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飛花



伝う雨
今日も、
私以外の
感性が
うずくまる心音に流れて、薔薇の庭で生まれる
畳まれた翅の
音が、
開く前に薄い表皮のどこかに綺麗な
光を見つけて破った
 
雨を
確かめたくてカーテンを開ける、自分の
選ぶ言葉に沈んだ
見えない光、
砂のベールを抜けて
春の
花から戻った翅の音が六角の窓で結ぶ、夢を
現実と呼んで、
どうしようもなく
静まり返った世界の呼び名は
なにも決めずにいる
 
君が哀れむ幸せに
呑まれて、
名を変えた全ての さびしさを今夜
孵しに行くとして、落ち合える
保証のない、きのうまで
壊すために備わっていたはずの無口な宝石を今
どんなやさしさで
沈めて、浮かんでいますか
 
君のような
私に
話しかけている、大丈夫、遠いどこかでは幻と
呼ばれているから、どんな
春のことも






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眠れない夜に

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