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「Snow White and the Seven Dwarfs」 「第2話」

少し汗ばむ程の日差しだった…気付かぬうちに階段を駆け足で降りていた自分に軽く衝撃を受けた…。

自分は「そこまでして」見てみたかったのかと…



しかし。いつものベンチにその日傘の彼女はいなかった…



僕は、そのベンチに腰掛けた。


丁度木陰になり、いい風も吹いて汗ばんだ体には気持ちよかった



「そこよろしいですか?」


…まさか?!

ふっと上から聞こえてきた声に勢いよく顔を上げた。


「隣りよろしいでしょうか」



にっこりと微笑んで、日傘から見えたその笑顔に



「…あ…あ!どうぞ!」

と自分でも驚くほど動揺した声に軽く失望しつつ、あの日傘の彼女だと確信した。


サラサラと綺麗な黒髪が揺れ、ふんわりと良い香りが自分の周りに降り注いだ…


冬でもないのに、その彼女からは金木犀の香りがした…

僕の脳裏に焼きついた…彼女という香りは金木犀だと…。



「…いつもここにいらっしゃいますよね…」

僕は自分がこんなに饒舌に話す人間だとは知らなかった。まして初対面で、名前も知らないのに…僕は聞かれてもない自分の身の上話や剰え、自分の今の心情までも吐露していた…。



彼女は、ただ静かに…でもしっかりと僕の目を見て…話を聞いてくれた。



知りもしないのに、まるでマリア様に懺悔する宗教者の気持ちがわかる気がした。あの教会の厳かな雰囲気…ここなら自分の心情を吐露しても許されるのではないか…と。縋る様な…認めてほしいような…


彼女の金木犀の香りが、まるで「自白剤」のように…
僕のずっと堰き止めていたパンドラの箱をあっさりと開けていた。


…僕は本当は誰かに聞いて欲しかった…自分のこの喜怒哀楽を…

ずっと堰き止めていた本当の自分を。

彼女は僕の話が終わると、微笑んでこう言った。


「…貴方に」

↓第3話

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