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スパイン・ザ・リベンジャー

闇の中から伸びて来た巨獣の爪先がおれの腹に突き刺さる。おれは悲鳴をあげながら吹き飛ばされ、血と吐瀉物が地面に撒き散らされた。体が動かない。巨獣は笑い声をあげながらゆっくりと歩いてくる。

死にたくない。おれは記憶を辿った。何かないか。なんでもいい。その時おれの脳裏に閃いたのは集会場で老いぼれが語ったまじないだった。畜生。そんなものしかもう頼るものはないのか。巨獣がおれの前に立った。殺される。おれは最後の力を振り絞り、自分の血と吐瀉物で『転送紋』を描いた。助けてくれ。

瞬間、おれの目の前に闇を纏った禍々しい怨念が姿を現した。

-男は突然の出来事に震え上がった。今しがた踏み潰してやろうとした野良猫の前に、手足の無いおぞましい異形が姿を現したからだ。その血濡れの頭は自分がこれまで手にかけた猫の頭蓋骨を思わせたが、何も無い眼窩の奥からぞっとするような憤怒と殺意が感じ取れた。

声が響く。
『裁きの時だ』

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞 #小説

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