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【読書備忘録】思い出トランプ

世界中のどこかにいる皆さん。
こんにちは、こんばんは!!
いなりです。
デジタルデトックス私が勝手にD.D.と呼んでいるを行なった結果、読書習慣がついてしまった2023年
この読書週間を継続すべく、そして読書したいけどどんな本が面白いのかわからない!自分が求めている本を見つけるヒントが欲しい!そんな方のお役にでも立てれば!!という思いで私が読んだ本を備忘録的にネタバレはなしは最小限に紹介していきます。

今回紹介する作品は「思い出トランプ」です!

こちらは向田邦子氏の短編作品を集めて1980年に発行されたいわゆる短編集となっております。全13遍が収録されている本書ですが、その中でも「かわうそ」、「犬小屋」「花の名前」の3作品は向田邦子氏が直木賞受賞した作品でもあります。
作者の向田邦子氏は脚本家としてテレビドラマの「寺内寛太郎一家」や「阿修羅のごとく」などを手がけていたことでも有名ですね。



「思い出トランプ」ってどんな作品?

「思い出トランプ」は向田邦子氏の短編作品を集めて1980年に発行されたいわゆる短編集となっております。全13編が収録されている本書ですが、その中でも「かわうそ」、「犬小屋」「花の名前」の3作品は向田邦子氏が直木賞受賞した作品でもあります。
作者の向田邦子氏は脚本家としてテレビドラマの「寺内寛太郎一家」や「阿修羅のごとく」などを手がけていたことでも有名ですね。
また若くして飛行機事故で亡くなられてしまったということをご存知の方も多いかと思います。
さて、そんな思いでトランプですが、どんな作品なのかというところですが、
まずは文庫本の裏記載のあらすじにはこんなことが書いてあります。

浮気の相手であった部下の結婚式に妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さで夫を翻弄する人妻。心の内で家族を蔑み続ける、元エリートサラリーマン。やむを得ない事故で子どもの指を切ってしまった母親などー日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡猾さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。

向田邦子.思い出トランプ.新潮文庫.1980

本書あらすじ記載の通り13編全ての作品において、登場人物は過去の経験や起こした行動に対して後ろめたさや、後悔といったネガティブな側面を抱えています。
短編なので一括りにあらすじという風に紹介するのは難しいのですが、
例えば、「酸っぱい家族」という作品では、ある日飼い猫が咥えてきた死んだ鸚鵡を他所にバレないように処分できる場所を探すことになる主人公ですが、捨てる場所を探すにあたり、捨てることの難しさを思い知らされると共に、自分自身が過去に捨てたはずの過去を思い出します。

「思いでトランプ」を読んで思ったこと

人のネガティブな思いを描くことでより人間らしさを

あらすじでも紹介した通り、この思い出トランプに共通している特徴というのは、各物語の鍵となる人物にはどこかに、後ろめたさや、過去への罪悪感といった所謂ネガティブな側面を持っています。
わかりやすいところであれば浮気などですね。
そんな人間の暗い側面が描かれることで本作の登場人物のキャラクター性に一層人間味が出ています。
罪悪感や、後ろめたさを知ることで登場人物のとる行動や、感情に至るプロセスの背景部分から読み手側が追えるようになっている構成だから、読み手は共感がしやすいのかもしれないですね。
それとも、そもそも負の側面というのは誰もが持っているという前提があるからこそ、読み手は登場人物の気持ちを理解してしまうのでしょうか?
なんだかとっても不思議ですね!
憎らしさ(ネガティブな側面)があって登場人物へ愛着(愛しさ)が感じられる本作は、まさにLove and Hateという表現が結構しっくりくる気がします。
そのようなネガティブな側面が目立つ分、全体を通してどこか暗い影がチラつく話ばかりなのですが、その影のチラつき具合が絶妙で、重過ぎることなく、ただ、しっかりと読み手の中に読み応えという形で、ストンと落ちてくるのは、見事だと思ってしまいます。

想像力が掻き立てられる作者の表現が本作品の魅力

私が向田邦子氏の作品を読んで魅力に感じたのは読者へ想像を促す表現が多いという点です。
作品の中では直接的ではなく、別の言葉や名称で表現されている場面が多いです。
例えば「かわうそ」という話の中では

頭の中で地虫が鳴いている。
倒れてからひと月になるが、地虫は宅次の頭の、ちょうど首のうしろあたりで、じじ、じじ、と思い出したように鳴いていた。

向田邦子.思い出トランプ.新潮文庫.p12

という文章があり、こちらは非常に分かりやすい表現にはなるのですが、
主人公の頭の中に何か違和感というか、爆弾のようなものが潜んでいるのが伝わりますよね。
このような形で直接的な表現を避けることにより、文章だからこそできる想像の自由を最大限に引き出しているように思えます。
これは直接的な表現を避けるだけではなく、場面の移り変わりや説明をあえて省いて物語を進めることにより、文章化されていない文章を読み手がわで想像する余地を与えているようにも思えない。
かっこよく言うと「行間を読ませる」と言うんですかね??
そのため、文字をただ追っているだけでは、作者が作品を通して描きたいところまで辿り着けない作りになっています。
短編1つが大体20ページくらいなのですが、想像力を働かせながら読むためボリューム感はかなりあります。私は各話終わるたびに、読んだなぁと余韻に浸っていました(笑)

こんな人は読む価値あり!!

以上から「思い出トランプ」の特徴は大きく3つある考えます。

  • 直木賞受賞作品が複数収録されており、文学作品として名誉ある短編集。

  • ネガティブな側面を見せることで登場人物の人間味をより強く引き出し、読み手側が共感しやすい作品。

  • 読み手側へ想像を委ねる表現が多く、短編ながらひとつひとつの作品が読み終わった時の読了感が大きい。

これらを踏まえると「思い出トランプ」はこんな人にオススメしたいですね!

  • ひとつの作品を読んだ後に誰かとその作品の話をしたい人、感想会などが好きな人

  • 人間味のある物語や、登場人物に共感できる作品を読むのが好きな人、そんな作品が読みたい人

  • 作品の情景や登場人物の感情を想像しながら物語を読むのが好きな人

  • 手軽に読みたいが、読了感が欲しい人

当てはまる人にはぜひ読んでもらいたいですね!
ただ、注意点としてはあまり本を読まない人がいきなり手を出すには少しハードルが高いかもしれないことですかね。
ある程度本を読む習慣というか文章を読むことに慣れている人じゃないと短編ながらカロリーオーバーで読み切る前にお腹いっぱいになる、もしくは、物語の展開に追いつけない可能性は大いにあり得るかもしれないです。
ただ、本作品は私としてはかなりオススメしたい一冊なのは間違いないのでこの記事を読んで少しでも興味を持たれた方はぜひ読んでみてください!

ではでは〜

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