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マオリ・オペラ~美しいハーモニーを求めて

マオリ×オペラ?

20年ほど前、アオテアロア/NZの大学のマオリ学部に留学していたころ、私が先住民族マオリの勉強をしていることをよーく知っている友人(音楽とアート専攻の現地の学生)の誘いで、マオリ・オペラに関するセミナーに行った。

そのセミナーでは、オペラの世界で活躍するマオリのこれまでと、これから活躍したい…と日々練習に励むマオリの若者たちのことを学んだ。美しい歌も聞けて、マオリの音楽の素晴らしい未来が見えて、大満足の1日だった。

世界的な歌手、キリ・テ・カナワ

セミナーの誘いを受けた時、「マオリ×オペラってちょっと意外…」と最初は感じたのだが、すぐにその考えを改めた。すでに素晴らしい先駆者がいることを思い出したのだ。

それは、世界で活躍するソプラノのオペラ歌手キリ・テ・カナワ。ヨーロッパ人とマオリの血を引く彼女は、国内の音楽大学と英国ロンドンで勉強をした後、1968年の『魔笛』でデビューし、様々な舞台で活躍。1981年に、チャールズ王太子とダイアナ・スペンサーの結婚式に出席、祝いの歌を披露し、1984年にグラミー賞・最優秀オペラ録音賞を受賞している。彼女が出したマオリの曲を集めたCDアルバムは、心揺さぶられる名盤だ。Apple Musicでも聞けるので、よかったらぜひ!

キリ・テ・カナワは、自身の基金を設立し、自国の音楽家の育成をサポートしている。マオリ・オペラのセミナーを思い出しながら「今、マオリ・オペラはどうなっているんだろう…」と思ったらこんなニュースを見つけた。

マオリ・オペラの今を伝えるニュース

マオリのオペラ歌手がスターを目指して頑張っている、というマオリ語のニュースだ。最初に紹介されているNatasha Wilsonさんは、マオリのルーツを持つ学生。インタビューの中で、こんなコメントをしている。

  "I knew music by ear and by the feeling and I think being Māori, it's like an inherent sort of thing. I think you harmonise really easily which is actually a really hard thing to do, but it's just what your family does."
仮訳(かなり意訳しています):「私は耳から音を感じ取って音楽を知っていたし、それはマオリにとって、とても自然なことでした。一般的にはハーモニーを作ることは簡単ではないけれど、マオリの家族は、それを、いとも簡単にやるんです。」

「ハーモニーが当たり前。」それがマオリ。

彼女のコメントを聞きながら、マオリの学生たちと一緒に過ごした時の驚きを思い出した。一緒にいると、誰かがギターを持ち、適当にコードを弾き、歌いだす。それに、家族や仲間が絶妙のハーモニーをつける。すべて即興だ。音程のズレ? そんなものはないのが当たり前。そんな世界だった。「うわあ、かっこよすぎる…」心からそう感じた。

きっと、マオリにはずっと受け継がれてきた音感があるんだと思う。そして、それを活かして世界に羽ばたくマオリ・オペラは、最高に素敵な取り組みだと思っている。

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