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25年愛する推しキャラについて[復元]

この記事は、9月16日(木)にアップした記事の再投稿(復元)です。元記事は誤操作により削除してしまいました。元記事をご覧いただいたみなさま、SNS経由で読みに来たのに削除されていてガッカリしたみなさま、大変申し訳ございませんでした。

30代半ばでマンガやアニメ、ゲームに夢中になっていると、知人から苦い顔をされることが時々ある。それは「いい年して……」という呆れからくる表情だろうか。あるいは、相手の反応などおかまいなしに熱っぽくオタクカルチャーを語る中年男の無神経さと痛々しさに、不快感を抱いているのかもしれない。

特に後者は友達がいなくなるので猛省する必要がある。だが、今回はその話をするためにnoteを開いたのではない。なぜ自分はそんな嗜好を持ち続けているのか。そしてそれを通じて何を得ているのか。ふと気になったのだ。

この謎を考える上で、私が愛してやまない作品たちを一つずつ紹介する方法は有効であろう。しかしながら、そんなことをしていては収集がつかなくなるのは目に見えている。そのため、便宜上この記事では具体的な対象を定め、話を進めさせていただく。

ということで、ここからは私の「推しキャラ」について語らせてもらおうと思う。早速、前述した無遠慮な情熱を振りまいてしまう点は、あらかじめ謝っておきたい。なるべく手短に済ませるつもりなので、少しばかりお付き合いいただければ幸甚だ。

【注】
以下、『ファイアーエムブレム 紋章の謎』に関する若干のネタバレを含みます。また、掲載している画像はいずれもNintendo Switch Onlineからのキャプチャーです。

■カチュアと永久機関

さて、私の推しキャラとは、『ファイアーエムブレム 紋章の謎』に登場する、「カチュア」というキャラクターである。

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『紋章の謎』は、1994年にスーパーファミコン用ソフトとして任天堂から発売。日本を代表するシミュレーションRPGであるファイアーエムブレムシリーズの第3作目にあたる作品だ。

カチュアはプレイヤーが操作可能な味方ユニットで、主人公であるマルス王子の仲間になり、共に戦うキャラだ。ペガサスにまたがり戦う姿から、姉・パオラ、妹・エストと合わせて、マケドニア白騎士団のペガサス三姉妹と呼ばれている。

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私は昔からこのカチュアというキャラが大好きである。好きなゲームキャラと言われると、真っ先に名が浮かぶ。他のゲームで自由に女性キャラの名前を付けられる時は、結構な頻度でカチュアにする。『紋章の謎』を初めてプレイしたのは確か1996年ごろだったはずなので、かれこれ25年間は推しキャラの座に君臨していることになる。

これは別に、私が青い髪のキャラクターに執着しているとか、ボブヘアーに異常なこだわりを持っているとか、多分そういうわけではない。ほかのマンガ・アニメ・ゲームで好きなキャラの傾向を見ても、そういうことではないはずだ。

では、なぜカチュアが好きなのか?これまで自分でもうまく説明できなかった。そもそも『紋章の謎』は、スーファミ時代の限られた容量で作られたゲームなので、キャラを深堀りするエピソードや美麗なグラフィックが潤沢にあったわけではない。カチュアはゲーム内でかなり優遇されている方だとはいえ、全セリフを足してもたった603文字(※)しかない。原稿用紙で1枚半相当の文字数から、25年も続く情熱が生まれたとは自分でも驚きだ。いったいどんな永久機関が働いているというのか。

※参考:ゲーム攻略サイト 天馬騎士団 かわき茶亭_『紋章の謎』会話集

■散り際に、健気さ

というわけで、ここからはカチュアについてさらなる深堀りを行いたい。

最初に言っておかねばならない大前提がある。カチュアはヒロインではない。『紋章の謎』にはシーダ王女というヒロインがいる。第2部(※)ではマルス王子とシーダ王女は婚約し、彼女こそ揺るぎなき正妻ポジションだ。

※『紋章の謎』は第1部「暗黒戦争編」と第2部「英雄戦争編」の2部構成。

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一方カチュアはというと、マルス王子に叶わぬ恋をしている。また、前述した通り、カチュアのセリフは1部と2部を合わせても603文字のみ。そんな短い尺で、マルス王子へ思いを募らせるシーンを丁寧に描写したり、シーダ王女とヒロイン戦争をバチバチやりあったりなど、できるはずもない。(マリーシア?知らない子ですね)

しかしそんな中でも、カチュアの秘めた思いをうかがえる箇所は、二つだけ存在する。

1つ目は、「死にゼリフ」だ。ファイアーエムブレムシリーズは味方キャラのHP(ヒットポイント)が尽きる、すなわち死亡した場合に固有のセリフが用意されている。忠誠を誓ったマルス王子への言葉、家族への謝罪など、数行程度ではあるがキャラによって様々な言葉を遺す。なんなら通常のセリフは一切なく、死にゼリフしか用意されていない半モブ扱いのキャラもマジでいる。

