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2020年コロナの旅 4日目:タイウォーカーの夜明け~The rise of Thaiwalker~

2019/12/20

朝から猫ギャングが中庭を駆け回って賑々しい。タイの猫たちは天真爛漫で陰険なところがなく何ともかわいらしい。

子猫たちがムエタイ教室で使われるマットの裏に隠れたり追いかけっこをしている様には癒される。立地の良さ、価格、清潔さ、美しさ、ビジネスを度外視した温かいホスピタリティ、そして何より可愛らしい猫たち…これまでにすっかりこの宿に魅了されていたので、1泊延長することとした。


この日は私の友人マシに紹介してもらったプロイというタイ人がサイアム駅近辺の繁華街を案内してくれることになっていた。
約束の時間にサイアム・パラゴンという巨大なショッピングモールで待ち合わせる。

2005年にタイ国の威信をかけて建設されたというこのモールは確かに豪華絢爛である。エントランスにはDiorの展示があり、バンコクに欧州の一流ブランドをひきつけるだけの力があることを誇示している。非常に広大なので待ち合わせにやや手間取ったが、無事にプロイと合流した。事前にマシとプロイと三人でチャット上で話していた緑色の饅頭のようなものを手土産に持ってきてくれていた。非常に甘い饅頭であった。
昼食の時間帯だったのでプロイのおすすめのレストランでおしゃれなカオマンガイとタイ風ビステキを食す。


ご飯を食べながら話したところによると、プロイの身の上は私にとっては非常に共感が持てるものであった。大学は出たが現在は無職で、中華系の保守的な家庭にあって肩身の狭い思いをしている。しかし彼女は堅苦しい定職には就きたくない。かといって猛烈にやりたいことがあるわけでもない。そんな境遇に風来坊としては共感を禁じえない。


食事を終え、バンコクの若者に人気だというサイアムスクエアというエリアに繰り出した。洋服屋やカフェなど確かに若者に受けそうな店が並ぶ。その中でもプロイが特に好きなマンゴー甘味処があるということで、そこに行ってみることにした。
店の名前はマンゴータンゴ。モダンなインダストリアルスタイルの内装で、中折れ帽をかぶった碧眼のマンゴーのマスコットが客を出迎える。

店名もあいまって何かレファレンスがあるのかもしれないが私にはわからなかった。
マンゴープリンと甘味盛り合わせを頼む。

日本の同様の店と変わらないくらいの金額だが、タイで食べたマンゴーの中でも圧倒的に優れた熟し方のマンゴーが使われていることは明らかであった。熟しきっていて繊維ばったところが全く無い。日本でこれを食べようと思えば何倍もの金額を覚悟せねばなるまい。奢ってくれたプロイに感謝したい。


その後パラゴンに戻り、おすすめの土産物をプロイに紹介してもらった。そしてプロイは何か用事があるとかで、慌ただしく去っていった。


私はそれからしばらく華美なパラゴンの中を場違いなタイパンツを身に着けてうろつき、宿へ帰った。

かなり場違い


夕方からは、兼ねてから見たいと思っていたスターウォーズの最新話を見に出かける。そのためには再びサイアムパラゴンへ戻らねばならない。バスは片道30円ほどだったので金額は問題にならない。

バンコクでは空気の汚染が激しいのでほとんどいつもマスクを着けていた。それでも鼻周りのトラブルはバンコク滞在中だけでなく、ヨーロッパに行ってからもしばらく尾を引いた。

パラゴンの映画館は日本でなかなかお目にかかれない豪華さで、古き良き劇場のきらびやかさに心が躍る。映画館で現地の女性と出会い、一緒に見ることになった。

着席すると、広告のあとに国王賛歌らしき歌が国王の映像とともに流れる。その間は観客全員起立しなければならないようであった。君主制国家ならではのことで、たいへん興味深い。確か日本や英国でも同様のことがあったのではなかったか。

映画は、話の展開はともかく、カイロ・レンというキャラクターとそれを演じたアダム・ドライバーが素晴らしかった。スターウォーズの宇宙という非現実の世界への没入感という意味でも申し分なく、とても良い時間を過ごした。

カイロ・レン。インスタグラムの投稿(@kkoskekk)

女性と別れて一人で宿に帰ると、ロビーの床でタイ人長期滞在客のバンやいつものスタッフたち、韓国人たち、そしてオランダ人のヨゥスとイギリス人のリチャードが車座になって宴会ゲームをしていたのでをしていたので参加することにした。蟹、金魚、瓢箪、虎、海老、鶏の描かれた紙の上にチップが置かれている。

中国南部及び東南アジアにおいて広く楽しまれている「魚蝦蟹」というゲームの変種のようだ。通常の賭け事での使い方より単純で、6枚のチップを任意の動物の絵の上に置いて6種の動物が描かれた犀を振り、出た目の動物の絵の上に置かれたチップの数の秒数だけバケツから酒を呑むというルールのようだった。全く運次第なのでゲーム性はないが、
1.よく酒を呑ませる
2.みんなで一喜一憂できる
3.誰でも理解できる
というドリンキングゲームの要諦を抑えていた。実際、酒にほとんど酔わない私もすぐさまほろ酔い気分になってきた。

次に行ったゲームは各々両手を床につき、初めの人が片手を床にタップしたらその手の側の隣のプレイヤーの番になる。どちらの手をタップするかはそのプレイヤー次第である。というのを繰り返すゲームで、これは得意と苦手が分かれるゲームであり、案の定苦手なリチャードは血祭りにあげられ浴びるように酒を食らってトイレから帰ってこなくなった。数人このゲームが苦手なものが脱落して人数が減りなんとなく落ち着いた雰囲気になり、みな各々の旅の話などして夜2時ごろにお開きとなった。


受付のポピーも参加していたが、酒ではなく水を呑んでいた。なぜなら彼女は妊婦だからである。彼女はしばしば受付の椅子で泣いており、「私をあなたの旅に連れて行ってくれない?一緒に赤ちゃん育てようよ。」などと言っていた。赤子の父親はドイツ人だという。結婚もしていなければ予定もしていなかった妊娠だというが、父親が協力的でないことに大いに憤慨していた。もう臨月であるためそれを恋人に伝えたところしばらくしてバンコクにやってきたは良いものの、彼は日中は物見遊山、夜は呑み歩くのに忙しく、一緒に時間を過ごそうともしてくれない。そんなことを繰り返し言っていた。


私は長い飲み会の末にすっかり酔いが回ってしまい、2階にある自室に辛うじて辿り着くもベッドで横になると吐き気がして不快だったので、中庭の前のテラスにあるハンモックで眠りについた。日本でもそうだろうが、夏の夜、暖かいからと言って肌を露出して寝るものではない。酔っていたとはいえ、この愚策は私のそれからのしばらく私の生活に暗い影を落とすことになった。何が起こったのかは、次回お話しよう。

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次回予告

2019年12月17日に始まった私の世界旅行。1年越しに当時の出来事を、当時の日記をベースに公開していきます。

明日目が覚めると、私は我が身に何が襲い掛かったのかを知ることになります。そして目くるめくタイ料理の世界とタイ人女性、シアンとの出会い。

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