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北千住で本屋をはじめます。vol.3

前回から少し時間が空いてしまったんですが、なぜ本屋をやろうと思ったか、みたいな話はこれで最終回になる気がする。

前回までの話はこちら:

すごく端的に言うと、「場所」「時間」が見つかったからだと思う。

そして私の人生とかキャリアはいつもその時々のパートナーと結びついている(なんだかお恥ずかしい話ですけど)。

1章 新しい恋人ができた

2021年に離婚することになって、2023年にそれまで友達だった人と付き合うことになった。結婚と離婚があって、もう真剣な交際はしばらくいいや…と思っていた矢先で、私ってつくづく気分屋でてきとうなのだなと思うのだけど。その彼が北千住あたりが地元ということで、それまで私が住んでいた千歳烏山の家ももうすぐ契約が切れるし、「一緒に住もうか、北千住に」という話になった。まだ付き合って2ヵ月くらいだったし、周りの人からは「大丈夫?」と心配された。そもそも私の付き合いはいつも突拍子がなくて「え、それ平気?」みたいなことばかりなんだと思う。でも人生は短いし、流れに乗らないとたどり着けない場所があるのだ。えーい、と北千住に行くことにした。

北千住はとてもおもしろい街だ。みんな知ってるかもしれないけど。超下町だし、おそらく“東京のゲットー”みたいに思われているし。小さくて面白いお店とか、世間の「こう生きる」みたいな枠から逸脱している人がたくさんいる(と思う)。作家やミュージシャンや何か表現している人も多い気がする。徒歩圏内で行けるクラブ(小さめの箱)もあるし、みんなが集まるバーというか飲み屋さんもあるし、絶対初見じゃたどり着けない怪しいバーもあるし、イベントもよくやってるし、コミュニティが機能していて素敵だと思った。

2章 北千住で何かやらない?

住み始めて数ヵ月経ったある日、彼の友人が持っているビルの1階が空いた。もともと店舗スペースで、それまでにも古着屋、おみやげ屋さんなど、友人らが借りて商いをするような場所だった。不動産には載らない、友人による友人のためのスペース。3坪くらいの小さい空間で、半分がガラス張りで、駅からも近く、雰囲気もいい。ここで本屋できるじゃん!と思った。でも自信がない。だって私、サービス業などはてんで苦手だし、誰かのリーダーシップを取ったり、何かをぐいぐい切り拓いていくタイプではないのだ。どちらかというと、さっきも言ったように、流れに流されてなんとなく生きてきた。周りにいる人に助けられてやってきたのだ。だから一旦考えてみることにした。「誰の挙手もなかったら私がやろう…」

3章 フリーランスの仕事が減った

その頃、私のフリーランスの仕事状況に変化があった。業務委託を1社、他3社くらいの合計5〜6社と毎月仕事のやりとりをしていたのだけれど、まずそのうちの業務委託の1社の仕事が減り、私の月収はいきなり1/6以下になった。ヤバイ。無理。22歳からフリーランスだからもう13年くらいフリーでやっているけど、ありがたいことに結構運が良くて、いつも業務委託またはそれに準ずるかたちでの契約で、フリーなのに固定給があった。だから毎月いくら入ってくるかわかんない!みたいなことは実は経験したことがない。俺、生きていけるか? 幸い貯金はあった。でも吐きそう。

とりあえず、転職活動だ!でもフリーランスの仕事はまだもらえてるし、就職はできないししたくない。やはりフリーか業務委託がベストだ!と探すが、あんまりいい仕事(やりたいもの)がない。(お前、そんなこと言ってられる立場か?って感じだけど)。でも私、やりたくないことをやったりするとすぐメンタルの調子を崩す。だからこの生き方しかできない。が、そもそも業務委託での求人なんてあんまりない。だからいくつか正社員募集のところに書類を送ってみた。だがしかし書類が通らない。職歴たくさんつけても書類が通らない!!!!20代の頃は経験もスキルもないのに通ったのに。今は同じ職種のことならだいたいのことは勘でわかると思うし、前よりスキルもある。なのに通らない。なぜなら私が35歳で、大した学歴もなく、10年以上のフリーランス選手だからだ。もう嫌になった。少子化で人間が減っているから、働き手が少なくて、これからは会社は選べなくなる時代が来るって言ってたけど、まだきてないの? それとも人気のところはまだずっと人気なの?

4章 ベルリン流を取り入れた

どうしよう…と思っている頃、ベルリンに移住していた編集者の友人アコが一時帰国した。アコのベルリンブログも面白いのでぜひ読んでみてください。で、根津で定食を食べているときに、「アコも嫌な仕事断ったからさ〜。今は流動的だよ」という話になった。その時に、「でも、これまでたくさん働いてきたんだし、別にゆっくり探してもいいんじゃない? 貯金もしてきたんでしょ。ベルリンの人はみんなそんな感じだよ。別にすぐ死ぬわけじゃないし。アコももう半年くらいそうやって生きてるよ。その間にいい仕事があったらやったらいいと思う」みたいなことを言っていて(時間が経ちすぎて意訳になってます)、私は目がいきなり覚めるような気持ちだった。

まじ? そんな働くことに一生懸命にならなくていいの?

