見出し画像

31-4.ネット時代の不登校支援に求められる技能とは

(特集:秋の感謝祭☆研修会)

下山晴彦(臨床心理iNEXT代表/跡見学園女子大学教授・東京大学名誉教授)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.31-4

【新規募集開始の研修会】

「注目新刊書」著者オンライン研修会

「不登校支援における認知行動療法の活用」

■10月9日(日曜)9時〜12時
■講師 小堀彩子 大正大学准教授


【新刊書】『公認心理師のための「心理支援」講義』(北大路書房)
https://www.kitaohji.com/book/b607714.html

【申込】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=X1ld1cFW_Hs
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円):https://select-type.com/ev/?ev=2g_eZETu1Tk
[オンデマンド視聴のみ](3000円):https://select-type.com/ev/?ev=YC-pKX8Pd7M

小堀彩子先生


【ご案内中の研修会】

ブリーフセラピー入門
−解決志向アプローチを中心に−
 
■10月1日(土曜) 9時〜12時
■講師 田中ひな子 原宿カウンセリングセンター所長
 
【申込】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=qbnIfvtmE0M
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円):https://select-type.com/ev/?ev=0gg9RLL1X_A
[オンデマンド視聴のみ](3000円):https://select-type.com/ev/?ev=gpf5EB1bN8M

田中ひな子先生

1.再び増え続け始めた不登校

不登校は、今では特別な事態ではなくなり、誰にでも起きうる当たり前の出来事として扱われるようになっているとも言えます。そのため、以前のように注目されることはなくなってきています。しかし、だからと言って、「不登校は問題ではない」と言い切ることはできません。不登校になることで、その子は、その後の人生を送る上でさまざまなハンディキャップを背負うことになるからです。

実は、一時増加が止まったように見えた不登校が、平成24年頃より再び増加傾向に転じているのです。文部科学省の「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によれば、小・中学校における長期欠席者のうち、不登校児童生徒数は196,127人(前年度181,272人)であり、児童生徒1,000人当たりの不登校児童生徒数は20.5人(前年度18.8人)となっています。不登校児童生徒数は8年連続で増加し、令和2年度(2020年)には過去最多となっているのです。

文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より

2.新たな局面を迎えた不登校支援

しかも、2020年に始まったコロナ禍の影響によって不登校生徒の数は増えるだけでなく、その質も変わってきています。
 
コロナ感染への心配が子どもの不安や恐怖を引き出しました。休校や分散登校、学級閉鎖によって人間関係が希薄となり、多くの子どもの生活は不規則となりました。保護者のテレワークが続いたことで家庭内の緊張が高まり、子どもの居場所がなくなったということもありました。このように、コロナ禍によって引き起こされた複雑な環境要因が不登校の要因として新たに加わったのです※1)
 
さらに、高度情報社会の中でインターネットが普及し、子どもたちはスマホを介して日常的にSNSやオンラインゲームにアクセスすることが可能となっています。YouTube、TikTokなども含めてSNSやオンラインゲームに費やす時間が増加し、依存傾向が強くなっています。その結果、ネット依存やゲーム依存が増えてきています。
 
少し前まではネットやゲームへの依存は、不登校の子どもが、学校に行けていないという現実に替わるバーチャル世界を得ることで家に居続ける要因となっていました。しかし、最近は、ネットやゲーム依存は、単なる不登校の維持要因だけでなく、不登校の原因にもなってきています。ネットやゲームへの依存によって昼夜逆転や睡眠障害になり、学校に行けなくなることが増えてきています。
 
※1)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211217/k10013362471000.html

3.不登校の問題解決に必要な専門的支援

GIGAスクール構想によって学校教材のデジタル化、オンライン化が進み、子どものインターネットへの親和性は急激に増加しています。その傾向は、コロナ禍によってさらに強まりました。既にインターネットは、子どもの生活に深く浸透し、ネットやゲームの依存は不登校増加の原因となっています。また、不登校の原因になる“いじめ”や“仲間外し”もオンライン上で行われます。

そこで、不登校の解決に向けての支援では、より専門的な対応が求められるようになっています。臨床心理iNEXTでは、現代の複雑化した不登校に対して、認知行動療法を活用してどのように対応するのかをテーマとしました。
冒頭に示したように10月9日(日曜)に小堀彩子先生を講師としてお迎えして「不登校支援における認知行動療法の活用」と題する「注目新刊書」著者オンライン研修会を開催します。小堀先生は、『公認心理師のための「心理支援」講義』(北大路書房2022年7月刊※2)のPart2「認知行動療法を活用したスクールカウンセリングの展開」において、「認知行動療法を活用した学校での支援の7つのコツ」といったテーマの解説をされています。

