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万人受けを目指すな!今後求められるテーマ型ローカルツーリズムとは

2020年7月23日に開催されたインバウンド業界最大規模のカンファレンス「インバウンドサミット2020」。「北陸」セッションの様子をお届けする。

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、都心部に集中していた観光客が「安心・安全」を求め地方へ分散する可能性に触れ、マスツーリズムから対象の選択集中型への切り替えや、その土地でしか味わえない「体験のパッケージ化」「地域への関わりがい」を重視する必要性の提起などが行われた。そのためにも、まずは自分たちの強みは何かを明確にすること、観光事業者のみではなく地域ぐるみでコンテンツを生み出していくことが大切とあった。

「選択と集中」という新たな形のインバウンド

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インバウンドは全世界の外国人に向けての観光産業というイメージがあるが、決してそうではなくどこの人々をターゲットとするのか、彼らが何を求めているのか、そして自分たちの強みはどこにあるのかを明確にすること。つまり徹底的に選択と集中を行う必要性がある。

佐渡はアクセスの悪さによる観光客の減少がネックとなっていたが、それを乗り越えるコンテンツの企画を目指した。感度の高い富裕・若年層に絞り込み、「live together」と題し地域ぐるみで、そして観光客との共存をテーマに魅力を集中的に伝えていった。

また鯖江市では自分たちの強みであるものづくりの文化を継承するために、日本の就職する学生たちへの発信を続けていたことで、地方創生に興味を持つアジア圏の方々も訪れるようになり結果的に観光業へとつながった。このような、町おこしとインバウンドの垣根を超えた「地域への関わりしろ」を生み出していく事も選択と集中につながる。

選択と集中には弊害も

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選択と集中型のインバウンドには弊害もある。呼び込むターゲットや伝える魅力を絞ってコンテンツ化を進めていく中で、観光客が日本に求めるものと受け入れる側が発信したいものの間にギャップが生じてしまう事があるのだ。そもそも地方の観光業において高齢化、働き手の不足が進んでおり、外国人の受け入れに対しての理解が少ないというのも課題となっている。

このような場合は受け手と伝え手という二項対立ではなく、在日の外国人を労働者として受け入れ住んでもらう事で文化の違いを認識しつつ人員不足を解消するなど、伝え手と受け手の間に立つことのできる存在を作り、その溝を埋める役割を果たしてもらうことが重要である。

ウチとソト。 共通する「巻き込み力」の大切さ

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従来のインバウンドでは、移動手段がネックとなり地方に目を向けられる事が少なかった。しかしこれからの「安心・安全」が求められる世の中において、開放的な地方の需要は高まるだろう。

その中で都心部ではできない、その土地ならではの強みを生かした体験・パッケージを地域ぐるみ・街ぐるみで生み出していくことが、今後のインバウンドにおいて求められるのではないか。いかに地域の人々を巻き込んで独自の強みを発揮できるかが大切になってくるだろう。

インバウンドと地方創生、外国人観光客と受け入れる日本人というボーダーラインをどこか意識してしまいがちではあるが、決してそうではなく「人のつながり」という本質的な部分を意識したフラットな関係性づくりが重要になる。

選択と集中で見える、オリジナルカラー

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新型コロナウイルスによる影響で、現在観光業はとても大きなダメージを受けている。ただそれ以降を見据えて考えると、「安心・安全」が観光にも求められていく中で、都心部に比べて人が密集していない地方への安心感という部分は大きいだろう。

その中で生き残っていくためには、全方位に向けた漠然とした発信ではなく、「誰に」「何を」「どうやって」伝えるかを明確にする選択集中型を行い、他の地域との差別化を図ることが鍵となる。

選択集中型の観光業に切り替えるためにも、この期間をただ漠然と過ごしてしまうのではなく自分たちの強みは何かを見つめ直し、地域ぐるみで動いていくことが大切である。

<登壇者>
古田秘馬 氏
umari 代表。0からのうどん作りが出来る古民家「UDON HOUSE」など全国で様々なプロジェクトを企画。

清永治慶 氏
佐渡観光交流機構 専務理事。「日本の全てがここにある」と題し佐渡の魅力を国内外に伝える活動を行う。

二階堂パサナ 氏
南魚沼市観光協会 インバウンドアドバイザー。インバウンドに限らず、フリーライター・通訳など幅広い活躍を行う。

新山直広 氏
TSUGI 代表。ものづくりの町・鯖江を観光、インバウンドに強い街へと変えていく取り組みを実行。

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執筆・編集:明治大学 安田 舜

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