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光風



見なくてもいいと うなずいた
視線の先に
映る
僕だったものたち
 
指の腹を鉛色に染めて
めくるページ
 
夕焼けを
突き上げて
膨らんでいく背中、黒く燃えて
ほどける指先ではもう
拾い上げることのできない贈り物に
まだ触れていたい、
絶えず
生まれ続けて
忘れられていく祈りの外に
囲い込まれた僕を、逃がしに行くとき
春の風に紛れて贈る、火が
星ひとつない夜に 間に合いますように、
探すのをやめた接ぎ穂が
散らばった廊下に射す 光が伸びてくる
 
また人間を
数えようとしている指先を
背後から照らしてる、
よく
かたちを見て
描く、
着地する永い白紙をあたたかく
染める灰






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眠れない夜に

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