駆け出し百人一首(11)東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな(菅原道真)

東風(こち)吹(ふ)かば匂(にほ)ひおこせよ梅(むめ)の花(はな)あるじなしとて春(はる)を忘(わす)るな

拾遺和歌集 雑春 1006番

訳:わが家の梅の花よ。東風が吹いたら、私のいる大宰府まで匂いを届けておくれ。主人がいないからと言って、春を忘れてはならないよ。

My ume tree, could you please send your scent on the east wind? Don't forget to bloom in spring even if I'm not here.


道真は昌泰4(901)年、大宰権帥に左遷される。この歌は都を発つときの歌として、『大鏡』などに引用されて有名。なお、東風(こち)は、東から西に吹く風のことであり、大宰府においては都から吹いてくる風が東風である。
ほぼ同じシチュエーションでの「桜花ぬしを忘れぬものならば吹き来む風に言伝てはせよ」(後撰和歌集・春・57番)も切ない。


文法事項

吹かば:未然形+ば。仮定条件で「もし吹いたら」と訳す。
おこせよ:サ行下二段活用「おこす」の命令形。なお、サ行四段「起こす」とは別の語で、「遣る」の反対語。こちらに寄越してくること。
忘るな:「な」は終助詞で禁止。「な〜そ」の禁止よりも強いニュアンス。


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