社会人の学び直しに対する政策の是非

今日の朝にこんな記事を見かけた。

社会人の「学び直しから転職まで」を政府が一体支援、平均24万円助成へ

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230619-OYT1T50028/

概要としては「学び直しを希望する社会人は、1年間で約24万円の補助を受けられます」というもの。民間の講座で限定されており、キャリアコンサルタントが間を挟んでいるというのが、かなり問題になりそう、というのが正直なところ。
それで記事を読んでいけばわかるが、あくまで転職目的の学び直しがメインであり、政府の一番の目的は「日本型雇用システムの転換」であると明言している。
正直、これはやばい政策だと直感的に思ってしまった。闇バイトが広がって問題になっていると最近話題になっているが、より闇バイトは増え、なんならそのほかの犯罪も更に増えるだろうと予想できる。海外のように少し裏道に入っただけで強盗に遭い、物を盗まれたり殺されかけたりといったことが圧倒的に少ないはずの日本が、そういう社会になってしまう危険性を孕んでいる。

そもそも学び直しをする気概のある人がどれだけいるか

日本は圧倒的に社会人になってから勉強しようとする人が少ないという。それは「勉強して成果を出したところで給料面に直結しないから」だろう。これが日本型の雇用システムの弊害とも言える部分で、是正しなければならない部分ではあると思う。
ただ、給料面の待遇を求めてスキルを身に付けて他業種へ転職、もしくは同業種のより上位のポストへ転職というのは、最近の社会のトレンドであるに違いない。特段それを咎めるつもりもないし、むしろ積極的にやるべきことだと思う。そこで今回の政策に焦点があてられたのだろう。
ただよく考えてほしい。本当にスキルアップを望んでいる人は、政府が支援しなくとも必要に駆られて勉強する。逆に、勉強しない人は新しい政策を立てたところで利用しないだろうし勉強もしない。
中には、24万ももらえるし申し込もうかなーと大した目標もなくだらだら講義を受講して何のスキルも身に付けられず終わる人も出るだろう。自分のお金で払ったからこそ、頑張ろうというある意味呪縛みたいなのがないためないがしろにしてしまう危険性がある。
そして、1年の講義で一体何が身に付くんだ?という当然の疑問もある。1年程度の学習で高収入なんていううまい話なんてありゃしない。仮に転職が成功したとしてもずっとその先勉強しなければならない。
そこで今回の政策の目標である「日本型雇用システム」の転換である。つまり、転職に成功したものの成果を出せず簡単にレイオフされる可能性があるということである。

格差を更に広げる助長をしかねない

元々勉強する気概のある人はこの制度を利用して更に勉強し、更なる高みへ。そして元々勉強しない人は、制度を利用したところで大した成果も見込めず落ちこぼれていく——それに加えて、終身雇用や年功序列をなくすとなって完全な成果主義に転換するということを示唆している。できる人はよりできるようになり、できない人はより落ちぶれていく。単に格差を広げるに過ぎない政策だろう。

ここで心に手を当てて考えてほしい。会社から家に帰ってきてみんなは何をしているだろうか?
ここで勉強している人がいれば、それはこの政策に合っている人だと思う。また趣味に打ち込んでいる人もこの政策に合っている人だと思う。何か一つのことに打ち込めているということは、続ける気概のある人ということで、必要に駆られればスキルアップのための勉強も厭わないと考えられる。
特に何もせずyoutube等で動画を流し見ている——こういう人は落ちぶれる一方だろう。なんの目的も持たずに時間を浪費している人が、学び直しなんてしたいと思うだろうか? 実際、こういう人は世の中に多いと思う。賃金が低く他のことにお金を掛けられないから、と主張する人もいるだろうが、勉強のためのテキストなんて安いものでは1,000円ちょっとだ。それすらもケチってる人が大成するとは思わない。

改善するべきはもっと前の段階

先に述べたように、勉強する人は何を言わなくとも勝手にするし、しない人はしない。それではその違いはどこから出てくるのか、というとおそらく学校教育に所以するのだろうと思う。
小さいころから勉強習慣を身に付けており、勉強をする意義や楽しみを知っている人は社会人になってからも自発的に勉強するに違いない。そういう習慣を身に付けさせるような学習環境を子供に提供するのが先ではないのか?と切に思う。
その中に大学生も入れてもいいかもしれない。小中高のどれよりも時間があり、自分でやりたいことを見つけられる環境にある大学生に勉強に関して補助する政策があれば、自分の将来を見据えて大学の専攻以外の勉強をするかもしれない。この政策の補助が大学の授業料などにもあてがうことができれば、大学院や博士課程などに進む学生も増えるかもしれない。

