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山梨県大月市でフィールドワークをしています。対象は歴史、文化、自然などなど。

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山梨県大月市でフィールドワークをしています。対象は歴史、文化、自然などなど。

最近の記事

浅利式部鬼退治

 最近、昭和34年に刊行された『大菩薩連嶺』という本を入手しました。  大菩薩連嶺とは、大菩薩峠から笹子峠まで連なる山脈のことで、この本には、作者、岩科小一郎氏のグループが昭和10~20年頃(推測です)に大菩薩連嶺とその周辺地域で行った近世・近代の資料調査(地誌や石造物など)や現地での聞き取り等の成果がまとめられています。  今では聞くことのできない話なども収録されていて興味深いのですが、なかでも個人的に興味をもったのが「浅利式部鬼退治」という話です。地名の由来が、浅利式部が

    • 大月市初狩町の「甲州八木節」

      「甲州八木節」をご存知でしょうか。 ほとんどの人は知らないと思います。 当然です。「甲州八木節」は「甲州」という名をしているのに、活動は山梨県でも大月市(主に初狩町)に限定されているからです。 今回はそんな「甲州八木節」について紹介します。 八木節とは そもそも八木節は、栃木県・群馬県の両毛地方発祥とされる民謡です。国定忠治や平井権八などの人物が繰り広げる物語を、タルを叩きながら唄う盆踊唄として知られています。 「甲州八木節」とは 「甲州八木節」は、大月市初狩町で誕生

      • 大月桃太郎伝説⑦

         大月桃太郎伝説第7弾です。  今回でひとまず区切りとします。  これまでのことをまとめるにあたり、下記のことに注目していきます。 ①はじめは狂歌だった(大月桃太郎伝説③) ②1980年以降に狂歌から物語形式になった「鬼の杖」、「鬼の立石」の由来 が書き換えられた(大月桃太郎伝説⑥) ③新しく由来が付加されたモノが加わった(大月桃太郎伝説⑥) ※詳しくは下記をご参照ください。  力不足により、うまくまとめきれない箇所も出てくるかと思いますが、できるだけ意味あるまとめ

        • 大月桃太郎伝説⑥

           「大月桃太郎伝説」第6弾です。  今回は由来の書き換え、付加について考えました。  どういうことかというと、大月市周辺にある桃太郎伝説ゆかりのモノ(地名を除く)は、最初から桃太郎伝説に由来するモノがあるわけではなく、本来持っていた由来が桃太郎伝説の内容に合うように書き換えられた、あるいは付加されたモノがあるということです。  特に「鬼の杖」、「鬼の立石」の由来の書き換えは重要で、狂歌から物語の形式を持っていく「大月桃太郎伝説」の成立に深く関わっていると考えます。  このこ

        浅利式部鬼退治

          大月桃太郎伝説⑤

           「大月桃太郎伝説」第5弾です。  今回は、初期の「大月桃太郎伝説」が、いつ、現在の形に変化したのかについて考えていきます。    結論からいうと、「大月桃太郎伝説」は、1980年代以降に石井深さんという方によって現在の形に整えられていきます。  さっそく見ていきたいところですが、まずはこれまでの復習です。 前々回の「大月桃太郎伝説③」では以下の3点を考えました。 ①この地域と桃太郎の関係を示すものは明治期から狂歌として存在。 ②「桃太郎もち」の販売によって話が広がった可

          大月桃太郎伝説⑤

          大月桃太郎伝説④

           大月桃太郎伝説その④です。  話が進んできましたので、今回は「大月桃太郎伝説」に登場する場所やいわれのあるモノについて紹介します。 ①桃が実った百蔵山(ももくらさん)  「大月桃太郎伝説」では、この百蔵山で実った桃が川に流れて物語が始まります。  かつては「桃倉山」と表記されていたとされますが、江戸時代の『甲斐国志』や「下和田村絵図」を見る限りそのような表記は確認できませんでした。 ②犬の出身地、犬目(いぬめ)  かつてここには甲州街道の宿場、犬目宿がありました。

          大月桃太郎伝説④

          大月桃太郎伝説③

           今回から少し踏み込んでいきます。  「大月桃太郎伝説」が、いつ、どのように誕生し、広まっていったのかということについて、資料を紹介しながらまとめていきます。要点は以下の3つに整理できます。 ①この地域と桃太郎の関係を示すものは明治期から狂歌として存在。 ②「桃太郎もち」の販売によって話が広がった可能性がある。 ③初期の「大月桃太郎伝説」は、地名と従者の名称が関係していると指摘されるのみで具体的な物語をもっていなかった可能性がある。  以下に詳細を記していきます。  

          大月桃太郎伝説③

          大月桃太郎伝説②

           大月桃太郎伝説その②です。  今回は、そもそも桃太郎は変化の多い昔話である。   ということを、これまでの研究史をざっと踏まえて書いています。以下に詳細を記していきたいと思います。  昔話桃太郎について、まずは柳田國男の『桃太郎の誕生』(柳田1932)から見ていきます。柳田は水上より大きな桃が流れ、中から小さな男児が生まれること、つまり人間から生まれなかった人物が誕生し、それが急速に成長して人になったことが話の骨子であったとしています。そして類例として「瓜子姫」、「一寸

          大月桃太郎伝説②

          大月桃太郎伝説①

          はじめに 山梨県東部地域に所在する大月市には、「大月桃太郎伝説」なる伝説があります。この伝説は一言でいうと、「この地域には桃太郎の登場人物の名前に似た地名があることから、桃太郎の話はこの地域で生まれた」とする伝説です。  昔話=創作話、伝説=本当にあったという体の話、ということから考えれば、かなり荒唐無稽な伝説だといえます。なぜなら本来桃太郎は創作話である「昔話」なので、「大月桃太郎伝説」という呼び名は「創作話」が「本当にあった話」という…なんだかよく分からないことになるか

          大月桃太郎伝説①

          自己紹介など

          山梨県大月市でフィールドワークをしています。フィールドワークの成果を綴るためにnoteを始めました。 大学では考古学を学びましたが、まちの歴史・民俗・自然などの分野を広く浅く調べています。一応、学位は修士(文学)。在学中は弥生時代の土器や集落について研究をしていました。なので、小規模ながら畑と田んぼもやりながら、この分野のことも調べています。 noteでは、このまちの「あまり知られていないこと」や、誰も調べないような「マニアックなこと」を掘り下げて考察し、投稿していけたら

          自己紹介など