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本題)EC事業DD評価の進め方(連載3/5)

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スコープ)DD支援内容

DD支援のスコープとして、基本的にプロジェクションの細かいモデルや計算式には触れず、私が関与している部分は、向こう4-6年のEC事業売上見立ておよびマーケティング費用+必要となるその他費用(人材費用・設備投資など)の試算にとどまる。
売上成長の見立てやマーケティング費用の試算は、Google Analyticsのデータをもとに、Google Keyword PlannerやAhrefsを参考にし、チャネルごとにトラフィック・CVR%・AOVへと分解し、ボトムアップ方式で見立てをつくりあげる。
売上見立てに加えて、下のアウトプットイメージのような資料をもって現状把握や前提条件を整理する。

成果物)アウトプットイメージ

最終的なアプトプットとして、下記のような図を準備することが多いので、今回はダミーデータや一般的に入手可能なデータを用いて紹介。

現状整理)Googleでの検索数推移(こちらはダミーではなく実数)
現状整理)チャネルごとのトラフィック、サイト全体ユーザ行動可視化
チャネル別売上成長の見立て
現状の整理および今後の成長見立ての前提条件・根拠
優先的に取り組むべき課題および主な施策の想定インパクト・コスト

作業)現状把握・成長見立て作成プロセス

EC事業の現状把握は、EC売上・コストデータをもとに、QAにてGoogle Analytics(GA)権限をリクエストし、必要なデータを分析・加工している。
GA権限をリクエストする理由として、QAでトラフィックのデータやサイト挙動のレポートを質問し続けることに双方かなり時間・リソースが取られることから、私自身でGAのデータを抽出し、分析する方が手っ取り早い。
加えて、後述するがAhrefsおよびGoogle Keyword Plannerのデータも抽出し、分析を進める。これらの対象会社のデータやGoogle・Ahrefsなどをもとに、マクロ環境(市場成長率など)や外部モール(Amazonや楽天など)の成長率も考慮し、EC売上成長を試算することが多い。

現状把握)Google Keyword Plannerのキーワード検索数レポート
現状把握)Google Keyword Plannerから抽出した月次検索数

現状把握のためのGA、Google Keyword Plannerデータ抽出・加工が終わり次第、チャネルごとの売上成長について詰めていく。
チャネル別で、トラフィック・CVR%・AOVの過去データをもとに、今後の成長率を妥当性を考慮しながら試算していく。今回はダミーデータのため、毎年同じ成長率で成長し続ける想定としているものの、チャネルによっては毎年成長率が変わることもある。

この際に、特に注意が必要なチャネルはSEOやPPC・Displayである。
SEOは①現時点で獲得している指名・一般ワードの成長に加えて、②新規で獲得できそうなワードを分けて考える必要がある(AhrefsおよびGoogle Keyword Plannerより抽出)。
PPCやDisplayは毎年成長する見立てに加えて、ROASなどの効率が悪化しつつ、拡大するバランスを取りながら試算する必要がある。

サイトKPIの成長見立て(簡素化したもの)

チャネル別売上見立て(簡素化したもの)

合意形成)議論を通して前提の精度を高める

上の流れで成長見立てがある程度固まった段階で、他のプロジェクトメンバーに向けてハイレベル試算について資料を用いて紹介し、見直すべく前提や成長レバーについて議論を重ねる。必要な変更を加えて再提出、というプロセスを3-5回繰り返すことにより、より精度の高い成長見立てが出来上がる。

経験上、議論のポイントとしてよく挙がるのは、
①市場全体成長率(見立て通りに市場は成長し続けるか)、
②CVR%改善幅(サイトを改善した時の伸び幅は現実的か)、
③AOV(平均注文単価の伸び幅は妥当かどうか)。
中でも、②③はサイト全体の計算式を変えることになり、最終的な売上への影響度が大きいため、ある程度コンサバに見積もりながら現実的な水準へと導くために、慎重に進める必要がある。

作業)補足資料の作成

成長見立てが納得いく水準まで出来上がった後、補足資料に取り掛かる。
例えば、EC事業にまつわる関連用語の説明やEC事業の一般的なKPIの説明など。
DD資料の対象は必ずしもマーケッターやEC専門家ではないため、丁寧に作りあげる必要がある。(と言いつつも、プロジェクト最中において著者自身もこういったEC一般的な資料を雑に進めてしまう傾向があるため、注意しなければならない)


次の記事では、使用しているツール概要や成長レバーについて補足していきたい。

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