“きっかけ”に依存する人間関係。
以前、小学校からの同級生で恋愛体質の千葉くんが、恋人とうまくいっていないことについて話していました。
恋人と一緒に過ごしてもときめきがなくなって、相手に興味が抱けない状態になったそうです。
そんな時に千葉くんは、付き合いたてのときめきを思い出すために、温泉旅行に一緒に行くことで、かつての恋愛感情を取り戻す計画を立てていました。
「そういうきっかけを作れば、何か変わると思うんだよね」
その話を、僕の隣で一緒に聞いていた代々木くんは、疑問符を思い浮かべているような表情で千葉くんを見つめました。
代々木くんは高校時代からの同級生で、かなりの人気者なので、恋愛に関しては、僕らよりも詳しいです。
代々木くんは、千葉くんの話を聞いて一刀両断しました。
「それって、お酒の勢いで付き合うようなものじゃない?」
僕にも千葉くんにも、そういう視点の考えはありませんでした。
しかし、その指摘はあまりにも鋭いものでした。
「何かがないと付き合えないってのは、お酒がないと口説けないようなもので、完全に自分たちを騙している。本当に好きだったら、きっかけなんて作らなくても付き合えると思うけど・・・」
確かに、人間関係というのは、何かしら無理矢理きっかけを作って、仲良くなるものではありません。
僕と千葉くんと代々木くんだって、3人で仲良くなるために旅行に行ったことはありません。
ただ、同じクラスになんとなくいて、なんとなく喋ってみて、この歳まで仲が続いているのです。
3人でいるときに、強いお酒も楽しいゲームも美味しい食事もなくたって、全然楽しい時間を過ごすことができます。
恋人同士だって、人間関係です。
その人にちゃんと興味を持って、会っていない時間に会いたくなって、会ったら嬉しくて喋りすぎちゃって、帰りたくなくなるのが、好きな証拠なのでしょう。
恋人同士というのは、友達関係とは違って、明確な別れがあるからこそ、それを阻止しようと努力するのかもしれませんが、その努力をしている時点で終わっているのかもしれません。
何かしらのきっかけというのは、そのきっかけに依存してしまう危険性があるのです。
もし、相手とうまくかみ合っていないと感じたら、相手のことをじっと見つめることが大事です。お互い、ごまかしのきかない空間で一緒に過ごす方が良いのかもしれません。
なんでもない日常に、相手の魅力を見つけられるのなら、「好きかどうかわからない」なんてことはないでしょう。
二人の仲に“きっかけ”が要らないのであれば、それはきっと、手放してはいけない人間のひとりなんです。
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