Inside Sales is Art エンタープライズ領域におけるインサイドセールスの価値
どうも、印南です。
前回noteから2年経過しており、時の流れの速さを感じています。そんな私もSaaS業界に携わるようになり6年目を迎えました。知れば知るほど深く面白く、まだまだ遠いなと想いながら過ごしています。
私はマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスとCS以外のbiz側に従事してきましたが、直近3年間はインサイドセールスが組織を成長させる重要なレバーになりうると考えており注力しております。
SaaS黎明期から現在まで様々な経験をしてきたので、ここで一旦立ち止まって文筆したいと思い、重い腰を上げました。
今回はエンタープライズを例にインサイドセールスはデザインといったテーマで書き進めていこうと思います。本題に入るまで序章パートが長いです、かつ、私がこれまで感じたこと・考えていたことの言語化が主になっています。
全肯定せず全否定せず、読んでいただけますと嬉しいです。読者の皆さまに少しでもご参考になれば幸いです。それでは参りましょう!
■ インサイドセールスの認知度と地位の向上
SaaS型ビジネスモデルの台頭、THE MODELの浸透、そして大先輩である茂野さんを筆頭に様々な方々の発信*の影響もあり、ここ数年でインサイドセールスへの認知度と地位がとても変わった印象を抱いています。
SmartHRだと親愛なるくどぅ先輩が該当します。(freee時代からの愛称)
*特定の人だけではなく全員で発信したからこそ今があるので悪しからず
実際に、データでも変わってきています。
2018~22年までの5年間で最も求人の増加率が高かった職種が法人営業
2019~22年までの3年でインサイドセールスの求人数が12倍
大卒の文系学部の7割は営業職に就くと巷では言われていますが、その一方で営業職は辛い、大変だと言われている時もありました。
自分自身がずっとこの職種に従事しているからこそ、営業の概念が変わりつつあることを体感しています。※Googleの関連KWでもネガティブワードがなくて時代の変化を感じます
■ 日本市場におけるインサイドセールス導入率
COVID‑19の影響もあり2019年より増加傾向にあったが、今後鈍化するとのこと。
実際、私の周りでも訪問営業の方が「お客様の感情の機微を捉えられえる」「信頼構築しやすい」「シンプルに楽しい」という声も多く、これまで情勢的にインサイドセールス体制を敷いてきた組織は訪問営業へシフトしている印象があります。一方で、労働人口減少の問題は変わっていないので場所を問わない働き方を追求できるという意味では微増ないしは維持されていくのでは?と考えています。
※ 前提 オンラインセールスも含むデータではある
■ 売り手・買い手が考える好ましい営業スタイルとは?
売り手だけの視点になっていたので、買い手視点の話になります。買い手では「訪問」が39.6%とトップとなったものの、「訪問、非訪問のどちらでも良い」が37.9%を占め、高止まりしているとのこと。
上記のデータを見ると、商材・金額・承認ラインなどで判断基準は変わると思いますが、購買意思決定に関わることはまだまだ訪問ニーズが強いことが分かります。
だからこそ、訪問営業の前にどのようなアクションを求められているか?それは売り手視点ではなく、買い手視点に立ち、考える、設計することが重要だと思います。
お客様にとって自社商材を購入することは1つの手段ということを忘れては絶対にいけません。
p.s. リモート営業/オンライン商談が普及したおかげで、ブラックボックス化されていた営業の中身が可視化でき課題の特定やイネーブルメントに活かせたので、お客様主体ですがずっと普及して欲しいと思っています。
■ コミュニティの大海賊時代へ
セールスフォース・ジャパン様やスマートキャンプ様やインサイドセールスコミュニティ様などのコミュニティが有名な印象を持っていましたが、ここ最近、新たなアツいコミュニティが生まれてきています。それくらいこの職種が盛り上げっていることの裏っ返しだと思います。
■ インサイドセールスの役割の変化
インサイドセールスという職種が広まった一方で業界・業態などによってインサイドセールスの役割・定義を共通言語として語ることが難しくなってきました。
「商談創出」が一般的な役割として認知・普及していると思いますが前述の通り、業界・業態や事業フェーズによって変えることが重要です。
図のように「セリング」まですることもあれば、商談創出した先の「有効商談数」「パイプライン創出金額」「商談フェーズを前に進めるプログレッション」などさまざまな役割を設けている組織を見てきました。
つまり、「インサイドセールスの役割・定義は常に変化していくもの」という考え方も一般化してきたと言えるのではないでしょうか?
