【読書感想文・基礎からわかる論文の書き方(小熊英二 著)】「科学とは?」から始ままり、「考える→行動する→まとめる」をわかりやすく教えてくれます!
Audibleで「基礎からわかる論文の書き方」を聴きました。
よくよく考えると、論文を書いている身としては恥ずかしながら、
抽象的な「論文の概念」
を考えたことがあまりなく、研究成果を形として残すためのもの、として論文を位置付けていました。それはある意味では正しいのかもしれません。しかし、昨今、「論文=研究者の能力評価の指標」という見方が国家的なシステムにより(?)肥大化しすぎてしまって、その考え方に押しつぶされそうな自分がいることは否定できません。
本書は、それを少し和らげてくれる、地方大学の研究者としてはありがたい内容が盛りだくさんでした。
本書に書いてあるとり、本書は大学におけるレポートから、仕事における会議資料、高校生までの読書感想文まで応用できそうな内容だったと思います。文章をわかりやすく書くために、知識として読んでおくのもいいと思います。
また、考え方、文章の書き方について、料理と比較することが多く、料理好きの自分としては、理解の助けになりました。また、文章が対話形式で、授業にも応用できそうなこと、各章にまとめがあり振り返りやすいこと、最終章に、作者の考え方を含めたまとめが非常に共感できたこと、何回でも読み返したくなる本でしたので、紙版も買おうかと検討しています。
本書でとても役に立った考え方は、
・科学の進歩はどうやって行われてきたか
・そのための論文の立ち位置と論文の中身に必要なもの
についてです。
まず、科学の進歩についてですが、本書では
と記されています。この公開と追試を行い批判的な対話を作り出すものが「論文」です。それを考えると、論文は、
・主題と対象が明確である
・追試のための情報を漏れなく含んでいる
・結果が具体的に主題に沿って表現されている
・その結果から客観的に言えることがまとめられている
・行った研究における限界が記載されている
ことになります。
このことが頭に入っているだけで、なんとなく違う視点から研究を見ることができます。
本書にもありましたが、人間は不完全で、その人間が行うことも不完全で、だから、みんなで指摘しあって科学の進歩を推し進めるんだ。その一端を担うことに価値がある。論文はその指摘を受けるためのものであって、自分の力を示すだけのものではない。そのように思えます。
今の自分の中では、やはり認められたい、という気持ちがないわけでは無いので、今注目されている研究者の人たちを羨む気持ちは、不完全なのでもちろんあります。しかし、その気持ちと切り離して、研究をし、論文を書くという作業を続けることができるきっかけをもらったかな、と思った次第です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。