この政策によって犯罪率が上昇するかもしれない

結局学生時代に怠惰に過ごしてしまった人のほとんどは、社会人になってからも怠惰のままであることがほとんどだろう。そういう人たちが年功序列や終身雇用の形態によって会社の上位層に固まってしまい業績が傾いてしまう。いわゆる給料泥棒だとか窓際社員だとかそういうものが生まれてしまう。確かにこれは是正しなければならないことだが、逆にこれによって職を失わずに普通の生活が送れるというメリットもある。それでは、この雇用形態が転換され、簡単にレイオフされるような社会になったらどうなるだろうか——言わずもがな失業者の割合がかなり増えるに違いない。
特に勉強することに対して気概のない新入社員とかは、バンバン首を切られるだろう。それから安定した職に就けず、いわゆるその日暮らしをするような人がたくさんいる社会になることは想像に難くない。

ここでアメリカに目を向けたいと思う。言わずもがなアメリカは完全な成果主義の社会だと言える。日本にある外資系企業も、業績悪化のために簡単にレイオフが実行されてある日突然職を失うなんてことはザラだ。
それが普通のアメリカでは、なんとその日暮らしの人が人口全体の6割くらいいる。これは恐ろしいことに違いない。毎日、生活することすら難しい人が多いということは、それほど犯罪を犯す可能性も高いということだ。それが理由かはわからないが、アメリカで犯罪率が高いのはこういう社会の仕組みにも所以しているのかもしれないと私は思っている。
そしてそれに倣おうとしているのが、今の日本である。確かにアメリカはずっと経済成長もしており、世界が目指すべき理想国家みたいな立ち位置にはあると思う。ただ、その光がある分影も濃いことを心に留めてほしい。街中で人を助けようとしたら、「こいつにやられた!」なんて当たり屋みたいな人ばかりがいるような日本を私は想像したくない。

結論

長々と思いつくままに色々書き綴ったが、ここで私なりの結論を出そうと思う。
この政策に対しては、私としてはやらなくていいと思う。むしろその財源を別のところ——それこそ子供のために充てるべきだと思う。
異次元の少子化政策と言われて様々な政策が打ち出されているが、もっと充実させるべきだ。三人目の子供の補助を15,000円から倍の30,000円にするというのも実は裏があって、18才を超えた時点で一人目からは除外され、三人目の子供を二人目と見なされて補助が15,000円になるらしい。そんなせこいことをしないで、その補助を充実させるための財源にこの学び直しの財源を当てた方がより効果的ではないだろうか?
もしくは教員の待遇面の改善の財源に充てるのもいいかもしれない。教員の給料を増やせば自ずと優秀な人は集まってくる。公教育が充実すれば、生徒の質も上がるに違いないし、結果としてその教育を受けた若者が社会で活躍してくれるに違いない。きっと今よりも自発的に学び直す人は増えるに違いない。
どちらにせよ、もともとこの政策の起点となったのは、子育てなどで会社から一端離れている人たちに、学習の機会を与えることで職場復帰の助けにしようというものだったはずだ。私は子育てをしたことないのでわからないが、そんな時間はそもそもないらしい。それならば、少子化対策に財源を当てた方がいいのではないだろうか?
会社が賃金を上げないという部分も問題かもしれないが、お金がないから子供を産めないという人もいる。だから会社に賃金を上げろ!と政府が言うのではなく、そういう人たちを助けるのが政府ではないのだろうか? 外野で文句ばかり言って自分で何もしない人とやっていることは変わらない。
個人的に明石市市長の泉房穂氏の明石市でやっていた子供に対する支援は画期的だと思う。実際成果も出しているし、国も見習ってほしい。市長をもうそろそろ辞任するらしいが、何かしら別の方面でも活躍してほしいと個人的に思っている。

余談

本筋からかなり逸れる話にはなっているが日本がどんな社会を目指しているのか私なりに考えてみた。
最近は海外企業の誘致を盛んにしている。東京も何億円だかの支援をしているとか。
ルクセンブルクとかはまさしくそうなのだが、海外企業を誘致してその法人税によって国を潤しているという国がある。日本はもしかしたらそういう国を目指しているのだろうか?
ただ実際、その制度を使って日本を食い散らかしている中国企業とかもある。子会社に別の会社を立ててそっちを赤字にして、節税をしているとか……。そういう抜け穴を利用されているようでは日本がいくら海外企業を誘致したところで、今以上の税収は見込めない。
結局、一番は人口を増やすしかないのだろう。なんだか政府は一番時間はかかるけれども正確な手段を選ばずに、伸びるかどうかわからない株を買って一発逆転を狙っているような気がしてならない。自分の政権で成果を残したいと考えるのではなく、その2,3世代後の政権まで長く続ける政策を打ち出して長期的なスパンで成果を見込めるようにしてもらいたい。もしかしたらしているのかもしれないが、この辺に関しては私は不勉強なので間違っていたら申し訳ない。

大した整理もせず思い浮かんだことをつらつら書いていたらこんな文字数に……。最後まで読んでくださった方々、貴重な時間を奪って申し訳ないです。単なる思い付きに付き合っていただきありがとうございます。

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