それですごく心の負担が軽くなって、無差別に職探しをすることをやめた。そうだよ、私こういう時のために(国は守ってくれないから)貯金をしてたんじゃん。(今更だけど、フリーランス用の保険に入っときゃよかった)。ということで、まだ他にも仕事はあったし、確かに収入は減ったけど、生きていける。というか今までが余剰すぎたのかもしれない。寝ずに働くこともなかった。そしたらすごく人間らしい生活が戻ってきた。それは例えば、土日にデスクに向かわない、気兼ねなく映画館に行ける(数時間でもメールや電話を返せないことが怖かった)、パソコンを置いて出かけられる、みたいなこと。社会人になってから今までの私の人生って逆に何だったの? 休むって大事だよ。

5章 もうやるしかねえ

それから数ヵ月、私は収入を下げて、それなりに暮らしていた。しかしここでまた事件?が起きる。ついに業務委託契約が終了となった。なぜなら、その媒体の趣旨がまるっと変わり、私のいたチームが解散となったのだ。サヨナラ〜。まぁけど今までもこういうことはたくさんあった。

しかし、さらに追い討ちをかける出来事が……

春から初夏にかけて起きたこと

・業務委託契約が終了(40万くらい減った)(涙)
・ある媒体でお世話になっていた編集者さんが異動(涙)
・ある媒体でお世話になっていた編集者さんが転職(涙)

さすがにこれはまずいんじゃ。だってほとんどお小遣いみたいな世界線になっちゃうよ!? 私は焦った。これはちなみに5月のこと。どうしよう、なんかしなきゃ、なにかやらなきゃ…「あ!!!!そうだ、本屋やろう!!!!」本人はひらめいたつもりである。というかもう他にやることもないし、本屋をやるっきゃねぇ!みたいな状態だった。

本屋で生計が立てられるとか、本屋が成功するとかは全然思っていないけど、新しい風というか、新しい何かをする時期な気がした。ピンチはチャンスだ! ということで、彼の友人のところへ聞きに行った。

「まだ借り手って見つかってませんか?」
「おー、まだいないね」
「あの、本屋さんやりたいんですけど」
「まじで!!ありがとう!!!」

ということで、晴れて私はあの素敵な場所を借りることになった。これが長いけれど、私が本屋をやることになるきっかけです。

vol.1〜3までの話をちょっと整理してみた。

1. 場づくりしてみたい(願望)
2. 本とかzineとかおもしろい(気持ち)
3. 引っ越す(環境)
4. 仕事減って時間増える(環境)
5. お店借りる(やる気)

お金はもちろん大事だけど、新しいことを始めたり、何かを創造するには時間って大事だなと思いました。つまり、仕事が減って焦ってたけど、結果楽しいことが始められそうでよかったね、という話です……。まぁまだどうなるかわからないけど全部経験だ!!!


最後に彼氏に教えてもらったスチャダラパーの『ヒマの過ごし方』の歌詞をところどころ引用して終わりたいと思います。

なぜいそがしくするのだろう
何もしないでいられないのだろう
何もしない不安それは何だ
恐いのはただただある時間
縮める事も のばす事も
ましてや 消す事も不可能
すべての者に同じだけの
時間が与えられてるとしよう
そうなってくると恋愛 ファミコン
仕事 その他諸々
かなり思いがけない事だが 人は
必死でヒマをつぶしてるだけだ
んーっ じゃあ ぼくらみたいな
ヒマに見られがちな人達が
見下されてる気がするのは
どういう事だ?
パッと見 生産的なもの以外は
無用だとでも言うのか
あんまりだ それはちと強引だ
いそがしposseはいつもこうだ

本来ヒトはヒマだった
そしてそれを受け入れる事が出来た
世界中のいたるところ その足あとを
見つける事が出来るだろう
大仏 ピラミッド
巨乳 万里の長城
この世の多くのデカいものの
発想自体ヒマのたまもの
地図を作ったやつのゆとり
なみたいていのものではあるまい
うるう年に気づいたやつのヒマさ
かげんを想像してみろ

これらの事からもハッキリ言える
今の人がヒマを受け入れる
事が出来なくなりつつあるなら
それは能力の減退だ
減退はいかん くいとめるのだ
ヒマ人どもよ立ちあがる時だ
ヒマを見つけて ヒマを知れ
ヒマを生き抜く強さを持て
一生 棒にふるぐらいの
ヒマと ゆとりを持って進もう
人の数だけヒマはあるのだ
それこそあたりまえの事なのだ

ヒマの過ごし方の歌詞/スチャダラパー

ちなみに編集やライターは引き続きやっておりますです。お仕事も待ってます!☆

おわり。

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