その中でも、カチュアの死にゼリフは極めて印象的だ。603文字の限界を軽く越えてくる。第1部・第2部それぞれの画像を用意したので、ご覧いただきたい。

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第1部でカチュアが遺す言葉には、主君であるミネルバ(マケドニア王女)への忠誠心が見てとれる。ところが、暗黒戦争編から約2年経った英雄戦争編では、右の画像の通りになる。この戦いでカチュアが主君を鞍替えしたとかではなく、引き続き彼女はマケドニア白騎士団の一員だ。にもかかわらず、死に際にマルス王子の名を口にするのである。

彼と出会ったばかりのころ、芽生えていたかすらわからない微かな思いの種が、戦場で並び立つ中で、確かな恋心へと育つのだ。なんといじらしいことだろう。当時の私は、叶わぬ思いを心に秘めるカチュアの健気さに惹かれたに違いない。

■ノーチャンスという事実

しかし前述した通り、マルス王子にはシーダ王女という約束された相手がいる。二人の関係はストーリーの流れからも明白な事実なのだが、加えてゲームシステム上でも裏付けられている。そのシステムはカチュアの片恋の確たる証拠ともなっており、それが2つ目のポイント「支援効果」だ。

この支援効果は、ファイアーエムブレムシリーズの一つの特徴とも言える。支援効果システムとは、恋人や家族あるいは主従関係といった深い仲のキャラが近くにいるとき、味方ユニットの各種パラメータ(命中率、回避率、必殺率)が上昇するというものだ。ちなみに『紋章の謎』のころは隠しパラメータだった。

当然のことながら、マルス王子とシーダ王女は相互に支援効果を与える関係だ。ところがゲーム内には、思い人が近くにいるとき自分のパラメータは上がるが、相手はなんの恩恵も受けない、という現象も発生する。カチュアとマルス王子の関係もその内の一つだ。つまり、カチュアはマルス王子が近くにいるとパワーアップするが、マルス王子には何の変化もない。ゲームシステムにおいてもカチュアの片思いがはっきりと示され、しかもそれがノーチャンスであると決定づけられているのだ。

くどいようだが、わずか603文字しか与えられていない世界では、物語をプレイヤーの想像で補うしかない。むしろ、初期のファイアーエムブレムシリーズでは、それこそが楽しみとなる場合さえある。カチュアはその想像の余地がゲーム中に仕掛けられたキャラであり、「私はマルス王子のそばにいることができれば、それでいいの…」と言わんばかりだ。それがなんとも儚く健気で、プレイヤーの愛着を生むのである。私はその仕掛けにまんまと捕らえられた一人なのだ。

■強キャラゆえの絶大な信頼感

ただし、片思いという視点で『紋章の謎』を切り取ってみると、カチュア以外のケースも存在する。例えば、カチュアの姉パオラは、マルス王子に仕える騎士・アベルへ好意を寄せている。しかし、アベルは三姉妹の末妹であるエストと恋仲なのだ。姉妹による三角関係だから、なんならカチュアよりも複雑と言えよう。

そんなシチュエーションを横目に見つつも、私がカチュアを推す理由は、味方ユニットとしての有用性にもある。姉妹のパオラもエストも非常に強いキャラに育つのだが、姉のパオラは上限レベルに達した時の強さがカチュアと比べて見劣りすることが多い(※)し、妹のエストは登場がずいぶん後半だから育てるのに手間が掛かる。

※ステータスの伸びは乱数で偏りが出る上に、アイテムである程度の調節は可能なので、あくまで筆者の経験上の感想。

カチュアは登場のタイミングも良く、さらにステータスのバランスの良さも一歩抜きん出ていて、ゲームキャラは強さこそ重要だと考えていた小学生の私が愛着を持つには、十分すぎる条件が整っていた。そして、カチュアはその愛着に応えてくれるかのように、何周プレイしても毎回最強キャラの一角に育ってくれる、とても頼もしい存在だったのである。

しかも、先ほど述べた一方通行の支援効果さえも、カチュアの有用性をますます補強する役割を果たす。彼女はマルス王子のほか、重要キャラであるミネルバ王女からも支援効果を受けられる。二人のキャラ(しかもストーリー上ほぼ必須のキャラ)から支援効果を受けられるのは『紋章の謎』において大変有用なのだ。こと恋愛面では切ない事実を突き付けてきたこのシステムも、シミュレーションRPGを進める上ではカチュアの強さを増幅している。そんなアンバランスな立ち位置もむしろカチュアの魅力とさえ感じてしまう。

