UXデザインのための人間サイボーグ化講座
人間のサイボーグ化、この言葉は遠い未来のSFチックなものだろうか?
なぜこういうことを聞くかと言うと、UXデザインをする時に知っておくべきだからです。
UXデザインをする際、基本は人々の体験起点(UX driven)であるべき姿を考えていきます。例えば、以前の「そもそもUXデザインって何?」で触れたJRの改札の例だと、「券売機に並ぶお客さんは『イライラ』を感じている。これをストレスフリーにするにはどうすればよいか?」という具合です。このような考え方を、体験起点(UX driven)と言います。
UXコンサルはこの体験起点であるべき姿を考えるだけで良いのかというとそうではありません。テクノロジー起点(Tech driven)で考えるとどのような世界が実現していくかを日頃から学んでいく必要があるのです。例えば、JRの改札の例では、『イライラ』解消の手段として、ICカード(Suica的な)を採用しましたが、その当時ICカードの存在を一切知らないとしたら、どうしても解決策までたどり着くことができません。
ウォルト・ディズニーは「夢見ることができれば、それは実現できる」と言ったそうですが、その夢を見れなければ何も始まらないのです。なので、自分が見れる夢のスケールを拡げるためにも、日頃から技術起点でリサーチしておくのは重要なんです。その意味で、SF小説を見るのもよし、そのSFの世界が最先端の技術でどこまで実現されているかも知る必要があります。
ということで、もう一度サイボーグの話しに戻りましょう。
日本ではサイボーグ009によってサイボーグが一般的単語になったようで、海外を見てもロボコップがあったりと、超高戦闘力のイメージが強く未来感溢れる言葉だと思います。しかし、その感覚は現実と少し違います。
元々サイボーグという言葉は、簡単に言うと生命体と人工物を組み合わせたものを指します。(ちなみに、ターミネーターは100%人工物なのでサイボーグではなくアンドロイドです)
そして、サイボーグは、着脱可否・目的別で分類され語られるのが一般的です。
着脱可否は、体内に人工物を埋め込むかとほぼ同義です。侵襲型か否かと言われたりします。体内に埋め込むということは、人体を切開するし、感染や拒絶反応も可能性もあるため難易度が圧倒的に高いのです。
目的は、医療か機能強化かで分けられます。医療はより必要性が明確であるため、浸透しやすい性質があります。
これを踏まえてサイボーグを4タイプに分けて、普及度を見てみましょう。
①着脱可能✕医療: 冒頭で述べたようなSF的な"サイボーグ"とギャップがあるかもしれませんが、義手や義足などが該当します。一般的に使われていて、普及度は高いと言えるでしょう。
②着脱不可✕医療: 人工心臓などが該当します。これも普及度は高めです。
③着脱可能✕機能強化: ここに該当するのはパワードスーツなどです。例えば日本でも空港で実証実験が行われるなどしており、普及度はそこまで無いが近年高まりつつある分野です。
(参考: パワーアシストスーツ、作業現場の“救世主”に 高齢化や人手不足の問題解決に一役)
④着脱不可✕機能強化: 埋め込み式のICカードなどが入ります。手にSuica機能を持ったチップを埋め込んで、手をかざすだけで自販機で物を買えます。知っている人は知っている程度で、普及度はまだまだと言えるでしょう。
(参考: 米国企業で初、従業員の体内へのマイクロチップの埋め込みを実施)
こうして見ると、人間サイボーグ化は決して未来の話ではなく、現在進行系で進んでいます。進み具合は50%〜75%程度といったところでしょうか。
これが分かって何になるのか?
冒頭でも触れましたが、人々に提供すべきあるべき体験を考える上で重要です。テクノロジー起点で、将来を想像する(ディズニー的には、夢を見れるようにする)上で重要です。
例えば人間と電話の距離感の歴史を見てみると、、、
1900年頃に全国の固定電話加入者数が1万人を超えるほど普及(家にいる時のみ)。
1950-60年頃に公衆電話徐々に普及(外でも)。
1980年代から携帯電話が徐々に普及(どこでも)。
2000年代からスマホが普及(風呂・トイレでさえも)。
ごく最近ではウェアラブルが発売(手首につけて)。
というように、徐々に人間と電話の距離が0に近づいてきているのです。
今ほとんどの人が持っているスマホ・携帯電話って、とても便利ですが、ポケットから出すの面倒くさいなど、(気づいているかどうかに関わらず、)突っ込みどころは結構あるのです。
それを解決するには何が必要かを考えた時に、このテクノロジー起点の流れを知っていると、想像することが変わってきませんか?
そう、例えば人間✕電話のサイボーグです。発想を柔軟にするためにも、是非いろんなテクノロジーを調べてみてください!
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