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『No,9』第1話 【週刊少年マガジン原作大賞連載部門応募作品】

はぁ〜。
朝から何度もため息をついてしまう俺。どんな戦地でもこうまでナーバスになったことはない。


はぁ〜気が重い。

今日も日本の自衛隊と共同訓練。

悪いが俺は一度もいい印象を抱いたことはない、奴らに対して。一度もだ。

何故かって?俺らはアメリカの誇るUS Army Special Forces…Green Berets、いや、Special Forcesの方が有名か?
世界屈指の軍、それを実践経験のない、日本の軍…って言うとなんか憚れるらしいので“自衛隊”と共同訓練…。
まじ子守か!アカデミーの訓練生の方がまだましだ。



俺は最年少で士官になり、隊をまとめている、 中尉だ。自衛隊でいう2
等陸尉か?
ちっ、なんかいちいち自衛隊に変換してる俺にすらいらつきを覚える。
本当にアメリカ人相手に指導する分には全然問題ない、勿論他国の軍とも…

ただ、日本の自衛隊だけは苦手だ。

なんだって、これだよ!これ!
テントを出た瞬間…


一糸乱れる事なく整列している…朝からだ。訓練までまだ小1時間もあるのに…。

そして、また乱れる事なく敬礼…。


オレは軽く首を上げて見送るだけにしている。
こんなクソ暑いのに、あいつらコロナの影響かいまだにマスクを付けて微動だにしない…。


朝から舌打ちをして食堂に向かう。

「ま〜たあいつら突っ立てるなぁ!アホじゃねぇか?」
といつもヤジが飛び交う中食事をする。

「中尉、気が重いっすねぇ〜」

「まあな」

シリアルに牛乳をぶち込みながら今日の訓練を頭の中で確認した。

あぁ…shit…今日は寄りにもよって夜戦だ。

…実は俺が毛嫌いするのは原因がある。あいつら自衛隊が来た当初、歓迎も込めて、夜に奇襲をかけた。
どの部隊にも必ずやることで、野球でもよく見るシーンと同じ歓迎の儀式。


俺らは潜んで奴らのテントに奇襲をかけた。

皆飛び起きて、オロオロするのを撮影して笑うのがオチだ。


バッ!

天幕を開けて中に突撃した…

大声で怒鳴り「起きろーー」と日本語で叫んだ!
笑い声と、バタバタ言う音が聞こえたので、電気をつけたら…


…やつら誰もいなかった。

いたのは俺らだけだった…

綺麗に整頓された簡易のベッドが並んでるだけだった…


…よく見ると、半長靴と呼ばれるものもないし…

…そして何より武器がなかった…

撮影を止め、その動画は消した。

いくら探しても、あいつらをその夜見つけることができなかった。

俺の中で何かざわつくものが生まれようとしたが、即刻否定した。





翌朝、あいつらは普通に俺の天蓋の前で敬礼をしていた…


その不気味さ…あいつらの不気味さといえばもうこの上ない。


部隊も少し緊張気味だった。それを貶して払拭するような感じが見てとれた。

…1st Special Forces Group 、俺らはアジア全体だが、
昨今の状況下で自衛隊もとうとう俺たちと共同訓練をすることになったわけだが、今日から始まるのはほぼ実戦に近い訓練だ。

…見ものであるのは確かだ。

平和ボケで世界中から知られている、悲しいかなアメリカでは日本任務となると皆大喜びだ!