■ インサイドセールスはセールスである
THE MODELという概念が普及し、営業プロセスを分業制にすることで効率化・最大化を狙うという会社がここ数年でとても増えたことはこれまで述べた通りです。スタートアップ・ベンチャー企業に止まらず、富士通 様のような大企業までもが導入しています。
しかし、分業体制による効率化・最大化を意識しすぎるが故に部門最適化が進みます。マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスすべて営業活動の一環です。
部門最適化を意識しすぎると、特定の部門だけKPI達成しているが事業成長していないという結果がよく見受けられます。そのため、隣の部門で共通KPIを持ち、目的をブラさないように設計することもあります。
このパートで一番伝えたいことはTHE MODELの崩壊 は意図的に設計した方が良いということです。
職域を限定することで効率性は上がりますが、キャリアの幅や部門最適だけを考える受動的な人材を生む可能性があるからです。
インサイドセールスは、特に例に当てはまりやすいと思います。
そのため、マーケティング・フィールドセールスの部門間で落ちている課題というボールをインサイドセールスから拾いとり、自ずから広げていくことを推奨します。
さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
■ Inside Sales is Art
インサイドセールスに従事すればするほど深い職種だなと体感しています。SMB、MMB、EB*全てのtierを経験しましたが、マーケット、フェーズ、企業数、地場での影響度など変数によってアプローチ方法も確認する数字、内容も全く異なることを経験しました。
例えば、SMBは法人数的に営業のプロセス変数とその数字の後ろの意味を把握すれば大方はヘルスチェックできます、一方でEBの場合は法人数も限定的かつこの担当者とお話がしたいとバイネーム指定のケースが多く組織力学に基づいたアプローチや決算・予算取り・異動などのタイミングも重要です。
前述の通り、インサイドセールスはTierによって使う筋肉が異なるからこそ
マーケット攻略に何が必要か?
セールスが欲しいものは何か?
打ち合わせ~商談までの流れはどう設計するか?
いつだれとどこでなにをどのように伝えるか?
などデザインがとても重要になってきます。
今回はそのデザインというテーマで書き進めていこうと考えています。
*SmartHRのTier分類
14ユニットから構成
■ 思考OSをアップデートせよ!見えている世界が本質とは限らない
13歳からのアート思考からの引用になります。
アート思考とは「自分の内側にある興味をもとに自分のものの見方で世界をとらえ、
自分なりの探求をし続けること」だといえるでしょう。
末永幸歩(2020)「13歳からのアート思考」ダイヤモンド社 p39
この一文からインスパイアされました。見ているモノ・情報だけから判断することもとても大切ですが、見えていないことを想像する、意味を見出すことがそれより重要だと再認した瞬間でした。
営業現場では再現性は大事と言われていますが
具体を抽象化して汎用的な要素を洗い出す、という解釈をしている一方で、その要素を実行しても完全一致する結果にはならないです。
気付かないうちに、他人が定めたゴールに向かってしまうってこともあります。それは、深層で捉えられていないからだと思います。
営業活動で主語を自社で考えていると必ず見落としが発生します。人は見たいものを見る、見えているところだけで判断する癖があります。
インターネットが普及したした今、営業の価値とは?意義とは?を見出すためにお客様のことを考え抜くことが求められていると私は感じています。
われわれは買い手への営業プロセスの変化していることも理解すべきです。
世の中、欲しい情報は大抵の事はGoogle検索で見つけることができます。
また情報を見つけたらゴールと捉えがちですが1番重要なのはその先です。
顧客は何を求めているのか?どうしてそのようなアクションをしたのか?
そのアクションに対して、どのような営業活動を行なっているか、深層を考え抜くことが必要となります。
■ インサイドセールスという名前を変えませんか?
