忙しい銀座にも、実は思いやりがあった。
今日は、「普通の旅」をしました。
「普通の旅」というのは、自分の住んでいる地域とは違う場所に宿泊し、1泊2日はその地域で生活するというだけのことです。
特に観光したり、誰かと遊びつくすのではなく、一人でじっくりと、その街を味わうのが醍醐味です。
自分が疲れていると感じたり、落ち着きがないと思ったとき、自分を取り戻すために、今の環境から少し離れてみることは、大事なことです。
今回、僕が訪れたのは、日本の伝統・流行・ビジネスが集まった最先端の街・銀座です。
銀座駅から数寄屋橋交差点の方に足を踏み入れると、歩く人の足音がコツコツと鳴り響きます。
サラリーマンが力強く打つ革靴の音、急ぐ女性が小刻みに奏でるピンヒールの音、一瞬すれ違っただけなのに風流を感じさせる下駄の音など、音階も拍子もバラバラでありながら、どこかひとまとまりにも聞こえるような不思議な足音に、何だか僕も参加しなくちゃいけない気がして、足を踏み鳴らしてみます。
しかし、僕には、その参加資格はないような気がしました。
銀座の街を歩く人たちは、足音だけでも十分すぎるのに、ほとんどの人が自らの声を発しています。
同僚と一緒に、恋人と一緒に、接待相手と一緒に、電話の向こうにいる誰かと一緒に。
せわしくなく音を立てて、どんどん僕を追い越します。
だれひとり、暇じゃない。
僕は、そのことに気がつき、「忙しい」という条件こそが、銀座への参加資格だと知ることになりました。
忙しそうな銀座の人たちにペースを合わせられない僕は、銀座の建物に目を向けます。
しかし、繊細なデザインでありながらも、頑丈な銀座の建物の迫力に、なんだか急かされている気がして、自分の居場所が見つけられません。
ついに、建物とも目を合わせられなくなった僕は、GINZA SIXの屋上へ逃げ込みます。
建物を見上げるから怖く感じるだけで、建物を見下してみれば、少しは銀座を客観的に見れるだろうと、思っていました。
そんななか、想像していなかった光景が目に飛び込みます。
あっ、スカイツリーだ。
うわっ、東京タワーだ。
スカイツリーと東京タワーを同時に楽しめるスポットが銀座にあったとは知らなかったので、僕は、そのスポットに出会えたことに喜びを感じていました。
しかし、周りの人を見渡すと、ここで夜景を楽しんでいる人は、ごくわずかでした。
訪れている人自体も、たったの数名。なかには、屋上まできているのに、取引先の人と電話で話し続けている人もいます。
もったいないなぁー。なんで、みんなは、この景色を見にこないんだろう?
あっ、でも、「忙しい」って、こういうことなんだよなぁ。
忙しくなりすぎたら、綺麗なものを綺麗と思う余裕がなくなります。
忙しくなりすぎたら、美味しいものを美味しいと思う余裕がなくなります。
忙しくなりすぎたら、好きなものを好きと思う余裕がなくなります。
こうして、自分を失っていくのです。
実は、僕自身も、何かを綺麗だと思ったのは、久しぶりのことでした。
たまに忙しいのは仕方ありませんが、自分を犠牲にする必要はありません。あまりにも環境に合わせて生きすぎていると、息が苦しくなるでしょう。
息苦しいなら、無理せずに自分の行きたい場所へ逃げて、自分を取り戻せばいいんです。
自分の主観では、周りが急かしているように見えているだけで、実は、自分が逃げ場所から目をそらしているのです。
だって、あんなに忙しい銀座だって、人が逃げる場所をちゃんと作っているんですから。
銀座って、実は、思いやりがあるんですよ(笑)。
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