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何かになるための一歩「数分間のエールを」 感想

はじめに

ずっと見たかった「数分間のエールを」!
もう告知の段階でテンション爆上がりで、絶対見る!と決めてました!

そして、公開と同時に最寄りの映画館を確認すると
上映なし。
都心部の映画館も
上映なし。

そこから40分ほどバスで移動した映画館に
やっと上映されてました!
移動代往復で1400円。
サービスデイの映画一本見れます。

しかしそんなことはどうでもいい!
マジで最高の映画でした!
いつもどおり、感想というか感じたことを書きなぐります!

タイトル「数分間のエールを」の意味

まず、見終わって最初に思ったことですね。
考えなくても気づくことなんだろうけども。

何かを作り上げるクリエイターさんや、私のような何も作ったことのない人間の背中を押してくれる素敵な映画だったなと感じました。

主人公の彼方くんは、MVがその音楽そのものの応援になっている
と語っていました。
つまりMVがその楽曲の「数分間のエール」ということ。
そんなMV作りを物語の中心にすることで、この映画そのものが
ものつくりに関わる人たちにとっての「数分間のエール」になってる。

まじで最高。
なにも作ってない自分みたいな人間でも「明日何か作ってみようかな」とか感じてしまうくらい、背中を押されてしまった!
というかこの映画の感動を誰かに伝えたくて、感想文を書いてしまっている!


登場人物たちについて

この約1時間の作品の中に、モノづくりに対して様々な考えをもったキャラが登場します。

・ものづくりの楽しさを知り、夢中になっている彼方くん。
・ものづくりに挫折し、諦めて別の道を進もうとしている夕さん。
・才能ゆえに評価され、自分のやりたいことを見失っている外崎くん。
・今まさにものづくりに夢中であり、正面から向き合っている萌美さん。

これらの登場人物の一人一人に
色んなものづくりへの向き合い方が描写されていて
見る人によって、感じ方が異なると思う。

劇中の失敗も成功も、結構リアルに描かれていて
共感するひとには、深く突き刺さると感じました!

主人公 彼方くん

「自分の作ったもので、誰かの心を動かしたい」
という初期衝動をもち、それが出来ると信じて疑わない主人公。

高校生からMV作りを始めていて、すでに何作か作っている。
モノつくりの楽しさに魅了されていて、その先の成功を信じて疑わないからこその彼のとてつもない行動力は素直に尊敬する。

でもそれは時に、無神経にも見えるし、夢見がちな子供に見える。
周りがあそこまで自分のモノつくりに悩んでいる分、なおさら彼のまっすぐさは幼稚にも楽観的にも見えました。

夕先生のMVを作るシーンでは特に感じてしまった。
「自分が感動したからMVを作らせてほしい」とか
「過去のライブ映像を無断使用して勝手にMVを作る」とか
「音楽をやめると明言している先生の気持ちを自分の作品で変えようとする」とか
「自分のMVで成功を掴んだ先生を妄想する」とか

かなり無神経というか。結構失礼。
外崎くんが、それを近くで感じているからこそ余計に思ってしまう。

だからこその最後のシーンなんだよな。
自分の思いだけでなく、先生の本当の思いをくみ取って
それでも先生の応援をしたい。
先生の曲のMVを作りたい。
だって「好きだから」。

子供じみた理由かもしれないけれど、でもモノづくりで一番大切なことだし、色んな人の原点だと思う。
それを思い出させてくれる、とても魅力的な主人公でした。

夕先生

主人公とは対照的で、モノづくりを諦めてしまった大人。
色んな意味で現実的だし、ずっと冷静。
というか、かなり冷え切っていた印象。
自分の大好きだった音楽で思うように結果が残せず、
別の道に進んでいる。

常に冷え切っている印象の彼女ですが、歌の時は真逆の印象なんですよね。
最初の雨の中の弾き語りもそうだし、ライブの時もそう。
泣きそうなくらい感情を爆発させて歌っている。
彼女の本気の感情が音楽にあるということが伝わりますね。

