度も響きわたり、気になって仕方がありません。振り返ってみると、年配の男性が携帯電話で話をされていました。
会話が終わると店主が、常連と思われるそのお客さんに「どんな大事な人に電話してたんですか?」と冗談まじりに尋ねました。すると「男性なんだけどね。相手によって優しくなれるよね。」とゆっくりと話し始めました。
心のこもった「あなたは大事な人だから・・」を繰り返し聴いているうちに、私の心まであたたまり、顔も体もゆるんでいくのがわかり、言霊(ことだま)を感じました。
誰でも、自分のことを大事に思ってくれている人はいるでしょうし、自分にとっての大事な人もいるでしょう。しかし、その気持ちを言葉にして伝えることはめったにないのではないかと思います。
それどころか、大事な人との間でのいざこざ、行き違い、憎しみあい、といった人間関係の問題があちこちで起こっています。
多くの人は、自分の大事な人にはつらい思いをしてほしくないし、苦しんでほしくないと思うものです。だから、ついつい自分が良いと思うようにしてほしくなったり、相手をコントロールしたくなってしまいます。
しかし、そうされると相手は、”自分の気持ちをわかってもらえない”、”信頼されていない”、”自分は大事な存在ではない”、と感じて傷つくのです。こうして気持ちの行き違いが起こります。
自分の思い通りにしてくれない人にイラつくときは、「自分にとって大事な人だから、こんなに気になるんだよね」と自分の気持ちに共感すると少し余裕ができます。
そうすると、相手が本当に望んでいることにも思いを寄せることができるかもしれません。
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