まず第1に日本人の女達とヤリまくれる!アメリカ本土では味わった事のないモテまくり!モテ期到来!なんせアメリカ人というだけでホイホイついてくる日本人の女達、その日にヤレる、別れるのも簡単、週ごとに違う日本の女といる奴なんてザラ。結婚してようが関係ない!ただのバケーションラブみたいなもんだ。
ヤレるし、奢ってくれるし、尽くしてくれるし、別れるのもイージー、最高この上ない。英語なんて話せなくてもセックスなんてできる、アメリカ女より難しくないし…ヤリモクなんて日本語も普通に知られてるし、セフレなんてざら笑

それに「俺たちが平和ボケしてる国を守ってやってる」と思っているのが大半だ。アメリカなんてそんなもんだ、50もの州で3億3千万もの大国で、片田舎からの出身の方が寧ろ多い。そんな中、日本のイメージは「原爆のおかげで戦争終わらす事ができて、復興して経済大国になったのは俺らのおかげ」って思ってるやつの方が大多数だ。学校の教育でも、原爆投下を賞賛する物ばかりだ。現実そんなもん。YouTubeでなんや騒がれたり、映画のミームがどうやらとか言われても、アメリカ人の大多数は残念ながらそう思ってる。“Kamikaze attack”なんてSex And The Cityで普通に皮肉で揶揄されてる位だ、原爆に対する知識も同等に思っている。そして他はまぁ有名どころの Anime 、Manga、Sushi〜そんくらいのイメージ。そして、日本で稼ぐには、YouTubeが1番!「ニホンスキデス〜ミンナヤサシイ〜」と言っとけば稼げるドル箱扱いだ。一般人がグッズまで出す始末。ライブでスパチャなんてものまで…「外人」と言うだけでお金払ってくれる最高の国民だ。とりあえず褒めときゃいい。日本人向けのYouTubeで副収入得てる奴が沢山いる。「ニホンスキデス〜」
…俺の1番嫌いな言葉だ。

日本赴任は何より訓練は楽!実戦のない日々に暮らしやすさ…(モテ期到来、ヤリまくり)と言ったら世界一Like A Haven と言ってもいい!

…ま。俺は異動断ったけど、そんま生ぬるいとこで鈍りたくないので。日本には全く興味もない。アメリカが1番だ。



さぁ、始めますか!

いつものようにやつ、自衛隊の指揮官は英語の喋れる部下に通訳を通じて自分の言葉を伝えてくる。

…これが一番イラつく要素だ。

英語位喋れるようにしとけよ、他の国の奴らとは直接話せるのに!

実戦となったらどうするつもりだ!アホが!…と言いたいのをグッと我慢してできるだけ穏便に説明をした。

ふぅ…

イラつく、ただでさえ灼熱の中なのに、こう言うことが何度も繰り返されるのかと思うと…億劫でならない。俺の部隊は大体掌握しているのでそこは簡素に終わらせた。因みに俺は奴らが来る前に日本語を習得して日本語検定も1級所持だが、世界的に日本語ではなく、共同訓練となれば尚更英語を習得してこいよ!っとイラついた。

作戦としては、このジャングルの中を突っ切り敵地にて人質奪還、ゲリラ壊滅という作戦だ。

ちょっと意地悪心が出て、敢えて自衛官達を斥候に回した。

…俺の隊員達が察してゲラゲラ笑っている。

この位の意地悪は許容範囲だろうと、思い、やつの部下に斥候の旨を伝えた


了解と言った。


…一瞬やつの目が光ったように見えたが。


ザザッ。

とやつと通訳の部下以外が敵地に向かい静かに動いた。

あっという間だった。


直線距離でも敵地に到着するだけでも1時間はかかる、ジャングルの沼、慣れている俺達でも。


…そのやつら斥候が、半分の時間で戻ってきた。


土地勘のない奴らが間違えて他のダミーの所に行ったのかと思ったら、敵地本部に行き、人質と共に戻ってきたのでそれは間違いではない事が証明された。


…ドンッという音が響いた。


…ゲリラ壊滅の合図だ。




斥候が、自分達が本陣に行く前に、本陣を落として人質奪還、帰還してきたのだ。


流石にど肝を抜かれた。


誰もが言葉を失った…俺らですら、そんなこと成し遂げた事のない事を平和ボケの自衛官達がやってのけた。


人質役と敵役の部下達に聞くと「気持ち悪い程手際が良くて、ゾッとした」皆口を揃えてそう言った。


それだけで十分だった。


俺はやはり考えを改めてないといけないと思った。
奴ら自衛官は説明を部下の通訳の1回で理解し、そして上官のやつは「行け」としか言ってない。聞こえた限りそうとしか言ってない。


