立ち直ったらきっと強くなってるよ。凹んだ息子に何度でも伝えたいこと。
「ちょっと病んでるみたい…」
スマホに奥さんからのLINE。正月早々なんてこった!仕事中でしたが、気が気でなく、すぐに電話しました。
「不安な事を思い浮かべると頭から離れなくなってどうしようもなくなる」
突然、小6息子が不調を訴えてきたそうです。大好きなゲームもせず、1日ぼおーっと過ごしていると…。
前日まであんな元気やったのにほんまかいな?
家へ帰り、息子と話すと
「ずっと自分が、自分じゃないような感覚で、死んじゃうんじゃないかと不安になる」涙ながらに訴えてくるではありませんか。
しかも「 死 」…だと、やべぇ…ほんとに病んでる。
どうしようもない悪ガキが、先生のおかげで6年間で一番の成長を見せてくれた矢先であった為、家族みんなビックリの告白でした。
なぜそんなこと考えるようになったの?と聞いても「よく分からない」の一点ばりでしたが、翌日、奥さんが聞いてみると、なにやら大みそかに甥っ子と見た動画が原因のようでした。
どんな動画かメールで送ってもらうと、ホラー系の目を覆いたくなるような内容。吐き気する、ジーザス!
前からこういうことあったんですよね…ホラー映画見て寝られなくなったこと。それをやっちゃうのが我が息子。
夏以降、今までになく勉強も頑張っていたので、ごほうびに姉ちゃんたちと同じiPhoneをサンタからもらいました。
まさかそのスマホでこんなことになるなんて……。冬休みだからとフィルタリングを甘くしたのが失敗。YouTubeも息子と一緒に消しました。
でもホラー動画だけが原因ではないような気がします。
冬休みになってフッと気が抜けたのかも……
急激な成長で心のバランスが崩れたのかも……
弟が産まれて寂しい思いをさせていたのかも……
いろいろ考えていると、昔のことを思い出しました。
* * *
私も18歳の冬、突然のメンタル不調に陥りました。
その頃、恋愛や部活に勉強にとあらゆることに「自分に限界はない!」とすべて100%以上のものを求め、自身を追い込んでいました。
若かったのでしょうね。
ところが、大学にも無事合格し目の前のミッションがなくなった途端、私の中で何かの糸がブツっと切れました。
息子と同じく、自分が自分でないような感覚で何をするにも無気力な状態。
青春の喪失感に切れてしまった緊張の糸。
誰が悪いわけでもないし、どうしようもできない。
自分をまったくコントロールできない状況は、恐怖でしかなかったし、思い悩んでいると、髪の毛まで落ち葉が散るように抜け落ちていくではありませんか。
藁にもすがる思いでメンタルクリニックへ行きました。一通りヒアリングを受けた後、先生がかけてくれた言葉を今でも忘れることができません。
あなたみたいに若いうちになって良かったですよ。
これ以上悪くなることはないですから。
乗り越えることが出来たらあなたは今より強くなってるし、
また同じことが起きても、きっと乗り越えられますよ。
深刻で死にそうな表情の私と正反対の先生のあっけらかんとしたこと。
えっ、この状況で、そんなラッキーな感じで言う?と思いながらも、その言葉で一気に気持ちがふわっと軽くなりました。
ポジティブに捉えてもいいんだ。
乗り越えられるんだ。
未来が見えた瞬間、立ち直っていました。
数週間すると、髪の毛も芝生が芽を出すように一気に生えてきて……
「うわっ、気持ちわる」
家族も驚いていました。たしかに、ツルツルの地肌から一気に髪の毛が生えてくるさまは気持ち悪いが喜びもいっぱい。
ずっと支え続けてくれた家族、いつも通り接してくれた親友、そして先生の言葉のおかげ。
その後もいろいろと大変なこともありましたが、これ以上に思い悩むことは、それ以降ありませんでした。
* * *
きっと息子も同じように何かを喪失したのでしょう。理由はわからないけど、取り戻して欲しいものです。
「狭いし、寝相なんとかせーよ」と文句を言いながら毎日ダブルベッドで息子と一緒に寝ています。これも1年後にはきっと笑い話になっているはず。
兄弟もいつもより明るく振舞い、彼が話しやすい環境を作ってくれているようです。もう調子にのってウザイんだけど…と長女は言っている……。
奥さんも彼のための時間を作り、一緒に映画を観に行ったり、スマホの管理も見直しました。もう家にいるとうるさいのなんの…と奥さんは困っている……。
だいぶよくなっているようです。
結局凹んでも、自分自身で立ち直るために、背中を支えるのが家族の役割で、あとは自ら飛べるようにそっと後押しするだけ。
その支えが、たくさんあればあるほど強くなれるのでしょうね。
もう少しの間、寝相の悪い彼の足を振りほどく夜が続きそうです。
* * *
「上履き片方ないんだけど!」
「なくなるわけないよ!ちゃんと探したの?」
「おっ、あった!」
「だからいつも言ってるでしょ~もう!」
いつも通り奥さんに叱られながら、元気よく「いってきまーす」と笑顔で学校へ行きました。
また凹むことがあれば、何度でも同じ言葉をかけてやろうと思います。
「誰でもあることだからね。これ以上悪くなることはないから安心しな。立ち直ったらきっと強くなってるよ」と。
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