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特別可愛いわけじゃないけど"No. 1"の彼女

私の偏見ですが、noteユーザーさんの中にはキャバ嬢とかホストとかそう言った、いわゆる"夜職"に関わった人は少ないんじゃないかと思っています。

特にお客さんとしてではなく、迎える側"キャスト"なんかはほとんどいないんじゃないかなと。

だからこそ、この記事は偏見的に軽蔑されそうだし需要があるかもわかりません。

でも書きたい!!夜職から学んだことが私にはたくさんあるんです。

夜職に関わった時代、中でも特に印象に残ってることは
『そこまで可愛くない子が、圧倒的No. 1だった理由』についてです。


私が働いていたお店は、東京の中でもかなり田舎にある。
下町感あふれる地域で、割と歴史があるガールズバー。
女の子の出勤人数も客足も特に文句はないような、その近辺では名の通ったお店。

そんな場所で私は大学4年の半年間だけ荒稼ぎをした。

そこで出会ったのが、例の"そこまで可愛くないけど圧倒的No. 1"である彼女。
彼女は私と同い年の大学4年生、でも大学1年生の頃から在籍しているベテランさん。

ガルバとかそう言った女社会には派閥はつきもので、もちろんその子の派閥というものもあった。

私はと言うと、卒業までの半年間しか在籍しないことや退勤したらグダることなく真っ先に帰宅すること、
この職に対する愛着が少なく推しだとか担当だとかに執着していなかったこと、
固定のお客さんを対応させてもらえてたから他人のヘルプをする機会が少なかったことから、これと言って派閥に所属することはなかった。

同じように、大学4年の卒業旅行シーズンに向けて荒稼ぎをしていると言った、自分と同じ匂いを感じる人としかまともなコミュニケーションはとっていなかったと思う。

だから、彼女と特段仲が良かったということも、店のランキングや彼女の営業に興味を持つこともなかった。


でもある時、その店の常連さんの言葉をきっかけに、彼女の"仕事"を聞いた時素直に感動してしまった。

私はよく、お客さんに"日和はほんとに俺に興味ないよな〜笑"と言われていた。
その度に"ひどーい笑そんなことないもん!"的な可愛げのある返しをしながら、内心
"お金のためだけなんだもん、興味だなんてそんな私情じみたものを持てるわけない。ましてやこっちは学生アルバイト、それも昼のバイトの方がメインでこっちはサブなんだから当たり前だろ。"
と思っていた。

なんなら、
"わかってるくせに言ってくるなよ、自分がかえって惨めになるだけだろ"とさえ思った。


実際、そのお店はかなりライト層向けで、新宿だとか池袋だとかの勢いに疲れた大人達が、地元ノリを味わいたくて来るような場所。

そんなお店の中でお客さんのことを考えて接客をしていた子なんて正直いなかったと思う。
大抵の子は、自分が貢いでる推しのためにお金を稼ぐのに必死だった。

でも、どうやら例の彼女は違ったらしい。

さっきの会話とはまた別の、これまた古いお客さんがある日話してきた。

"日和ちゃんはハルと席着いたことあったっけ?彼女のことどう思う?"
そこまで可愛くないナンバーワン、例の彼女の源氏名はハルと言う。

"ないよ!でも私ハルさんよりも、マナさんとかアイさんの方が好きかな〜。あんまり話したことないから、あくまで外見だけの好みだけど笑"
同じお店の子のことについて聞かれても、本当に上部だけの付き合いしかしたことがなく、興味もなかった私にはこの返しが精一杯だった。

きっと、ここからこの人も他のお客さんと同じように、俺は誰々のが好き〜だとか、あの顔はどうのこうのだとか、そういって言たことを言ってくるんだろうなと思った。

でも返ってきたのはそんなことじゃなくて、
"日和ちゃん、勿体無かったね。この店は大抵新人の時にハルのヘルプにつかされる。その経験を物にできる子は少ないんだろうけど。"

確かに私が入った頃はちょうどイベント続きの夏。キャストが足りず、私はベテラン勢のヘルプを経験せず、いきなり1人でお客さんの前に立たされた。

そこで運良くお金を使ってくれる常連さん達に気に入っていただけて、繁忙期が過ぎてからもハルさんのヘルプに入ったことはなかった。

きっとその時、その場でそのお客さんに"なんで〜?ハルさんってどんな接客するの〜?"みたいなことを聞けばよかった。
でも、なんだかその時はまるで自分の接客がなってないと言われているような気がして、癪で聞けなかった。

散々"お金のためだけ、メインは昼間のバイト"と思ってきたのに、なんだかこの出来事だけは数日経っても思い出してしまう。
ちょっと悔しかったけど後日、私が唯一喋れるハルさん派閥の同級生にこのことを聞いた。
彼女は私が知ってる中でハルさんが1番気を許している相手。

