７時

はるか遠くの波は　止まって見えて、まるで
水平線も動いていないみたい、この世界で、
輪郭線が見えるのは、きれいに見えるのは、
よく見えていないからだと　あなたは言った
 
海を見たら、思い出すのは、遠いうしろ姿、
今日ここで　ぜんぶ、ほどくと決めたことも
知らずにいつも　遠い人、見つめたら滲んで
 
影を　海鳥がわたる、水溶性のわたしたちを
なんの不思議もなくすり抜けて、ここちよく
混ざる、胸の奥。ずっと寂しかったのだから
今日は一緒に海をわたる、口にした途端に、
動く、もうひとつの予感を追って、ここには
いない　わたしの、となりにいる　あなたに
届けたい檸檬の香りでいっぱいの水、波紋の
ように広がって、口にしなかった言い訳にも
染みわたる青い光に震えて触れた水平線の幻
 
ふりかえると　ほら、海辺にわたしたちが、
座り込んでいる、ほんとうはここにいること
まだ知らない　ふたりの姿を静かに波間から
見てる、止まってるみたい、まるで動かない
素振りで　ゆれて　滲む顔、かわいいと思う