余談だが、この支援効果システムは、ルール上の制限を設けて遊ぶ、いわゆる「縛りプレイ」ではとても世話になる。かつて「マルス王子のハーレム旅」とかいう頭の悪そうな縛りプレイをしたときに、このシステムにはずいぶん助けられたものだ。

■推しキャラは精神に宿る

ここまでカチュアというキャラの魅力について、いじらしい思いを抱えながらも戦う姿に「健気さ」を感じること、そしてプレイヤーをゲームクリアに導く強キャラたる振る舞いに「頼もしさ」を感じることを説明してきた。

「健気さ」と「頼もしさ」というのが25年続く情熱を生む原因だと述べると、「何だそういう話か」と肩透かしをくらう読者がいるかもしれない。しかし、私は自分のことながら妙に納得させられてしまう。なぜかというと、ふだん私はよく似た感情をお気に入りの家電などに対しても抱いているからだ。

例えば、ボロ家の水回りにはびこる湿気を吸い取るシャープの除湿器が、小型ながらもパワフルに稼働する姿には健気さを感じるし、今この記事を打ち込んでくれているThinkPadには、相棒のような頼もしさを抱いている。

この気持ちは、ペットやぬいぐるみに寄せる愛情とは少し違うようにも思う。私は実際にペットを飼ったことがないから想像でしかないが、ペットとは癒しをもたらしてくれたり、そばにいてくれるだけで満たされた気持ちになったりする存在ではなかろうか。私が除湿器やノートパソコンに抱く感情とは少し異なる。

以前、ある有名なデザイナーが「機械に抱く、付喪神(つくもがみ)的な感情」について語っていたことを思い出す。長年大事にした物にはやがて霊魂が宿るのだ。同氏は、時間を掛けて連れ添った機械にも愛着や信頼感は芽生えるのだと語っていた。私はこの考え方に深く共感する。

私はお気に入りの家具・家電やデバイス類に対して、ふだんから愛着や信頼感を持って接している。なんとなくそこに魂が宿り、相棒として私のことを支えてくれるような気がするのだ。もしかすると、25年前にカチュアが推しキャラとなり、愛着や信頼といった、物(あるいは者)に対する豊かな感情を覚えたことが、ほかの対象への接し方に波及したのかもしれない。

キャラクター論・ヒロイン論では、現実世界のメタファーとか、自分の理想や欲望を満たしてくれる代替物としてキャラクターを語ることがしばしばあるが、私はそういう理由でカチュアを推しているのではない。まして、愛情を注いだからといって、本当に100年後に自分のもとへ実体化して現れるとはさすがに考えていない。ただ、先ほど述べたように、おぼろ気な神聖性を帯びて、私を支える守護霊のような存在となってくれている気がするのだ。その畏怖の念はカチュアに限らず、これまで琴線に触れた作品に登場するキャラ、あるいは物語そのものに対しても抱く感情だ。つまり、精神の中に根付く推しキャラや忘れられない物語は、時には自分を支え、時には感情を豊かにしてくれる霊的な存在として昇華する、というのが私の考えだ。

そう考えると、私がさまざまなゲームやマンガ、アニメに触れれば触れるほど、心は豊かさを増していくはずだ。愛すべき推しキャラや物語に触れることは、これからも暮らしの色彩をより鮮やかにしてくれるに違いない。そんな彩りを与えてくれるコンテンツを私は愛してやまないし、それを生み出してくれるクリエイターや、出版・流通なども含めた関係する全ての人たちへのリスペクトの気持ちは尽きない。そして今日も、私はありがたくコンテンツを楽しむのである。

■あとがき

こんな昔のゲームでもキャプチャを使いながら解説できたのは、私がNintendo Switch Onlineに加入しており、昔のゲームを遊び倒せる環境にいるからである。ここまで話した内容を振り返ると、実家で埃をかぶっているスーパーファミコンの実機で、当時のロムを使いながら語るのが筋かもしれないが、そこはご容赦いただきたい。

ちなみに、この記事を書こうと思ったのは、先日Nintendo Switch Onlineの自動引き落としのお知らせが届き、加入2年目に突入したことも契機になった。年間2,400円(個人プランで12カ月契約の場合)というグレートなコスパで遊ばせてくれる任天堂様には、最大級の感謝の気持ちを表したい。

みなさんも、この機会に同サービスに加入してみてはいかがだろうか?
そして『紋章の謎』の推しキャラの話や、次作である『聖戦の系譜』のカップリング論争などに花を咲かせようではないか。……と、露骨な勧誘をしたところで、この文章を終えようと思う。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ところで、そろそろゲームボーイアドバンス時代の作品もSwitchでできるようになりませんかね?

*Fin*

[参考Webサイト]
ゲーム攻略サイト 天馬騎士団(かわき茶亭)
アニオタwiki(仮)

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