彼女は劇中ずっと音楽を諦める理由を探している気がする。
「音楽をやめた」とずっと言葉では言っているけど、まだ終わってなくて 彼女なりの終わり方を探していた印象。

雨の中のライブ→誰も見に来ないならやめる
MV制作→どうせ最後ならせめて形に残したい
彼方くんをライブに誘う→自分の曲を好きだと言ってくれた人に最後を見てほしい。

こんな感じだと思うけど、ことごとく音楽を続ける理由を彼方くんが持ってくるんだよな。
そこが面白い。
彼女にとって初めて面と向かって肯定してくれた主人公の存在は、自分と真逆の存在だし、過去の自分でもある。
それを見続けるのは、夕先生にとって苦しいよな。まじで眩しい。

そんな眩しい存在の彼方くんを、自分のモノづくりの終わりに付き合わせることは、彼の未来を奪ってしまうかもしれない。
そんなことも思ったんじゃないかな。
まだモノづくりの素晴らしさに気づいたばかりの少年に、モノづくりを突き進んだ先の現実を見せることにもなるから。

そんな彼女が、彼方くんが最後に作ったMVを見て
もう一度音楽に向き合うことになる。
昔の自分を見て、モノづくりの原点を思い出す。

もうね、泣いちゃうよ。あたしは。

外崎くん

この作品のバランサーでもあり、MVP。
トノです。
こいつ嫌いな奴いないだろ。人間的魅力にあふれすぎている。

実は現在進行形で苦しんでいる男。
県知事賞をとったことで、絵の才能があると分かり、絵を書いている。
彼のバックボーンは詳しく語られていないけれど、才能があるからこそ苦しんでいるんだよな。
中盤に主人公に才能があることを妬まれて色々言われてたけど
それに対して「自分が何を書きたいのかも分からない」って言ってた気がする。


個人的に、彼は絵を書くことが特に好きではないと思う。
彼の51個もあったスケッチブックや、動物や人間の筋肉の動きに芸術作品など色んなジャンルのものが書かれていたことから、まだ彼は自分探しをしている最中だと思う。好きなもの探し。もしくは、理由探しかな。

才能があるから、周囲から「絵を書くこと」を期待されてたんだろうけども、実はそんなに好きではない。でも続けなくちゃいけない。
だから、あんなに色んな絵を書いてみて、自分が好きなものを探していたのかも。
周囲の評価と、自分の気持ちの板挟みになって苦しんでいる。

こう見ると、「好き」が原点でものづくりをしている他の登場人物とはかなり対照的な人物。
夕先生は「やめる理由」を探していたけど
外崎君は「続ける理由」を探していた。

でも劇中できっぱりやめて、別の道を探してる。
それがどれだけの決断だったんだろう。
自分にはわかりません。生半可じゃないことは分かる。

主人公は彼のことを、夕先生と同じ「自分の先にいる人物」と感じていた。
確かに、モノづくりの才能があるし、その先の苦しみを知っているので間違っていないと思う。
でも、外崎君からすると、
「好きだからモノづくり」をしている彼方君も
自分の先にいる人物でもあるよね。

夕先生が彼方君を過去の自分と重ねて眩しいと感じていたように、
外崎君は自分の好きを見つけて突き進む彼方君を見て眩しいと感じていたのかも。

最終的に彼は、絵の道をあきらめて大学受験を選んだけれども。
別にこれは、諦めたわけではなく、新しい道を探している。
もしかしたら、その先に外崎君にとっての「好き」に出会えるかもしれない。
もしかしたらそれは、自分がそんなに好きではなかった絵の道かもしれない。
誰かの評価を気にせず、自分が書きたいと思って描く絵は、彼にとって新しい道だと思います。
彼の幸せを願ってます。

追加↓
おい!来場者特典にちょっと書かれてる!
すごくうれしい!
頑張ってー!