ハルさんの接客について教えて欲しいだなんて、まるで私がこの仕事に熱量をもっているみたいで、なんだかなあとも思った。
それに古株のベテランともなれば、接客についてなんて考えずにもお客さんを満足に楽しませることができるだろうから、平の私にもわかるように具体的に答えてくれるんだろうかとも思った。

でも、私がそんな質問をしたユリさんは私が思ってた以上に"接客"を大事にしていて、彼女の中で何度も分析して出したんであろう、素人にもわかりやすい答えが返ってきた。

"ハルは目の前のお客さんを、自分の彼氏だと思って接する"

多分、あの常連のお客さんにあの時同じ質問をしても、こんな答えは返ってこなかったと思う。

同業者として、同じ時期に入社した者として、ライバルとして、友人として、不動のNo.2として。
ハルさんを見てきたユリさんならではの答え。


すごく腑に落ちたし、あの時癪に触った程度で片付けなくて本当によかったと思った。

思ったことは2つあった。

1つはハルさんはNo. 1になるべくしてなっていた人だと言うこと。

ハルさんは店の中で顔は中の上程度、もっと可愛い子は他にたくさんいた。ハルさんより歴が長い人も、面白い人もいた。
でも彼女達の瞳に映るものは目の前にいるお客さんじゃなくてお金、推し、欲。
多分それはお客さんにはバレてはいないと思う。
だから、それはそれで商売としては成立している。

でもハルさんは違う。
ハルさんの中には他の子たちと同じようにお金だとか欲だとかはもちろんあると思う。

でも、ハルさんはそれを与えてくれるお客さんをただの便利屋とは思っていない。
自分にお金を払ってくれる尊い存在だと思っている。
そんな彼らを最大限に喜ばせられる方法は何か、そう考えた結果、でた答えが"彼らのことを思って接すること。"だったのだと思う。

彼氏は10代、20代の女の子にとって、唯一無二、"1番の象徴"のような存在。

ハルさんの接客に対して"彼氏に接するように"という言葉をユリさんが選んだのは、おそらくそれらを感じたからだと思う。

そして、それは対お客さんには割と伝わる。

みんな同じように楽しく接客をしてくれる、落ち度があるわけではない。
それでも、"ハルは何かが違う"。
そんな風に多くのお客さんがハルさんに落ちていった結果が、"絶対的No. 1のハルさん"なんだと思う。


2つ目は、どんなことにも本気になれる人は強いってこと。

正直、私は初めた当初からこの仕事を舐めていた。

というのも、大学で4年間働いた昼のバイトが、意識も能力も高い人達の集まり。
所謂"就活をする上で企業側から評判が良い系"だったものだから、おそらくそういう人たちがほとんどいないであろう場所、色恋営業を経営の基盤とする場所を見下していた。

それに、多分あのお店にいた子のほとんどが、一生懸命に働こうだなんて考えていなかった。
あの店は本場の夜の世界にありがちな、プライドの高い人の集まりという感じも強くなかった。
"楽してたくさん稼ぎたい!"そんな本心だけが剥き出しの環境だった。

そんな場所の色恋営業はある意味、本場の夜の世界よりもきついものがあると思う。
"私はこの世界で生きている"って現実の自分と切り離すこともできない。闘争心を持っていたら逆に痛いと言われてしまう。それでも多くの子たちは、妬み嫉みの感情をしっかりと持ち合わせている。
だからこそ女の子達は、中途半端なやる気と闘争心を持ちながら、なあなあに働いた。

でも周りがどんなに中途半端に働いていても、ハルさんは違った。

これも、ユリさんに聞いた話だけど、ハルさんはこの仕事に置いて、自分ができる努力は全てしていた。お店のルール内で最大限に自分にできることを考えて動いていた。

ハルさんは大学生、本業が学業、実家暮らし。
そこしか食い扶持がないような、崖っぷちのアラサーのような人ではない。

いくらでも中途半端に、なあなあに働ける。

私は彼女のことをほとんど知らないけど、周囲の人たちからしたら彼女は"負けず嫌い"だとか"完璧主義"だとか、そういう言葉が似合う人なんだと思う。

でも、この頃の"人を見下すことでしか自分を保てなかった私"からすると、負けず嫌いだとかで片付けて良いとは思えないほど、ハルさんはかっこよく思えた。


社会人になる前、
思うような就活ができなくて、親との関係もよくなくなってしまっていて、既存の大好きだった友達の前でも"自分のこと"について質問されると顔が引き攣ってしまっていた当時の私にとって、圧倒的に自分に足りなかったものをハルさんが教えてくれた気がした。


ちなみに、ここでの経験は過保護な親の元、ある程度教育が行き届いた家で育てられた友達達としか付き合いがなかった私にとって、かけがえのない経験でした。
だから、戻りたいとは思わないけど、私にとって必要不可欠な経験だったと思ってます。

なので、また共有させてください。

私の経験談からの憶測でしかない自己満文章、
ここまで読んでくださった方がいましたら本当に感謝しかないです。

ありがとうございました!!!

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