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古典文学に探る季語の源流(全12回の連載)

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俳句結社「松の花」の結社誌に連載しているコラム『古典文学に探る季語の源流』をnoteにも転載しております。2020年は奇数月の号、2021年は偶数月の号に掲載した記事を合わせ、毎… もっと読む
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2021年11月の記事一覧

時雨(しぐれ) ~古典文学に見る季語の源流 第十一回~

時雨(しぐれ) ~古典文学に見る季語の源流 第十一回~

秋から冬に移り変わる頃、空が低い雲に覆われ、雨が降ったり止んだりするさまを「時雨(しぐれ)」と呼んでいる。「時雨(しぐれ)る」と動詞の形でも使われる。

この語は『万葉集』の昔から登場し、

時雨の雨間(ま)無くし降れば
三笠山 木末(こぬれ)遍く色付きにけり
(巻八、大伴宿禰稲公)

というように、山の木々が色付く様子と結び付けられた。

春日野に時雨降る見ゆ
明日よりは黄葉(もみぢ)挿頭(かざ

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菊 ~古典文学に見る季語の源流 第十回~

菊 ~古典文学に見る季語の源流 第十回~

秋の植物に「菊」がある。ルース・ベネディクトが『菊と刀』を著したように、日本人と馴染み深い植物で、天皇家でも十六葉八重表菊の「菊の御紋」が用いられている。

しかし、日本人との関わりは、梅や桜よりも短い。菊の御紋も、後鳥羽上皇が個人的に愛好していたのを、後深草・亀山の両天皇が正統性の証として用いたのが始まりだ。長い皇室の歴史のうち、七、八百年のことなのである(それでも長いが)。

「きく」は音読み

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