パパの味はシェフの味?
さぁ、今日なに作ろう?
お休みの夕方、頭に浮かぶは定番料理。
カレーライス、ハヤシライス、シチュー。子どもたちも好きで、短期間でリピートしても喜ばれる料理だ。
毎度、同じルーを使うから、期待を裏切らない安定感はあるが、たまにゃ本格的なものを作ってみたい。
「すごいね、パパ」
「こんな手の込んだもん作れないよ、普通」
料理を作る最大のモチベーション。奥さんや子どもたちにチヤホヤされたいだけである。
しかし、こういう定番料理ほど成功と失敗の明暗がくっきりと分かれる。
今日は、シェフの力を借りてみよう。
[ スーパーの食材が高級レストランの味になる ]
[ 永久保存版 ]
気になるワードだらけ。
我が家は、奥さんと育ち盛りの子ども5人の7人家族。物価高もあり、コスパのよい食材をより安く手にいれることが買い物の基準になっている。
なかなか外食にも行かせてあげることもできないから、家にある食材で、出来る限り旨いもんを食べさせてあげたい。
そんな願いを叶えてくれそうな天才シェフの料理本。さらにハッとするワードを見つけてしまった。
●お好みソースが隠し味「三國流ハヤシライス」
家族みんなお好み焼きが好きなこともあり、自慢じゃないが、ほっぺたが落ちるぐらい”オタフクソース ”をストックしている。
こんな一流シェフでもオタフクソースを使うのかい。旨い予感しかない。ハヤシライスに決まり。
さっそく仕込みを始めると、小2三女が小学校から帰ってきた。
「何作ってるの?……えっ、ハヤシライス?」
みるみる表情が曇っていく三女。
ん…、どうした?
「今日、給食もハヤシライス……」
まさかの定番料理あるある……。あるんだよね、一年に数回こういうこと。
給食より美味しいの作るからと、必死で娘の機嫌をとっていたが、絶対嫌だと言って遊びに行ってしまった。
すでに調理を始めているし、旨いもん作ったら、きっと食べてくれるはずだ。
まずはバターで、玉ねぎとマッシュルームを飴色になるまで炒める。牛肉はすぐに火が通り、固くなってしまうから後入れするらしい。
いつかのバーベキューの余り牛肉たちに塩こしょうと小麦粉をパラパラふりかけて強火で炒める。
よく見ると豚肉も混ざっている。。まぁええか。
肉は赤いところをちょっと残したぐらいで、肉汁一滴も残さず野菜とまぜまぜして、安いウイスキーをジャッー!と入れる。芳醇なええ香り!臭みがとれたり、コクが出たりするそうだ。
そこに大好きなオタフクソース、あらごしトマト缶、水を入れる。
「しっかり旨味をとじこめてやる。煮込んでやるよ。へっへっへっ」
グツグツ、ブツブツ言いながら、強火で5分間煮込もう。これが一番大事なポイント。スーパーの肉と野菜が、高級レストランの味に変わる瞬間だ。
仕上げにバターと隠し味の醤油で味を整える。子どもたちもすんなりいけるように、追いオタフクソースで甘めに味付け。
味見してみる。市販のものと段違いのコクと旨味。玉ねぎの甘み、トマトの酸味、肉の旨味、そしてオタフクソースやバターで、さらにコクが出て、すべての長所を引き出す奥深い味わいになっとる。
ただ三女の曇った表情だけが気がかり。今日は、奮発してもう一品チャレンジしてみよう。三女の好きそうなレシピを発見。
その名も「三國ナゲット」
ささみ肉に天ぷら粉で作るそうだ。三國シェフの手にかかれば、天ぷらもナゲットになるそうな。近所のスーパーは最近、ささみが異様に高いのでむね肉でアレンジして作ってみよう。
むね肉は皮に、筋も丁寧にとってスティック状にカット。天ぷら粉にはガーリックパウダー、パプリカパウダーをまぜまぜ。
そしてナゲットといえば忘れちゃならないのがソース。バーベキューソース、マスタード、ハニーマヨネーズと、全部もどきだけど、3種類作って準備万端。
胸肉の水気をよく切り、160度の油へ投入。
じゅわぁ〜っといい感じ!カラッと揚がってるね。でもなぜか衣つきが悪い。
三國シェフのやつと明らかにビジュアルが違う。でも食べたらきっとナゲットなのだろう。
帰宅した三女は大喜び。とりあえずホクホクの揚げたてをみんなに食べてもらおう。
ボナペティ~!
奥さん 柔らかい!旨い!
中2長男 ソースすごっ!
中3次女 ………寝起きで無言…
小2三女 あっつぅ〜うんまっ!
1歳次男 アウアウ!
高2長女 バイトでいない!
愛する家族の語彙力よ。三女も喜んでくれて何より。でも誰もナゲットとは言ってくれない…。
気になるので一口食べてみた……。
あれやあれ!蕎麦と一緒に食べると、高級感でるやつと違うか?
ほな、それとり天やがな。
そうかぁ。家で作っても意外と食べきれなくて、人気のない野菜だけ残ると言うてたなぁ。
やっぱり、それとり天やがな。
そうそう、めんつゆにつけて食べても、抹茶塩につけて食べても美味しいって言うてたで。
それ、とり天やがな!
はい、これはとりの天ぷらです。
どこで調理を間違えたのか、でもジューシーで衣もサクサク、ソースと絶妙なマッチング。
鶏の水分をもっと絞らなくちゃいけなかったのだろうか。あとササミと胸肉では根本的に食感の違いもあるのだろう。
素人アレンジが上手くいくほど、料理は甘くない。ハヤシもちょっと不安…。
そんな不安をさらに三女があおる。なんと奥さんに耳打ちして、自分だけ作り置きの牛丼にチーズかけて食べとるやないか!
クッソ!このやろう!
ちょっとぐらい食べて欲しかったけど仕方ないよな。さぁ召し上がれ。
ボナペティ~!
不安は一瞬で吹き飛ぶ。
お店の味みたい!
コクがすごい!
トマト味が濃厚~!
みんな喜んでくれた。バイト後のグルメな長女も喜んでくれたし、1歳の息子も口の周りをハヤシだらけにしてバクバク食べていた。
この瞬間がたまらない。
失敗するとすごく悔しいけれど、失敗なくして料理は上手くならない。とり天もおいしければ、結果オーライ。
こういう過程も含めて料理は楽しい。
三國シェフの味が、いつしか家庭の味に、そしてパパの味となり、また子どもたちが大切な誰かに振舞う日が来るのかな。と考えるとワクワクする。
これからも日常の料理に、ちょこっと手間をかけて美味しく、楽しい時間を過ごしていきたい。
ボナペティ~!
※フランス語で、召し上がれ。食事を楽しんでね!という意味。素敵な言葉。
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