※2)https://www.kitaohji.com/book/b607714.html

4.小堀彩子先生からの皆様へのメッセージ

教室への復帰を願う当事者に対して適切な不登校支援を提供することは、学校現場で働く公認心理師・臨床心理士にとって必須の技術と言えるでしょう。

本研修では、事例を提示しつつ、認知行動療法を活用した不登校支援のポイントについて解説を行います。初回面接で収集すべき情報から、単調になりがちな家での生活を活性化するためのアイディア、学校に戻るまでのステップ、再発予防のための振り返りまで、丁寧に説明いたします。

今後スクールカウンセリング活動を始める予定のある方、不登校支援の技術をブラッシュアップしたいと思っている方、認知行動療法を専門的に勉強したことはないが今後使えるようになりたいと考えている方にとっては、特に適した研修になることでしょう。

不登校状態が解消することは、専門家の関与がなくても、もちろん起こり得ます。認知行動療法とは、このような変化の背後にあるメカニズムの科学的な理解に基づいて、望ましい変化への精度を高めようとする工夫です。専門的な用語の説明は最小限にしつつ、今すぐ現場で使えるコツをご紹介します。不登校中の子どもたちにありがちな昼夜逆転状態やゲームや動画視聴ばかりの日々に関する対策についてもお話しします。

5.小堀先生の動画講義の試聴ご案内

小堀先生の「不登校支援における認知行動療法の活用」研修会は、既にご紹介したように注目新刊書である『公認心理師のための「心理支援」講義』をベースにしています。
 
同書は、認知行動療法をさまざまな現場で使いこなすポイントとなる知識と技能がイラスト入りでわかりやすく解説されている実践的ガイドブックです。特にケースフォーミュレーションを活用する専門的技能が解説されていることが、他書にないオリジナルな特徴です。
 
しかも、同書では、各執筆者(下山晴彦・小堀彩子・熊野宏昭・神村栄一)がその内容を解説している動画講義を視聴することができます。各パートの執筆者が解説する動画講義を視聴しながら、同書をテキストとして学習することができるという映像教材付きのユニークな書籍となっています。
 
小堀先生は、同書のPart2「認知行動療法を活用したスクールカウンセリングの展開」を担当しています。小堀先生の動画講義の一部は、下記のYouTubeで視聴することができます※3)。ぜひご覧ください。

※3)https://www.youtube.com/watch?v=mJQy-kbhcT8

6.研修会参加者の特典ご紹介

今回の研修会の参考書となっている『公認心理師のための「心理支援」講義』の出版元である北大路書房のご厚意により特典が付きます。
 
研修会に向けて同書のご購入希望の方は、「臨床心理iNEXTからの紹介」と明記して、下記の北大路書房のホームページ※4)の商品ページから直接ご購入いただければ、特典付きで同書をご提供いただけることになっています(ご注文→直接購入(カートへ)へとお進みください)

※4)https://www.kitaohji.com/book/b607714.html

同書は、ケースフォーミュレーションを軸とする認知行動療法の介入技能の実際を知ることができる利点があります。構成は、下記のようになっております。

『公認心理師のための「心理支援」講義』の目次構成
 
1. 子どものための認知行動療法の基本を学ぶ (下山晴彦)
2. 認知行動療法を活用したスクールカウンセリングの展開 (小堀彩子)
3. 医療で認知行動療法を活用するために (熊野宏昭)
4. 認知行動療法の実践的理解と介入の工夫 (神村栄一)

7.動画講義付き認知行動療法の基本書ご紹介

今回研修会は、『公認心理師のための「心理支援」講義』をベースとした講義となります。ただ、同書は、児童福祉、教育、医療、産業、開業といった臨床現場の心理支援において認知行動療法を使いこなすことを目的としている点で応用編となっています。
 
今回の研修に参加することを希望する方の中には、認知行動療法をこれから学ぶという人や、活用を始めたばかりの人もおられることと思います。そのような認知行動療法の初心者の方には、まず「臨床心理フロンティアシリーズ 認知行動療法入門」(講談社)※5)をご活用いただくことをご案内いたします。同書を学ぶことで、今回の研修に参加できる基礎知識を得ることができます。
 
※5)https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000148874
 
同書では、心理職の基本技能である認知行動療法の基礎と実践の方法を解説されています。しかも、執筆者が、下記に示す各部の内容を解説する動画講義付きです。読者は、執筆者(下山晴彦・鈴木伸一・熊野宏昭)の動画講義を視聴しながらテキストの内容を学習できる仕組みになっています。

「臨床心理フロンティアシリーズ 認知行動療法入門」目次構成
 
1. 公認心理師のための認知行動療法の学び方 (下山晴彦)
2. 認知行動療法の基本技法を学ぶ (鈴木伸一)
3. 認知行動療法ケース・フォーミュレーション入門 (下山晴彦)
4. 新世代の認知行動療法を学ぶ (熊野宏昭)

不登校に関わる多くの皆様の研修会ご参加をお待ちしております。

■記事制作&デザイン by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?