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自分探しの旅

どこまでもどこまでも歩いてみたい。歩いて歩いた終わりにしたい。職を失い面接にも何回も落ちてとにかく自信が無くなっている。誰にでも大なり小なりそうゆう事はあるだろう。家の布団の中で悶々としているのにも飽きた。ただ悶々としている位なら歩いた方がマシだ。そう思って家から飛び出した。

歩いても悶々としてるのは変わらない。歩き続けて人目のつかない所で行き倒れてしまえばその考えも終わる。

空が青くてキレイだ。鳥の声が聞こえる。なんの鳥だろうか、そんな事も分からない。

人目のない所に辿り着いたので地面に横たわってみた。コンクリートの地面が固い。クモが巣を張っているのをただ眺めていた。

陽が暖かくてこのまま眠れそうな位落ち着いた。

「これからどうしようかなぁ」と呟いてみて分かりきった答えが出る。「仕事を探すこと」だ。

しかし、大した資格もない中年のおじさんを雇ってくれる仕事などどこにも無く、いや、あるのかもしれないが三社落ちた時点で社会から「お前は要らない」と言われたような気持ちになったのだ。

日が沈んできた。そろそろ起き上がってまた歩かなくてはというより、歩いていないと寒くて凍えてしまう。夕日はこんな時でも美しくあと何回見れるかな、と考えたりした。

日が完全に沈んでぽつりぽつりと光っている街灯を頼りに歩く、たまに車が通るが誰も俺のことなど気に気にしてなんかいない。その辺の家に駆け込んで「助けて下さい」と言えば何かが変わるかもしれないがそんな事が出来るなら端からこんなことになっていない。

懐中電灯も持たずに暗闇の中を歩いている中年と関わりたい人はいない。ふと、鳴き声がした。猫が擦り寄ってくる。ぽんぽんと撫でるともっと擦り寄ってくる。こんな中年でも人間以外ならもとめてくれるのか。

お腹が空いた。なんだかどうでもよくなって2日程食べていない。正直食欲は無い、喉の乾きの方が深刻だ。水分も1日は摂っていなかっただろうか記憶がおぼろげだ。猫をひとしきり撫でたあと、自然と家の方に足が向いた。

本当はまだ帰りたくない。朝起きて朝から晩まで働いて大した楽しみもない、そんな生活には戻りたくない。人間なんて辞めてしまいたい。

あぁ、家の前まで帰り着いてしまった。帰りたくはなかったが、蛇口をひねってコップに水を入れてガブガブ飲んだ。急に飲んだから少し気持ち悪い。答えなんて出ないし人にも戻りたくはなかったが3日ぶりの風呂は気持ちよかった。

俺はきっと人間を辞めれない。

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