それだけで、俺たちより早く斥候なのに本陣を落とし、人質奪還成功し誰一人撃たれることもなく帰還したのだ。勿論ゲリラ壊滅なので敵は全員死亡。

…やはり歓迎のあの空の天蓋が、紛れもなく証明したのだ。
自分の中で否定していた、「できる部隊」ということを。


日本の自衛官という本質を見たくなってきた。


しかし…相変わらずである、俺の天蓋の前で整列して敬礼。
休みの日でも、マスクをして常にどこもかしこも掃除をしまくり、何か話しかけても業務的な返事しか返ってこない…。
何より談笑もせず、にこりともしない。…まぁマスクしているのでさっぱりだが。

俺は流石にあの野戦訓練がまぐれなのではないかと思うようになった。ビギナーズラックってやつだ。


…そういえば、彼女は日本に興味があって、色んな論文も読んでいたな。
今日は非番だろうから、会ってみるか。

チヌークのある区間に彼女に会いに行った。
彼女はチヌークのヘリパイ。
ここには、ゲリラ対策でたまたま来ている。
俺と付き合っているのは、誰も知らない。
なので、指揮官が状況判断をしに来てるくらいにしか、そして俺の部隊もそれ位にしか思ってない。


「元気か?」相変わらずチンケな挨拶に自分でも舌打ちをしたくなった。

彼女は敬礼をした後に、「はい、ありがとうございます」と笑顔をくれた。
職場でいちゃつく奴らもいるが、俺はそれは絶対したくないので、彼女もそれは反吐が出る…笑といってくれたので、助かった。分別つかない相手ならしんどい事この上ない。


上司と部下の会話。

俺は、彼女に日本人について聞いた。

日本では先の戦争以来、実戦がないのは、稀に見るものだと。あれほど、ミサイルを200海里に何度も落とされても、スクランブル発進を年何百回も行っても、哨戒線が何度も挑発しても…決して「戦争を起こさせない国家」として、抑止力が働いている事。外交含め、国防がどれほど優れているかということ。首相も決して国民を煽りようなことをせず、被爆国として、戦争を回避し続けている。勿論、陸続きでないこともあるが、徴兵令がない国では日本は最高峰だと思う。
東日本大地震との時も国防の危機に見舞われたにも関わらず、侵略、戦争を起こさせなかった。何より国民性。震災が起こると治安が悪化する国が殆どだ。
ニュージーランドはその1ヶ月前に大震災が起き、治安悪化で、警察官が銃を携帯、昨今では重装備になってきた。コロナ禍でも、治安の悪化は見られず、物価は他に国に比べたら雲泥の差である。安定した供給をし続けているのは稀である。


彼女の知識もさることながら、何より国防への考えはそうだったのかと新たな気づきが生まれた。

…それに何より衝撃だったのが…
彼ら日本人は人質に取られた時何をしていたかというと、戦々恐々の中、泣き叫ぶこともなく、ただその部屋を掃除し始めたと。


鳥肌が立った!
例え俺だって流石に敵地で人質に取られたら、逃げることを考えて、そこが汚れているとか、掃除しなきゃ…なんて考えに絶対行かない!!絶対だ!
それを一般人が普通に掃除を始めるだと??
は?

思い返した。
いつもどんなに汚い場所でも、自衛官達が必ず綺麗にしていた、あらゆる場所を。自分達も天蓋は元より共同で使うあらゆる場所…トイレですら…。

そして、あの言葉。
部下の人質役と敵役の部下達に聞いた
「気持ち悪い程手際が良くて、ゾッとした」

一般人ですら、命の危険に晒されても、掃除をするその精神はどう生まれたのだろうか。
日本でいう先の戦争、WW2での体当たり、神風特攻隊という恐ろしい考えを生み、それを実行した若い軍人達…。


↓第2話


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