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【精霊の守り人】 書評#76

みなさん、いつもお世話になっております!
本日は、私の投稿の軸とする一つ「本」「読書」に関して書かせていただきます。

自己紹介に書いたマイルールを守りながら、私の大好きな本について書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

今回は、ジャンル的には児童文学です!
小説であり物語としての児童文学。マジ最強の本です!

※書影(画像)は、版元ドットコム様から頂戴しています。いつも、ありがとうございます!


目次


基本情報

上橋菜穂子(著)
新潮社 出版
2007年4月1日 第1刷発行

全360ページ
読書所要期間8日

私が本書に出会うきっかけ

最近、小説熱が再び沸き始めている。
私が読書をするきっかけを与えてくれたのが小説。
そこを入り口として、どんどん読むものが広がっていった、ある種の思い出の地。

#64で書いた「シャイロックの子供たち」で久々に小説を読んだことが、再沸騰のスイッチであり、これを私に譲ってくださった方、そして今回本書をお貸しくださった方が同一の方である。

本書は児童書の分類。
これまで私もいくつか児童書を読んできた。
その中で、児童書最強説を提言しているw
これまで感想を書いてきた児童書は次のとおりである。

ということで今回は児童文学であり、そして小説と言える作品である。
これを貸してくれた職場の先輩に、心から感謝である!

この本の本質・言いたいこと

30歳近い用心棒のバルサ。
実は女性なのだが、性別など全くの問題にならないほど、とてつもなく強い。
そんなバルサに運命のいたずらか、それともすでに定められていたからか、新ヨゴ皇国の帝の二人目の皇子チャグムの用心棒を頼まれる。

断っても地獄、引き受けても地獄。
そんな状況下で、バルサはこれを受け入れる。
高額な報酬を手にするが、それが主目的では決してないだろう。

ボタンのかけ違いで、チャグムは父の帝から刺客を放たれ、追われる身となる。
そのための用心棒バルサだ。
チャグムは、刺客からだけでなく、もう一つの意味合いで追われる身となる。
バルサは、あらゆる人々と協力してチャグムを守り、チャグム自身も着実に心身を鍛え、自分の身も心も守っていく。

私はそんなチャグムの成長を通じて、読む人々の成長の糧を与えてくれるものであると考えている。

児童書だけあって、自分の内面世界の成長と、その成長のベースとなる葛藤に関する表現・描写が非常に多く、そして巧みに用いられている。
これが本書の優れた点、本質であるように私は感じている。

私が感じたこと

1点目 〜運命と思春期のかけ算

設定としては、チャグムが11歳。
そこから冬を越したから、12歳になる頃だろうか。
チャグムは辛く、苦しい経験をして、今バルサ達と追っ手などから逃げる旅を続けていく。

忘れたくても忘れられない自身の境遇という運命と、ただでさえ感情がぐらつく思春期という年頃が重なって、どうしようも抑えることのできない悲しさと腹立たしさみたいなものの目まぐるしい交錯を、文章で見事に描いていると感じた。

読んでいる私はというと、もうアラフォーのおっさんであるが、とても心がザワザワする、ある種思春期当時を思い出すような、なんとも言えない感情が蘇ってきた。

これが文章の持つ力なのかと感心した。

2点目 〜「人生を勘定するのは、やめようぜ」

P246からの引用である。
なぜだろう、私はこの言葉にハッとした。

あの人は幸せなのに、私は不幸だ。
あの人はお金持ちで、私は貧乏だ。
あの人はカッコ良くて、私はブサイクだ。
あの人は頭が良くて、私は頭が悪い。
などなど・・・

「どっちが多くて、どっちが少ない」
「どっちが得で、どっちが損」

人は往々にして、こうした考え方、つまり他者との比較をするものではないだろうか。
普段はなかったとしても、ふとした瞬間、こうした考え方が頭に浮かぶこともあるだろう。

私も例外ではなく、全く無いなんて絶対に言えない。
しかし、こうした考え方ばかりに埋め尽くされてはならないと思う。
この考え方のベースから抜け出した方が良いと感じた時、そこから勝負が始まる。
さっさとそこから抜け出そうとする時、おぼろげながら本当の自分が見えてくるのだろう。

そんなことを感じさせる一文だった。

これはバルサが若い頃、ある人からかけられた言葉。
この言葉を胸に、今度はバルサがそのある人と同じ立場となり、チャグムと向き合っていったのだろうと私は考えている。

むすびに

  • 「サグ」と「ナユグ」

  • 「卵」と「卵食い」

  • 「聖導師」と「呪術師」

  • 「ヨゴ」と「ヤクー」

  • 「ニュンガ・ロ・チャガ」と「ニュンガ・ロ・イム」

  • 「ラルンガ」と「帝の追手」

一部ではあるが、『対』を成すキーワードを並べてみた。
この2項対立的な関係性が、この本の肝になるのかと考えていたが、私の仮説は外れた。

そもそも”対立的”な関係性ではなく、単純な表裏一体の関係性。
つまり、善が悪となり、悪が善となるといった関係性を読み手に教えてくれいるのではないだろうか。

最終的には、両者が手を取り合う関係性も多々描かれている。
また、日々の手前のことに目を取られ、いつしか優先すべきことが逆転し、本質を見失っていくという描写もある。

世の中の様々な理を、様々な角度から指し示してくれる。
この点に、本書のもう一つの素晴らしさがあるように感じる。


以上です。

我が家では、韓国ドラマを見る機会が比較的多くあります。
中でも、韓国の時代劇を見ているような感覚を、読んでいる最中に得ました。
また、キングダムの映画を見ているような、そして、パイレーツ・オブ・カリビアンのシリーズを見ているような、そんな心地もありました!

私は子どもの頃、ジブリシリーズが大好きでした。
ですが、いつしかその気持を忘れていました。
しかし、本書はその当時のどきどき・ワクワクした気持ちを取り戻してくれた気がします。

つまり本書は、大変優れた「ファンタジー」でもあるのだと思います。

ありがとうございました!!

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