カミール④クラブに行って恥をかく。そして…
カミールになんとなく違和感を覚えたので、少し私は警戒していた。
行動や態度から、カミールは私のことを好きなのではないかと感じていた。というか好きだというオーラが隠しきれていない。別に私がモテた自慢ではない。リビア人男しかいない生活に、パッと愛想のいい日本人が飛び込んできたから気になってしまうのは仕方ない。別に私でなくても、誰でもそうなったと思う。
しかしカミールはいつも忘れてしまうようだけれど、私にはミャンマー人の婚約者がいる。たとえ当時ペペが激務で放置されまくっていたとしても。そして私は器用でないから火遊びなどはできない。というかカミールを男としては見れない。
カミールは好き好きオーラを出してくる以外は本当にいいやつだ。クラスメイトとしては関係を壊したくない。カミールとは何としてでも友達のままでいてもらって、なんのトラブルも起こしたくなかった。
そのため、なるべく2人でいる時間を作らないようにした。どこに行くにもクラスメイトのアフメッドにいてもらうようにしたのだ。アフメッドはすごいいいやつで、最後までいいやつだった。
しかしそんなある日、なんの話題からそうなったかはわからないが、クラブに行こうという話になった。クラブなんて日本でもなかなか行かない。どんなところかすごい興味を持った。行きたいと伝えたところ、アフメッドは行かないと断ってきた。カミールと2人か…ちょっとそれはまずいかも。
そんな風に思っていると、何かを察したのか、カミールは他の人を誘うと提案してきた。アリというクラスメイトだ。アリはヨーロッパ系イケメンのリビア人で、本当にアルバイトでモデルをしている。アメリカ人の彼女がいて同棲しているという噂の不良ムスリムだ。
それなら…と了解して、次の日の夜がちょうどフライデーナイトだったので、早速行ってみることにした。
クラブが盛り上がるのは夜10時以降だということで、9時半くらいに待ち合わせをし、軽く夕飯を食べ、タクシーで向かうことにした。
私は日本でもクラブになんて行き慣れてないから、どんな格好をしていけばわからなかったが、なぜかクラブ初心者ですみたいに思われたくなくて、自分の服で一番クラブに似合うミニのワンピースなどを着て行った。少し挑発的だったかもしれない。ちなみにカミールはピンクのバラ柄で中央にドクロがドカンとあしらわれているTシャツで、ある意味私より挑発的な格好できた。お、おぅ…
タクシーで向かい、早速クラブに入ってみる。なかなかすごい盛況だ。
中に入ると、アリとその彼女がもういた。アリは相変わらず男前で、彼女はサラ・ジェシカパーカーそっくりだった。それがどういう意味かは置いといて、とりあえずサラ・ジェシカパーカーに激似とだけ言っておく。
クラブに入ってみて、しまったと思った。クラブの中は大音量で、かなり顔を近づけないと声が聞こえない。必然的に密着した感じになってしまった。
これはヤバいと思い、踊るふりして離れることにした。踊ると言っても私はパーティーピーポーではないから、音楽に合わせてノるだけだ。
するとカミールが
「僕踊るのあんまり上手くないんだ…でも好きなんだよ」
と耳打ちして、踊り出した。
その踊りが衝撃だった!
目をつむり、音楽の低音のリズムに合わせてゆっくり動く、なんとも奇妙な踊りなのだ。ちょっと今まで見たことのない踊りだ。本人はかなり自分の世界で踊っているから、自信あるのかもしれない。今でもたまにあの低音とともに映像が浮かび大爆笑する(失礼)。ドッドッドッドッ…
私は一緒に来ていると思われたくなくて、ちょっと離れて踊ることにした。お酒はあまり飲めないが、飲まないとちょっと恥ずかしさが消えないため飲んで踊った。
ちなみにアリと彼女は、早速2人の世界に入ってしまっている。これじゃあ一緒にいるとは言えないのでは…
ともかくそんな感じで踊りを堪能(主にカミールが)していたら、やっぱりというか何というか、カミールのボディタッチが激しくなってきた。最初は腰を持って踊るくらいだったのだけれど、次第に他の部分にも手が伸びてきている。
これはヤバい、と思い、
「そろそろ帰らないといけない」
と言って、帰ることにした。
ちなみにアリと彼女は2人の世界続行中だったため、お先に失礼した。
しかし私はうかつだったのだ。慣れないお酒と、踊りまくったことによってすごく酔っぱらってしまったのだ。別に酔っぱらってハメを外したわけではない。単純に頭が痛く気持ち悪くなってしまった。
だから帰りのタクシーの中で、申し訳ないけどカミールに膝まくらしてもらったのだ。これが彼のスイッチを入れてしまったに違いない。
気持ち悪さと戦っていると、タクシーがどこかへ到着した。カミールが私を下ろしてくれて、支えてくれた。そして
「こんな状態で一人で帰せないから、とりあえず僕の部屋で休憩しよう」
とささやかれたのだ。
そんなのヤバすぎる…しかし動ける状態ではない…。ガンガンする頭をフル回転させたが、何も言い訳も行動も思いつかなかった。
そして私はカミールの部屋に入ってしまうのだ。
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