三本目の腕、又はコーヒーカップの記憶。
破壊的衝動に駆られて右腕を引きちぎった次の日、彼が玄関のインターホンを押した。もちろん、発声器官など存在しないので会話をすることはできなかったが。私にはもともと三本の腕があった。しかしながら、どうやら人間というものは腕は二本しかついていないみたいだったので。昨日、バランスの悪い位置に生えていた一本を引き抜いた。そして、その腕を右腕と名付けた。自分で止血をして現在は包帯を巻いている。随分と体が軽くなったのはいいが、三本あった腕でバランスをとっていたからか、今はよろけて歩けない。