AIには汲み取りきれない“感覚的なところ“を大切に─増田愛美(アートディレクター)
こんにちは。今回のnoteは、IN FOCUSで共に働くメンバーへのインタビューシリーズ第4回。登場してくれるのはアートディレクターの増田愛美です。
ニュウマン新宿の2023年SSシーズン立ち上がり施策『OPENING DAYS -Doors to Discovery-』、渋谷スクランブルスクエアの2022年夏キャンペーン『ドキドキに、出会う』、動画配信プラットフォーム「ULIZA」の広告ビジュアルをはじめとする様々な案件でアートディレクションを手掛けている増
田に、自身の仕事について話してもらいました。
きっかけは、ゆらゆら帝国
ーまずはこれまでのキャリアから教えてください。
IN FOCUSにジョインしたのは2021年5月のことですが、その前は大きな広告制作会社に新卒で入社し、デザイナーとして4年ほど働いていました。新卒と言っても、大学は編入制度を使って計6年通ったので、同い年の人より2年ほど遅く社会人になりました。
ー大学ではどんなことを学んでいたんですか?
大学は武蔵野美術大学で、基礎デザイン学科に4年、視覚伝達デザイン学科に2年在籍していました。それぞれの学科は、グラフィックデザインを学ぶことがベースにあった点で共通しています。
ーそもそもグラフィックデザインに興味を持ったきっかけは?
はじめは絵を描くということに対して、漫画の模写から興味を持ち始めました。『ちゃお』『なかよし』『りぼん』。共働きだった両親は、家に一人でいる私のためにそれらを全部買い与えてくれていたんです。その後、小学6年の誕生日にペンタブを買ってもらい、よりイラストっぽいものを描くようになり、当時流行っていたインターネットのお絵かき掲示板に投稿したりしていました。
ーかなり早熟ですね。
投稿というと大袈裟ですが、イラストを見せ合うことで、自分が上手いか下手かがなんとなく分かるのが面白かったんです。余談ですが、あの掲示板に当時いた人の中には、イラストレーターとして現在活躍している方も結構いるんです。ハンドルネームを覚えていたので気付きました(笑)。
そこからさらに、グラフィックデザインという分野へと興味の幅を広げてくれたのは、ゆらゆら帝国のジャケットでした。中学生の頃にその存在を知って、音楽はもちろん、彼らが自分たちでデザインしていたジャケットのアートワークも好きになりました。当時はまだグラフィックデザインという言葉も職種も知りませんでしたが、なんとなく「あのジャケットみたいなものを作りたい」と思ったのを覚えています。そのことが美大へと進学するひとつのきっかけでした。彼らも多摩美術大学の出身でしたから。
人との出会い、対話が、感覚を養う
ー大学卒業後、前職を経てIN FOCUSにジョインされたわけですが、増田さんにこのチームはどのように映っていますか?
部門は分かれていても全体的に和気藹々としているなと思っています。良い意味で会社っぽくない(笑)。
グラフィックチームについては、ひとつの案件に対してしっかり時間をかけてデザインに向き合うことを良しとしてくれるので助かっています。前職は良くも悪くも効率化された職場だったので、デザインについて悩むことのできる時間はほとんどありませんでしたから。
ーアートディレクター/グラフィックデザイナーとして、自身の強みを教えてください。
感覚的なところだと思っています。クライアントの気持ちを汲み取る力とも言えるかもしれません。
大学のある授業で、「これから先、WEBデザインはすべてAIで作られるようになる」という話を聞きました。WEBサイトに求められる、より多くの人に訪れてもらうという役割に対して、AIなら、そのために必要となる「よりクリック数を稼げるボタンのデザイン」を導き出すことができるのだと。同時に、だからこそ人間はそんなAIに負けないように、人間にしかできないことを養っていかなくてはいけないという内容でした。
ー人間にしかできないこと、それが「感覚的なところ」であると?
そうです。いくらAIでも、クライアントが将来的なビジョンとして持つ「こういう風になりたい」という気持ちまでを導き出すことはできないだろうというか。例えるなら、誰かに対して「その人に似合う洋服」を見立ててあげる時のテンションに近いかもしれません。私自身、そうした感覚的なところを汲み取るのが得意だと思っていますし、嬉しいことに、大学でお世話になった教授からもそう言ってもらえていました。
ー先天的な部分でもあると思いますが、そうした「感覚的なところ」をどのように養っていますか?
まずは、とにかく色々な人と会って話すこと。その絶対数を増やしていくことが大事だと思っています。「この人はこういう生い立ちで、今ここにいる。今ここにいるのは、これから先こうなりたいからなんだ」ということを、私の中で感覚的に分類分けして蓄積していっていると言えば良いでしょうか。そうすることで、人でも企業でも、少し話すと「この人」「この企業」が進みたい道のようなものが分かる気がするんです。
その上で大切にしているのは、自分の好みではないデザインや、興味のない場所も、まずは見たり行ったりしてみるということ。そうすることで、「この人」「この企業」が今いるところではない、本人たちも気付いていない「進む先」へと線で繋げられるようなデザインが提案できると思っています。
心がけているのは、自分勝手にならないデザイン
ー自分の作風、個性をどのように捉えていますか?
もちろん自分の好きなデザインはあります。しかしアートディレクター/グラフィックデザイナーとして仕事をする以上、クライアントが世の中から「どう見られたいか」を可視化することが一番大事なので、デザイン的な視点だけで「こっちの方が良いのに」といった自分勝手な考えは持たないように心がけていますね。
逆に、趣味というかボランティア的にやっているイベントのフライヤーデザインに関しては、自分の好みを前面に押し出すことが多いです。「可愛いけど毒がある」とか「(このイベントに)興味がないなら来なくて良いですよみたいな、突き放した雰囲気を感じる」とよく言われます(笑)。
ーアートディレクション/グラフィックデザインのインスピレーションとなるような、最近ハマっているものはありますか?
「aespa(エスパ)」という韓国のアイドルグループのアートワークは今っぽくて可愛いなと思って見ています。クリエイティブの世界で流行っているトーンを、違和感なくアイドルに落とし込んでいるんですよね。
あとは1995〜2005年くらいのムードにハマっています。「ねこぢる」という女性漫画家の著作、雑な3D、当時のレイブでかかっていたようなトランス、それに篠原ともえのジャケットとか(笑)。
同業の人たちのことも気にはなりますが、あまりチェックし過ぎないようにしています。どうしてもアウトプットが似てしまうので。
ーそれでは最後に、今後チャレンジしたいことを教えてください。
すでにいくつかやらせてもらっていますが、ファッションと広告の間というか、どちらの要素も持った案件は今後も携わっていきたいです。
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