シャンパーニュとは一味違う、気の遠くなるような職人技で造られるスパークリングワイン

「美味しいスパークリングワイン」と言われて、大半の人が思い浮かべるのはシャンパーニュではないでしょうか。

普段から様々なお酒に接することの多い私達のような仕事をしている人は、シャンパーニュというのは地域の名前で、そこで造られているスパークリングワインを指すことをご存知だと思いますが、そういった機会がなかなかないと、シャンパーニュもスパークリングワインも同じだと思ってしまうことが多いと思います。（シャンパーニュはスパークリングワインの一部でもありますので、ややこしいですよね）

実際にシャンパーニュを飲むと、シャンパーニュにしかない香ばしい酵母の香り（ブリオッシュのような香りとよく言われています）があり、やはり他のスパークリングワインとは違う味わいがあります。

ここまでシャンパーニュについて書きましたが、今回はシャンパーニュでなく（笑）それ以外の方、スパークリングワインを造っている私が大好きなワイナリーをご紹介します。

ストイックにスパークリングワインだけを造り続ける2人組

今回ご紹介する造り手「レ・カプリアード」は、フランス中部のロワール地方にあるワイナリー。オーナーであるパスカル・ポテールとモーズ・ガドゥッシュの２人で運営しています。
パスカルはワイン造りに携わる前は、⼤型惣菜雑貨屋のワイン売り場の担当だったそう。その頃からワイン造りに興味を持っており、畑仕事の手伝いで一緒になったモーズと一緒に、2011年にレ・カプリアードを立ち上げます。

写真はこのワインの輸入元、ヴァンクゥールより

レ・カプリアードの一番の特徴は、ペティアンだけしか造っていないということ。
※ペティアンとは、ガス圧が一般的なスパークリングワインよりも弱い優しい泡のスパークリングワインのことです。

パスカルとモーズも最初は泡のない普通のワインも造っていたのですが、途中からペティアンだけを造るようになりました。
以前来日した際に、なぜペティアンしか造っていないのかと質問したら、「自分たちはスパークリングワインを造っているのではなくワインを造っている。ただ、自分たちが造りたいワインには泡が必要だった」という答えが返ってきました。

ペティアンというと通常は熟成させるイメージはほとんどなく、どちらかと言うとフレッシュなものを楽しむことが多いのですが、彼らのペティアンはそれらとは全く異なります。

添加物を使用せずに高品質なペティアンを造る

レ・カプリアードのペティアンは複雑でしっかりとしたミネラルのある、シャンパーニュのように熟成に耐えうる素晴らしいものですが、何よりすごいのは、その品質のものを、全く何も添加せずに、原料のブドウだけで造ってしまうこと。
その場所の特性を熟知し、ブドウをしっかりと観察して、それを生かす技術を持っていなければカプリアードの様にナチュラルで質の高いペティアンを造ることはできません。

そんな2人は、今では周囲のワインの造り手から「ペティアンマスター」と呼ばれるほど。

レ・カプリアードの看板商品「ピエージュ・ア…ロゼ」は、中辛口でやや甘さのあるロゼペティアン。

通常甘さが残っていると、酸化防止剤を添加したり熱処理をして再発行しないようにするのですが、彼らの場合は添加物は不使用、濾過もせず、もちろん熱処理もしていません。
それなのに再発酵の恐れがないのは、しっかりとした澱引きができていることと、ガスがあるから。澱引きは彼らのペティアン造りの中で最も重要なことの1つ。ワインを造る段階で、多い時には澱引きを10回も行うそうで、彼らのどのペティアンを見てもにごっているものはなく、全てクリアです。
こうして澱の量を自分の造りたいペティアンに合うように調整して、甘さやガス圧まで計算するそうです。

そうして造られた彼らのペティアンは、甘さがあっても決して再発酵することはない！と話していました。

鮮やかな濃いピンク色に、アセロラやイチゴの香り、完熟したりんごの果実のような甘みがありますが、メリハリのある酸がそれらをリフレッシュさせてくれます。（実はこのワインの名前は以前は「Piege a Filles（ピエージュ・ア・フィーユ）＝女の子への罠」という名前だったのですが、昨今の差別問題を鑑みてFilles（女の子）を名前から外したそう。素敵な名前がなくなってしまうのは悲しいですね…）

パスカルとモーゼは、ペティアンでなくワインを造っていると何回も言っていましたが、泡があるのにスティルワインのようにお腹いっぱいにさせずに食事を美味しくしてくれて、だけど泡があるからこそ食事を軽やかに楽しませてくれる彼らのペティアンは、二人にしか造れない、唯一無二のワインです。

二人の努力と挑戦の積み重ねによって生まれた、緻密で質の高い、なのにフレンドリーなペティアン、ぜひたくさんの方にお飲みいただきたいです。
特に中華やエスニックとの相性はよく、このペティアンがだけで食事の間ずっと楽しめます。

【レ・カプリアード ピエージュ・ア… ロゼ 2019】
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https://www.imaday.jp/c/wine/gd12055