見出し画像

北千住で本屋をはじめます。vol.2

2021年頃、「不便」をテーマにしたお店というか場所をやりたいなぁと考えはじめて、でも具体性を持って考えられずにいました。数人の人にこんな店やりたいんだ、と話したことはあるけれど、「へ〜」「おもしろいね」で終わってしまう。なぜなら私はプレゼンが下手だから。

そんなこんなで、仕事も忙しかったし、私が何かを始めるなんてこと、考えないようにした。その間、人生においてもいろいろあった。タイと日本で遠距離をしていた恋人とコロナ禍に遠隔で国際結婚して、そして別れた。入籍してからは1日も一緒に住まなかった。それに日本に帰ってきて3年くらいが経っていたけれど、持ち前の飽き飽き精神が出てきて、もう俺、フランスかポルトガルに引っ越すわ、とも思いはじめた(脈絡がない)。でもどれもふわふわとしていて、何も決まらない。

その頃、人生で初めてのzineをつくった。離婚した彼(その時はまだ離婚していない)に会いに行った、タイで過ごした1ヵ月の日記。結局その記録が、私たちが過ごした最後の日々になったんだけど。まぁつくっている時はそんなこと知る由もなく。タイから帰国した際に、私はコロナに感染していて、成田空港から隔離ホテルに直送された。そしてそこで8日間缶詰で過ごした。そしたらもう制作に向き合うしかない。いつもだったら途中放棄していたかもしれないけれど、ここぞとばかりに向き合って、zineを完成させることができた。ちなみにそれがこれ。

下北沢のボーナストラックというところで開催された「タイポップカルチャーマーケット」というイベントの運営を手伝っていて、私も何か出すことになった。そこでこのzineをつくって売った。そしたら結構売れたんである。Tokyo Art Book Fairにも誘ってもらったり、文学フリマに初めて出たりして、結構好評だった。それが嬉しくて、次々いろんなのをつくった。(けど、結局最初につくったこれが一番人気)

そして、世の中には、zineやリトルプレスの大きなコミュニティがあることを知った。特に文学フリマは驚いた。みんな、こんなにつくってるんだ〜と感動した。私は職業ライターだったから、文字をお金を稼ぐ道具として使っていた。だから表現として使うなんて新鮮だった。というか、仕事にする前は、私は詩を書いたり、ブログを書いたり、それは表現だったのだけれど、いつの間にか商業になってしまっていた。だから、なんていうか、眼から鱗がポロポロポロ〜って。そうか、私なんでも書いていいんだ、と思ったのです。そして、そうやってやってる人がこんなにいるんだ!(目が輝いた)

その頃、小さい書店の存在も知ったし、それは東京だけでなく、日本各地に散らばっていることや、なんなら世界にもたくさんあることを知った。そしてそういう本屋さんが、本を売る場所だけでなく、カフェだったり、宿だったり、コミュニティースペースだったり、いろんな機能を持ってることにも気がついた。本屋、すげえ。
小さい頃から本屋が好きで(田舎だったので、本屋かイオンか銭湯くらいしか行くところがない)、夕飯を食べ終わると母に「本屋行こう〜」とよくせがんだ。でも私の知っていた本屋は、イオンみたいなところ。全国どのイオンに行っても同じ商品が並んでいるように、特色がなかった。ただほしい本を買いに行くところ。でも本屋って特色持てるんだ、超自由なんだ、みたいなことをこの頃思った気がする。最近は旅行先では本屋あるかな〜と探すようにもなった。

そして2022年、Twin Palace Pressという出版レーベルをやっているあやーなに誘われて、静岡県三島市にあるCRY IN PUBLICというオルタナティブ・スペースに連れて行ってもらった。そこにはたくさんzineが置かれていて、中央にテーブルがあった。その日は確かzineをシェアするという日。誰でも無料で参加できる。私は人前とか新しい人と話すのが苦手だけれど、そこはとても安全な場所のようで、不思議とおしゃべりできた。次から次へと馴染みの人がやってきて、お菓子やみかんを持ってくる。雑談をする。それを体験して、好き!!!!と思った。こんな場所、私の家の近くにあったら、とても嬉しい、安心する、毎日来たい!と思った。

私は学生時代、保健室が大好きだった。保健室の先生は優しい。具合が悪くなくても、そこにいていいし、寝てもいい。怒ったりしない。疲れる学校生活のオアシスみたいな場所。大学時代には保健室がなかったからか、私はいつも河原に座ってぼーっとしていた。私は、会社員というか組織に属することがすごく苦手なのだけれど、会社にも保健室みたいなところがあったらいいんじゃない、と今思った。そしたら会社員やれたかも。無理かも。

CRY IN PUBLICって素敵だな、あんな場所素敵だな、と心にぽわんと火が灯ったのかもしれない。そしてそして、本屋とかzineとか場所というのが繋がっていったのです。


つづく



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?