MVについて

最初に作ったMV

彼方くんは先生の曲を聞いて、感動してMVを作りたいと話す。
彼の視点だと、あの曲を聞いたときの感動をそのまま表現してる。
あの音楽を作った先生の想いはほぼ度外視してるんだよな。

実際に、彼方くんはMVを作ることで、
「先生がまた音楽をするようになる」
「先生が音楽で成功する」ということを目標にしてる。

これは、漠然とした成功を夢見た子供の妄想ともいえる。


完成したMVは彼女のこれからの幸せな未来を描いていると感じた。
MVに出てくるキャラは、先生と真逆で勝ち気で真っすぐ。
荒唐無稽な世界に抽象的な成功のイメージ。
具体的なものはあまりなく、高い塔に登るというふんわりした目標。
彼女は、必ず成功するというなんの確約もない映像にも感じられました。

それは、かつてそれを目指して挫折した先生からすれば眩しすぎる。
だからあんな感じになったんだろうな。
というか、自分にとっての終わりの歌に、希望に満ち溢れた映像つけられたら頭おかしくなるだろ。

萌美さんに作ったMV

彼方くんの作ったMVが自分の考えるものとは違っていたことを言ってくれる萌美さん。
でもそれが悪いことではなく、
自分でも気付かない曲のイメージや良いところを見つけて、肯定してくれる。応援してくれるものだと気づかせてくれる。
これは、彼方くん自身が最初から言っていたことなんだよな。

最初に作ったMVでは、自分が感じた感動と勝手に思い描く理想を押し付けてしまい、曲に込められた思いやメッセージ性が薄くなってしまっていた。

というか、「先生の曲のすごさを伝えたい」とか「すごいMVを作って先生の気持ちを変える」という彼方くん自身の勝手な思いでMVを作っていたから、あのテイストのMVになってるんだよな。
音楽に寄り添って応援するはずのMVが、彼方くんのエゴを押し通すものになってしまっていたと感じました。

最後のMV

自分がMVを作る意味を再認識し、
夕先生の今までの100曲を聞いて、彼女の想いに触れて作り上げたMVは、

最初挫折して去っていく何者か
それでもしがみついて書き続ける女の子
周りから人は居なくっていき
泣いて傷つきながらも書き続ける
そして、最後の笑顔

こんな感じだったと思う。

最後以外は、先生の思いやこれまでのことを描写していると思う。
好きだから続けた音楽だけど、誰にも評価されず、気づいたら周りもやめており、泣きながら音楽をしている。
絶叫しながら作品を作る姿は、あの時雨の中で歌っていた先生そのものだと思う。

でも最後の笑顔は違う。
この笑顔は、応援なんだよな。
先生に対する彼方の笑顔だし、先生に笑っていて欲しい。
ものづくりの楽しさを思い出して欲しい。
彼方くんから先生へのメッセージ。
と思った。

こう考えると
最初のMVは先生の「これから」を表していて
最後のMVは先生の「これまで」を表していると思う。

最後のMVで夕先生のこれまでを肯定したからこそ、彼女はこれからを見ることができた。
途方もないこれからではなく、歩いてきたこれまでを見ることで
自分を肯定する。そんなMVだったと思う。

それはそれとして、あのレベルのMVを作る彼方くんマジでやばくない?
1人であれとかとんでもない才能だと思うけども。

あのMVに批判コメついてるけど、そこもリアルだよな。
変に評価されたり、バズったりせず、慎ましく終わる。
マジでリアル。

でもあのMVはとんでもないと思う。


最後に

マジで、いつも以上に自分勝手な妄想を書き連ねているんだけども。
そのくらいこの作品には熱量があるし、もっとみんなに知ってほしい。

自分の駄文では何も伝わらないかもだけど、
この映画が好きだから
この感想分を書くことをやめられませんでした。

もっと見てくれええええええええ!

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