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【虚空の旅人】 書評#92

みなさん、いつもお世話になっております!
本日は、私の投稿の軸とする一つ「本」「読書」に関して書かせていただきます。

自己紹介に書いたマイルールを守りながら、私の大好きな本について書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

今回は、ジャンル的には児童文学です!
小説であり物語としての児童文学。マジ最強な本の第4弾です!

ヘッダーは、花田和奈さんの作品を使わせていただきました。
今回の物語の舞台の一つである断崖。
私が読みながらイメージしたものに近く、驚きました!
ありがとうございます!!


目次


基本情報

上橋菜穂子(著)
新潮社 出版
2008年8月1日 第1刷発行

全392ページ
読書所要期間9日

私が本書に出会うきっかけ

#76で本作品のシリーズ第1弾である「精霊の守り人」、そして#78で第2弾の「闇の守り人」、そして#84で第3弾となる「夢の守り人」について書いてきた。
先の3冊を貸してくださった先輩から、本シリーズをごっそり袋に入れて持ってきてくれたもののうちの一つであるw

この本の本質

本書を読み進めて、概ね1/5(20%)位進んだところで、こんな一文があった。

いつか、バルサに上達した自分の技を見せたいが、それは、かなわぬ夢だろう。

本書P81

えっ!?
「今回はもしかして、バルサに会えないのか??」
これこそが、私にとって突如訪れた”虚空”的寂寞・・・

しかし、その寂しさは、私の中のもう一人のチャグムが、なんと本作の主人公として登場していると実感したとき、一気に吹き飛んでいった。

前作では、夢と現実といったいわば時空の往来といった感じを受けたが、本作は再び国をまたにかけた広範囲での活躍する姿が描かれる。
しかもそれが、皇太子としての主人公チャグム

精霊の守り人から、3年経過した設定となっている。

そこから見えるのは、チャグムの著しい成長!!

本作では、チャグム達新ヨゴ皇国一行が、サンガルという隣国に赴くことで物語が始まるのだが、これと並行して、海に漂い生活する民族の様子も描かれる。
つまり、
・サンガル国
・漂海民族
・ヨゴ皇国その他の周辺国
という、文化風習の異なる大きく3つの世界の交わりが描かれると言っていい。

この辺が、著者はさすが人類学者といった感覚を受けるのだが、その理由としては、現実世界におけるグローバル化のアナロジーになっているのではと個人的には受け止めているからである。

さて、チャグムの成長について話を戻すが、つまりチャグムにとっては、サンガル国に赴いての外交・国際関係の維持発展という仕事を華麗にこなす姿、そして心身ともに強さとしなやかさが身についているということを感じる。
特にその心身のしなやかさについては、サンガル国に行った直後のエピソードで、外交の巧みさは特に本ストーリーの後半で感じることができるだろう。

ストーリー展開としては、先述の大きく3つの世界がそれぞれの思惑や運命の悪戯で複雑に絡み合っていくものとなっている。

私が感じたこと

1点目 〜本書の構成

これは毎度書いている気がするが、本シリーズはその1冊の読み切りとしても十分楽しめるものとなっている。
しかし、過去四作を通じて本作が最もナチュラルにこれまでの過去3冊で起きたストーリーが盛り込まれていると感じている。

その具体については、ストーリーの本筋に触れる可能性のあるものなので、マイルールに従い伏せることとするが、本作は第1弾となる「精霊の守り人」との関連が最も強いように感じる。

なんせ、チャグムが主人公だから、ある種当然に強く触れられる結果となるのだろう。

それにしても、「精霊の守り人」の中でチャグムが身につけたものは、とてつもなくその後のチャグムの人生を、そして王としての居振る舞いを、より豊かにしたものと考えられる。

あとがきで著者の言葉としてあったが、今回はバルサが主人公ではないため、スピンオフ的な、「外伝」としての扱いとしてタイトルを「守り人」ではなく「旅人」としたそうである。

2点目 〜人は、過ちを取り戻せるのか?

人間は、間違う生き物である。
それでもなお、より善く生きようとするのが人の道なのかもしれない。

本作では、とある国の王子が、とんでもない罪を着せられてしまう。
それは、自分自身が犯したわけでなく、呪術によって操られてしまったものだ。

彼は、それでも自分が犯したものとして受け入れ、どのように償うかを考えている。
そして、よりすごいのは、どうしたら人々から信頼を取り戻せるのかということよりはむしろ、そんなことは考えていないと言っていい。
逆に、自分が周りを信頼することで取り戻そうとしていると私は感じた。

自分が周りからどう見られているかではなく、自分自身が何を信じるのか。

14歳の王子の、なんと気持ちの強いこと。
大人びた考え方というよりは、並の大人よりもすごい考え方である。

私は、無実の罪を着せられた時、どのような思考に辿り着くのだろうか。
おそらく、どのようにその罪が私の起こしたものでないかを証明するために右往左往、落ち着くことができないだろう。

その王子は、「なんとかなるさ」という精神なんだろうか。
そんな他人任せ・運任せな態度には全く感じない。

これが人の上に立つ者のマインドなのだろうか。
今のところ、というかむしろこの先も、私が芯からそれを理解する立場になることはないだろうw

むすびに

チャグムについては、今回あえてあまり書いていない。
ストーリーに絡むことであるから、あまり書けない。

しかしながら、これほどまでに成長を遂げたチャグムを、母心の芽生えつつある(と私が勝手に考えている)バルサがどのように迎えるのだろうか、どのように再会するのだろうか。

この先の展開が、とても楽しみである。


以上です。

今回私が本作から学んだのは、
「信じるということ」
「文化の多様性と共存」

だと感じています。

一見すると、全然異なるものごとですが、本書を通じてこれが関連するものであるということを、私は垣間見た気がします。

本当にいつも学びの深い児童書です!

ありがとうございました!!

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