本当のインサイドセールスは内部・外部情報などを元に戦略を持って営業活動を行います。CRM、SFAを導入してこそ科学できる領域だと考えており、1日200~300件Callする活動とは別次元です。
しかし、内勤かつ電話で商談機会を創ることをインサイドセールスと呼ぶミスリードが起こっているのも事実です。
また、SDR/BDRの概念は重要ですが、本来の目的は、受注までのプロセスを如何に滑らかなデザインにできるか、そしてお客様の目指す方向へ伴走できるか が最重要だと考えています。
業界トレンド、組織力学、社内状況など内部・外部の情報を用いてwhy you・why you now・why you buy など5W1Hでデザインすること
戦略を持って行う営業活動のことを本当のインサイドセールスと私は定義したいと考えています。
■ Sales Design. という考えの誕生
前述の通り、商談~受注までのストーリーをデザインすることがインサイドセールスの価値です。インサイドセールスを追求すればするほど、PM(プロジェクトマネジメント)に近い感覚を持っています。
マーケティング~インサイドセールス~フィールドセールスの3部門を跨いで
お客様に出会う前から出会った後の対応まで設計することができるからです。
ただ商談を創る、という概念では生まれない発想です。
大事なことなので、もう一度。
商談~受注までのストーリーはデザインできる。
それが、Sales Design 。
■ エンタープライズ インサイドセールスはSales Designである
エンタープライズ営業であれば、外部情報をいかに活用するか?がとても鍵になります。上場企業が多く、外部情報が多いからです。
バフェットコード、異動ニュース、業界動向リサーチ、TDB企業サーチ、Sansan、FORCAS、業界地図、四季報、Strainerなど活用している企業も多いのではないでしょうか?
エンタープライズは人探しの旅と比喩されていますが、本当にその通りだなと思います、総合格闘技って表現も好きですが。
闇雲にアプローチし続けても、本当に話が前に進みません笑 カウンターパートが決裁権限を持っているかつ、その領域の担当という可能性がある企業群とは異なります。大手企業だと同じ部門に何十人と同じ職種がいて、業務をかなり細分化されています。
■ Account Plan is Sexy.
大学ノートでやる人もいれば、エクセル、Miro、whimsical、Quipなどツールは様々ですが、企業との商談履歴をアカウントプランという形で蓄積している企業も多いのではないでしょうか?
アカウントプランの考えはセールスだけに用いられがちですが実はアプローチ前の設計も重要です。インサイドセールスとフィールドセールスで同じものをみて、顧客にどのような価値を訴求していくか、考えていくことがとても重要になります。
下の図は一部だけ公開しますが、今度別でnote書きます。
■ 顧客フェーズを可視化するバイブス
アカウントプランを行うにあたり、とても重要なことはお客様の状態です。フォーキャストでA・B・Cと分類・管理することが多いと思いますが、主観ではなくお客様の状態でラベリングすることを弊社ではバイブスと呼んでおり、その運用を私が作りました。
上記の画像は当時作成したての物になります、今では全くの素晴らしい別モノになっているのですが、もともとは海外の事例を読んで着想を得たことをきっかけに数年前に自力で作ったものです。いま見るととても荒くて恥ずかしいのですが、今は優秀な仲間が改良に改良を加え、運用が進んでおります。
商談前、商談後の情報、その蓄積した情報という資産に加え、外部情報を用いて、デザインすることがインサイドセールスの醍醐味だと思いました。
■ 受注までのリードタイムが長いからこそ中間マイルストーンを指標化せよ
エンタープライズは商談数を積み上げれば受注数が増えるというわけにはいきません。(※他のTierがそういうロジックって話ではない)
受注リードタイムが数年なんて当たり前だからこそ、何を持って受注までのフェーズが進んでいるか判断する指標が重要だと思います。
コンカー様だと、PCR(Pipeline Creation Rate、パイプライン創出率)*や4部署6役員との接点創出
セールスフォース・ジャパン様だと02数・02パイプライン・ACV(Annual Contract Value:年間契約額)を追っていると聞いたことがあります。
前述のバイブスを指標にいかにお客様の状態をプログレッションしたか、なんかも指標にしてもいいかもしれません。
セールスがほしいものであり、ビジネスインパクトがある指標、短期と中長期両方の側面から設定していくことが重要です。
* 有効リードやパイプライン(営業における「案件獲得〜受注」の一連のプロセス)の進捗率を表す指標。
■ まとめ
長文でしたが、最後までお目通しいただきありがとうございました。冒頭の通り、これまで感じたこと・考えていたことの言語化が主になっています。少しでも皆さんにとって有益な情報になっていたならば幸いです。
インサイドセールスで相談したい、壁打ちしたいとかあればお気軽にご連絡ください!
p.s 次は、インサイドセールス視点の商談デザインの話を執筆します、多分。
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