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記事一覧

北の大地で何があったのか?

『奇譚蒐集録 北の大地のイコンヌプ』という清水朔さんの本を拝読しました。

北海道でアイヌに擬態して生きる人々。絡まり合う人間関係。

そして、滅んだ村。

民俗学的で民族学的な視点を持つ主人公は、「鬼との婚姻」について調べる内に、この滅んだ村に興味を持つのだが、果たして真相は?

自分の在り方。

『水を縫う』という寺地はるなさんの本を拝読しました。

裁縫が好きな少年。女の子みたいと思われていた節がある。

それでも、姉のウェディングドレスを仕立てるために、主人公の少年は必死に針を動かし、布を操る。

自分の好きなことをやり続けるなら、それなりに孤独を受け入れたり、覚悟したりしなければならないと感じる作品でした。

おいしい記事がいっぱい。

『とりあえずウミガメのスープを仕込もう』という宮下奈都さんの本を拝読しました。

小説ではなく、「食」にまつわるエッセイ集です。

よく、「美味しいものが好きです」と答える人がいるけれど、「美味しいもの」が嫌いなひとがいるのか? というメッセージから始まります。

この最初の一文で、「確かに!」と心を鷲掴みにされました。宮下奈都さんの文章と視点には、人を引き付ける魅力があり、拝読後は余韻があります

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翻訳学とは一味違う?

『トランスレーション・スタディーズ』という佐藤=ロスベアグ・ナナさんの本を拝読しました。

作者が言うトランスレーション・スタディーズは、「翻訳学」と直訳できますが、作者の立場は、一般的に言われる「翻訳学」とは違います。

言葉を翻訳することは、文化を翻訳することであり、話者の背景にある考え方を知る必要があるということだと思います。

我々は外国語を何の抵抗もなく受け入れがちですが、そもそも、その

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現代によみがえる魔女裁判。

『緋色の囁き』という綾辻行人行人さんの本を拝読しました。

主人公は校則がとても厳しい女子高に転向する。

しかし、そこで待ち受けていたのは、ルームメイトたちの不可解な連続死事件だった。

無残な死を遂げていくルームメイトたち。主人公のルームメイトばかりが殺されていくことから、犯人扱いされるようになる。

「魔女」という言葉の意味が明らかになる時、主人公の隠された過去と、意外な事件の真相が浮かび上

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人間の「痛み」の本質を問う。

『ペインレス』という、天童荒太さんの本を拝読しました。

上下巻の書籍ですが、あっという間に拝読してしまいました。

痛みは、身体的なものや心理的なものなど、様々です。

主人公の女性医師は、それらの痛みを感じにくい人間のようです。そんな主人公は患者たちと向き合う中で、まるで人体実験のように、様々な痛みを試していきます。

好き嫌いが別れる作品かもしれませんが、「痛み」に関してこれほど考えさせられ

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運命が巡る、不思議なカフェ。

『満月珈琲店の星詠み』という桜田 千尋さん、 望月 麻衣さんの本を拝読しました。

様々な人々が悩みを抱えながら生活している現代。そんな中、主人公もまた、鬱屈した思いを抱えていた。

そんな中、主人公は満月珈琲店に誘われ、訪れる。ところがその珈琲店は客の注文は受けずに、マスターが客に合わせてメニューを出すという、ちょっと変わった店だった。

しかも、星に関する占いで、アドバイスまでくれる。

そし

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自分の運気は、自分で上げる。

『強運の持ち主』という、瀬尾まいこさんの本を拝読しました。

占い師の主人公と、そのお客さん達とのやり取りが面白かったです。

主人公を支える夫と主人公の、日常のやり取りも、占いという要素が加わって、とても微笑ましく描かれています。

現代に生きる力強さ。

『神の涙』という、馳星周さんの本を拝読しました。

「神」は「かみ」ではなく、「カムイ」と読みます。現代に生きるアイヌの木彫り作家のお爺さんと、その孫が主な登場人物であるため、アイヌ語が用いられているのだと思います。

物語では、そんなアイヌのお爺さんのところに、主人公が弟子として転がり込むところから始まります。

現代のアイヌというと、政治的な匂いや難しいイメージがありましたが、この本はそんな印

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癒されたい。許されたい。

『巡礼の家』という天童荒太さんの本を拝読しました。

介護に疲れた少女が、家を飛び出して気を失うところから始まります。そして少女が目覚めると、様々な人々が何故か少女を優しく介抱してくれて、困惑する。

その厚意に甘えている内に、少女も他人を助けられるようになっていく、という不思議な癒しの物語。

自分の行為を誰かに許してもらいたい。

もしくは、疲れを癒したいと思った時に読みたいと思った一作でした

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何かを交換しながら生きている。

『まくこ』という西加奈子さんの本を拝読しました。

表紙が子猿の絵だったので、子猿の名前だと思っていましたが、全然違ったお話でした。

「まくこ」とは、その名の通り、何でも撒く少女の事でした。その行為が何を意味するのかを知った時、深いなぁ、と感じました。

あなたをちょっと強くする魔法の言葉。

『逆ソクラテス』という伊坂幸太郎さんの本を拝読しました。

本屋大賞にノミネートされたので、ご覧になった方も多いと思います。伊坂さんならではのウィットにとんだ言い回しが小気味よく、クセになるような感覚です。

この中には、いつも言われ放題な自分が反論できる――とまではいかないけれど、ちょっと言い放題な相手に言いたくなるような魔法の言葉が隠されています。

是非、探してみて下さい。

あなたのスキマって何ですか?

『スキマワラシ』という恩田陸さんの本を拝読しました。

スキマと聞いて思い浮かぶものは、人それぞれだと思います。この作品は時間の隙間や場所の隙間、そして人間の心の隙間を突いてきます。

座敷童のように、隙間ならどこでも存在できる不思議な存在。ちょっとひんやりして、ちょっと懐かしい。

ノスタルジックファンタジーの真骨頂のような作品でした。