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【断髪小説】ヘアフォールウイルス(2)混乱

僕らはヘアフォールウィルスに感染した。
そして、突如として政府からの感染対策が発表された。

「その感染対策とは・・・。
髪の毛を・・・丸める事です!!!
そうです、坊主頭になれば、感染症の効力は失われて、マルメナの数値も0に戻ります!
繰り返します。
ヘアフォールウィルスの感染対策は、坊主頭になることです!
男女問わず、感染者は速やかに坊主頭にしてください!
マルメナで感染が確認された方には、翌日に政府から美容ハサミとバリカンの支給がございます。
こちら綺麗に消毒されたものですので、こちらを利用して丸坊主になってください!
日本を、地球を守るためです!私からは以上です!」

翌朝、政府の発表から1日が経ち、ソウタのマルメナの数値は2になり、感染による死亡まであと6日

「あんたどうするの?これから。お母さん達は大丈夫だったけど、あんた感染してたんでしょう。バリカンも政府から支給が来るらしいから、もちろん坊主にするわよね?」

「・・・坊主。抵抗があるんだけど、死ぬよりはいいからな」

ピコピコピコピコピコ・・・

スマホから電話がかかってきた。
相手はショウタだった。

「もしもし、ソウタ?お前、どうだった?例の感染。
俺は感染していたマルメナの数値は今日で2だった」

「うん、僕も感染してた。同じく数値は2。
おそらくサッカーの試合で感染したんだと思う。
だけど、坊主になれば助かるらしいから、とりあえず僕たちは問題ないとおもうけど・・・」

「けど?」

「あの日、伊藤さんいたよね?大丈夫だったのかなって」

「あ〜、リンコちゃんか〜。確かに、もしサッカーの試合で感染してるなら、リンコちゃんも有り得るのか。
そうなると、リンコちゃん丸坊主になるってことか?」

「うん、そうなるね、女の子の坊主頭って、勇気いるだろうし、心配」

「あの次期生徒会長様がくりくりの坊主頭か〜。
それはそれで見てみたいもんだな〜」

「お前なぁ〜」

「わりぃわりぃ、
そうだな、心配だしな、お前連絡してみろよ」

「お、俺か?んー、伊藤さんに電話書けたことないからな、ちょっとなんて言おう」

「いいから、電話しとけよ〜!
あ、あと丸坊主の件だけど、もし、リンコちゃんも坊主確定だったら、一緒に坊主になろうって言っといてなぁ〜、
んじゃ〜なぁ〜」

ガチャ

プープープー

「・・・。
伊藤さんに電話するか・・・。
でも、緊張するなぁ・・・。ちょっとドキドキしてきた」

まんざらでもない顔を浮かべるソウタ。
にやっとしながら、ふと我に返り、伊藤へ電話することへ。

プルルルルルル・・・。

プルルルルルル・・・。

プルルルルルル・・・。

プルルルルルル・・・。

なかなか出ない電話に、逆に緊張するソウタ。
何か忙しいのかなぁと思いながら、電話を切ろうとした時。

ガチャ

「もしもし、高橋か。どうした?」
クールな声でリンコは電話に応答した。

「あ、伊藤さん?
高橋だけど。
その〜、昨日のニュース・・・見た?
ヘアフォールウィルスの話。
あれさ、俺とショウタが感染してて、マルメナの数値は2だったんけど、伊藤さんはどうだったのかな〜って気になって連絡したんだけど」

「あぁ、心配させてしまってすまないな。
そして、お前らも感染していたか」

「俺らも?」

「あぁ、どうやら、私も感染しているようだ。
マルメナの数値はお前らと同じ2だ。
お前らが心配だな、何かあったら私に遠慮なく言ってくれ。
何でも協力するから、一緒に乗り切ろう!」

女子高生とは思えない、はっきりとした態度とウィルスに立ち向かう姿勢も、ソウタは少しキュンとしていた。

(そういうところが、伊藤さんらしいな。なんか少し勇気湧いてきた)

「ありがとう。
それと、伊藤さんもウィルス感染してたんだね・・・。
なんていうか、その・・・髪の毛の件とか・・・」

「あぁ、言いにくいことを言わせてしまったようだな。
このウィルス、髪の毛を坊主にしないとイケないと聞いた、
す、少し怖くもあるが、私は大丈夫だ」

(伊藤さんが珍しく少し怯えている?
流石に女の子が坊主になるのは怖いよな。
しかも、あんなに綺麗で長い髪の毛を坊主にするのは勇気がいることだよな)

「あの、もし、もし良かったら、僕に伊藤さんの髪の毛・・・その・・・坊主にさせてくれませんか?」

びっくりしたような表情を浮かべる伊藤だったが、
1つに束ねられた綺麗で長い髪の毛を手で掴んでじっと眺めて、
ふんっと笑みを浮かべる。

「あぁ、お前なら切られてもいいぞ。
じゃー私からもお願いだ。
お前の髪の毛は、私に坊主にさせてくれ!」

「う、うん!もちろん!
あ、その・・・あ、ありがとう。
政府からバリカンとハサミの支給があったら、その、また連絡するね」

「あぁ、わかった」

ガチャ

俺は、ショウタも一緒に髪の毛を切り合おうって言っていた約束を無視して、僕と伊藤さんとの坊主の約束をしてしまったことに少し罪悪感はあったものの、どうしても伊藤さんの髪の毛を切ってみたいという思いから、少しドキドキにも似た感情が湧いていた。

再びショウタに電話をかける。

「悪いショウタ、俺、伊藤さんと坊主にしあう約束しちゃった。
一緒にするって言ってたけど・・・」

「ははは〜。いいんだよ〜。それで!
お前どうせ伊藤さんの髪の毛切たいだろうな〜って思ってたから、一緒にって誘うように仕向けたんだよ。
そうでもしないとお前〜、伊藤さんと話すきっかけつくれないだろ?
お前が伊藤さん好きなのなんてバレバレだしな!」

「え!
いや、その・・・う・・・うん。
まぁ、ショウタ・・・内緒にしてよ?
てかそんなに俺って、伊藤さんに関してバレバレだったのか?
恥ずかしい・・・」

「クラスで気づいてない奴居ないと思うぞ!
お前わかりやすいからな〜」

「マジカ・・・」

「んまぁ〜、でもよかった。一歩進展したな!
んー、俺も坊主にしあう仲間でも探すかな〜、
自分で坊主にするのもなんかつまんね〜しな。
ははは、まぁー気にすんな!」

「ありがとう。
まぁ、そういうわけだから、何かあったら連絡して。
こういうときだから、密にやり取りしたほうが言いと思うから。
それじゃ〜ね」

「あぁ」

ガチャ

ソウタのやつ、リンコちゃんと仲良くやれるといいな〜。
スマホの待ち受け画面に映るリンコとのツーショット写真を眺めながらショウタはそっとスマホを閉じた。


・・・つづく。




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