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マーケティングサイトという言葉を造語した当時の背景。

マーケティングサイトについて

こんな言葉は本来存在しません。検索してもほぼ出てきません。4年前にぼくが作った造語なので。同時多発的に業界内で使われていても全然不思議ではありませんが。4年前に初めて使ったのがこちら。

そもそもおかしな言葉なんです。Webサイトの主たる目的のひとつがマーケティングなんだから。意味が重複しています。頭痛が痛いみたいなことです。


造語が必要だった背景

じゃあ、何でそんな言葉を作ったのか。コーポレートサイトの対となる概念が必要で、苦肉の策として生まれた言葉です。今はもうだいぶ減りましたが、5年前くらいまでは地方の製造系BtoB企業が「サイトをリニューアルしたい」と言ったらそれはほぼコーポレートサイトのことでした。作られてから10年近く経った年季のあるWebサイトです。紙のパンフレットをそのままホームページに転用したような。

リニューアルするのは全然よいのですが、「なぜリニューアルしたいのですか?」と聞くと、ほとんどの返答が「ホームページからの問い合わせを増やしたい」「新規客を取りたい」「ホームページを営業に活かしたい」「営業部の高齢化が迫っているが新卒の補強もできない。このままでは営業活動が維持できなくなりそう」といった営業に関する課題ばかりでした。まあ、それはそうですよね。安くないお金を払うんだからそこには具体的なペインがあります。

営業活動に課題があって、その課題解決に「ホームページを活かそう!」と思ってくださるのは良いのですが、厄介なのが「ホームページを活かそう=コーポレートサイトをリニューアルしよう」の図式になってしまうことです。こちらとしては課題解決に直結するWebサイトを戦略から策定して設計して制作して活用支援したいのに、コーポレートサイトになった途端にステークホルダーが何倍にも膨れ上がってしまいます。


コーポレートサイトの難しさ

ステークホルダーが何種類も存在することがコーポレートサイトの難しさです。実は社外だけではなく社内にもステークホルダーがいます。

社外のステークホルダー

  • 顧客(既存客、見込客、休眠客)

  • 株主

  • 就職希望者

  • 地域住民

  • 社員さんとそのご家族

  • パートナー(販売代理店、協力会社)

社内のステークホルダー

  • 社長

  • 取締役

  • 各部門長

  • Web担当者(当時は総務部の方が多かった)

どうですか。こんなにいます。これらのステークホルダーに目配りして、それぞれの思惑や意見を取りまとめ、破綻なく意見を統括し、Webサイトを成立させるのはかなりの苦労です。Web制作会社の人の90%は「わかるー」と頷いてくれるのではないでしょうか。コーポレートサイトは完成させるだけで十分立派な仕事です。というか、めちゃくちゃ大変。


営業活動にしぼったWebサイトが必要

でも、思い出してください。「ホームページをリニューアルしたい」と声をかけてくださったお客様の目的は営業課題の解決でしたよね? コーポレートサイトのリニューアルはその目的と離れてしまいます。全くの不正解だとは思いませんが、すごく遠回りしています。朝食を食べるのに米作りから始めるような。米作りはめちゃくちゃ大切なことですが、趣旨と外れてしまいます。

「営業課題を解決したい。そのためにホームページをリニューアルしたい」という要望に当時のぼくが出した提案はだいたい下記になります。

  • 現サイトはそのまま維持。リニューアルしない

  • コーポレートサイトと切り離して、マーケティング活動できる場を作る

  • それは営業部が担当すること。目的は営業の課題解決なんだから

もうちょっと丁寧な言葉ですが、だいたい以上のことを要望として出しました。 製造系BtoBの場合、製品ページを独立させて製品サイトを作ることになりますが、それだと集客力が足りません。製品名だけでなく、ユーザーの課題から流入してもらうためにソリューションコンテンツが必要になります。『ソリューションコンテンツが豊富な製品サイト』というイメージです。


マーケティングサイトという言葉を作る

でも、当時の地方BtoBは上記のイメージがすぐ咀嚼できたわけではありません。それはそうですよね。やったことないんだから。なので、ぼくは下記のような提案をよくしました。

  • 初めてで不安だったら、ソリューションコンテンツを主としたオウンドメディアから始めましょう

  • それを運用しながら成果が出てきたら、製品ページを独立させて製品サイトを作りましょう

  • コーポレートサイトから独立し、営業部が主体となってマーケティング活動をしてください

この時、オウンドメディアという言葉があまりお客様に馴染みがありませんでした。言ってることは分かるが…くらいな感じ。たぶん会議が終わったら「よく分からん」と言われそうな雰囲気。これはヤバいな…お客様の社内でも通用する言葉が必要だな…と作った言葉が「マーケティングサイト」です。よく下記のような図を客先のホワイトボードに書いていました。

Webサイトは目的別に持つべきである

  • コーポレートサイト(総務が主体)

  • マーケティングサイト(営業部が主体)

  • 採用サイト(採用チームが主体)

  • IRサイト(IR部が主体)

採用サイトやIRサイトはお客さんもピンとくる様子だったので、「マーケティングサイト」という言葉を置きやすかったんです。なんで営業サイトではなくマーケティングサイトだったのかといえば、5年前からJBNは「Webサイト制作 × HubSpot × マーケティング活用=成果」のフレームで突き進むぞと決めていたからですね。会社の戦略的にマーケティングという言葉と考えを刷り込んでおきたかった。笑


本当に成果を出したいのなら、自分たちの意思で行動できる場を確保する

あと、経営者様には言いませんでしたが、Web担当者様に言ったのは「営業課題を本当に解決したいならコーポレートサイトから独立すべきです。サイトを作っただけでは何も生まれません。サイトを活用しなければ成果は出ません。しかし、コーポレートサイトでは勝手にできません。色々な立場の色々な意見がありますから。本当に成果を出したいのなら、自分たちの意思で行動できる自分たちの場を確保する必要があります。マーケティングサイトがその "場" です」ということです。

マーケティングサイトという言葉はそんな風に必要に迫られて生まれました。なんでわざわざこんな昔語りをしているかというと、若いスタッフから「マーケティングサイトで検索した人に見てもらうコンテンツは…」という相談を受けたからです。このスタッフは前職でマーケサイトという言葉を使っていたそうだし、社内では日常的に出てくる言葉なので無理もないのですが、おっとっとと思いました。そもそも普及している言葉じゃないのだから検索行動なんて望めません。この先、マーケティングサイトという言葉が定着したら検索するユーザーも出てくるかもしれませんが。

将来のJBNルーキーが同じような勘違いをするかもしれないので今のうちに書いておこうと思った次第です。タイムカプセル的に。


備考. 1

それから5年が経って、当時の意図はだいぶ実現してきました。株式会社ハーモ様では下記の3種のWebサイトを作らせていただいています。

  • マーケティングサイト

  • 製品サイト

  • コーポレートサイト

備考. 2

ぼくは今でもWebサイトの本質は「場」であると思っています。企業とユーザーがクロスする場であり、その舞台をぼくたちは作っているんだと思っています。 制作会社の多くの方はWebそのものを語る傾向にあると思いますが、ぼくは「Webサイトで起こること」に興味があります。プロダクトによって起こるシーンを理解したい。そんなマインドは少数派だろうけれどぼくは興味がある。自分の興味関心がそこにあることを理解できてからは大分すっきりしました。


関連note

関連した内容を以前noteに書いていました。よかったらこちらもご覧ください。

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