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古典文学に見る季語の源流 第13回 春はネモフィラ?〜連載の終わりに〜
春の花といえば、何か。梅? 桜? 藤? 花壇のチューリップ、道端のたんぽぽを思い浮かべる人も多いだろう。
先日、ある女子大生と話していると、
「春は皆ネモフィラを見に行き過ぎなんですよ。まぁ、私も行くんですけど」
という話が出た。今や、「春はネモフィラ」という人が少なからずいるようなのだ。
確かに、丘一面に咲いたネモフィラの青の絨毯は美しい。でも、春の代表的な花とまでは思わない、というのが、三
時雨(しぐれ) ~古典文学に見る季語の源流 第十一回~
秋から冬に移り変わる頃、空が低い雲に覆われ、雨が降ったり止んだりするさまを「時雨(しぐれ)」と呼んでいる。「時雨(しぐれ)る」と動詞の形でも使われる。
この語は『万葉集』の昔から登場し、
時雨の雨間(ま)無くし降れば
三笠山 木末(こぬれ)遍く色付きにけり
(巻八、大伴宿禰稲公)
というように、山の木々が色付く様子と結び付けられた。
春日野に時雨降る見ゆ
明日よりは黄葉(もみぢ)挿頭(かざ
秋の風 ~古典文学に見る季語の源流 第九回~
季語「涼し」は、俳句初心者を混乱させる。涼しく過ごしやすくなった秋ではなく、夏に見出す涼しさを詠む季語であるからだ。
さらに難しいのが「夜の秋」。秋とあるが、こちらも夏の季語である。晩夏の夜に早くも秋の気配が漂うさまをいう。この秋の気配の正体は何かと言えば、風である。昼間はうだるような暑さであっても、夜には涼しい風が吹いたりする。
涼風が秋のサインであることは、百人一首〈住の江の〉で名高い藤原
古典文学に見る季語の源流 第三回「帰る雁」「山笑ふ」
春の季語「帰る雁」は、俳諧の式目・作法を初めて印刷・公刊した『はなひ草』(一六三六年)にもすでに取り上げられている。和歌の世界では古くから馴染み深いテーマであった。
雁は、『万葉集』では主に「雁が音」という形で登場する。昔の人々は、動物の鳴き声を妻恋いと解釈し、切ないものだと受け止めていた。万葉集に詠まれるのは、ほとんどが秋の雁の哀しげな鳴き声だ。
春の雁として注目されるのは、巻十九、『万葉集
古典文学に見る季語の源流 第一回「はじめに」「人日・若菜・七草粥」
「貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集にこれ有り候。」
あまりにも有名な正岡子規の文章である。子規が『歌よみに与ふる書』でここまで宣言せねばならなかったのは、それだけ『古今和歌集』の影響が深かったことの証明であって、子規自身も、「実は斯く申す生(=自分)も数年前迄は古今集崇拝の一人」であったと認めている。
また、私がカルチャースクールで百人一首を講じていたとき、受講生から、
「辛気臭い恋の