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tel(l) if... 最終話

登場人物

千葉咲恵(ちば・さきえ) 主人公。進学コースの女子生徒。

伊勢(いせ) 特進コースの社会科教師。咲恵の勉強を見ている。

麹谷卓実(こうじや・たくみ) 特進コースの男子生徒。


私たちは近くの公園まで移動した。
卓実は缶コーヒーを買ってくれた。お金を払おうとすると止められた。
私はブラックコーヒーで、卓実が持っているのは微糖だった。以前、間違えて買ったことがあるので缶の色でわかった。

ベンチに座って、コーヒーを飲んで一息ついたら、何から話したらいいのかわからなくなってしまった。

来る途中にラブホテルがあった。
—— Hotel if…
今は塗装が剥がれて、tel if…になっている廃ホテル。やけに印象に残っているけれど、ただそれだけの、どれだけ考えてもどうにもならない、何の役にも立たない記憶だ。
思えば遠くに来たものだ。

「さっき、クラスの評価がどうのこうのって言ってたけどさ、俺はクラスの人たちよりは咲恵のことをわかっているつもりだよ」

どうせ、わかるわけがない。

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