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技術系の記事を30年くらい書いてきました。思いつきを、思いつくまま残します。

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最近の記事

AIに絶対できないこと

AIって過大評価されていないか。こちらの本を読んでいてそう感じました。 まだ生成A Iやら大規模言語モデル(LLM)が大きな話題を呼ぶ前の発行ですから、今よりずっとAIの能力が限られていたころの意見です。「ひょっとしたら10年以内にも」といった声さえある今日この頃と違い、汎用AIは多分まだ数十年できないだろうとも書かれています。 それでも、来るべきAIは恐ろしいものだと感じさせるに十分な表現が随所に現れます。第1章の見出しをいくつか拾ってみると、「人類より優れた超絶知能に

    • 現代思想への片思い(下)

      承前 「また重箱の隅を突いてら」と呆れないでほしい。好きなんだから、真剣である。些細ではなく大事な点だとも思っている。 気になる「あばた」をあらためて書けば、一読して「何で?」と首を捻る選択が僕の目を引くことである。 なぜ永井均氏は読者の関心を引くべき一文目に、すぐに反証が出そうな命題を選んだのであろうか。どうして飯田隆氏は、機械が人と見紛う言葉を発し始めた事実を抜きにして、言語とは何かを語れると判断したのであろうか。 確かに養老孟司氏の目の付け所は秀逸である。そこか

      • 現代思想への片思い(上)

        それなりに貢いできたのに、ちっとも胸の内が見えないから、いっそのこと片想いと呼んでしまおう。お相手は現代思想。不可解ながらもときめいた『アンチオイディプス』以来のファンである。 「ソーカル事件」を盾にバッサリ切り捨てる人もいるが、僕は未練を断ち切れず、話題の本や入門書が出るとついつい手を伸ばしてしまう。買っただけで忘れ去られるケースが大半で、たまに開いてみると数ページでこちらの理解を拒まれたりするのだが。 最近ようやくわかってきたのが、どうやら相手は相当気まぐれということ

        • 会話の哲学、会話の科学

          僕は話すのが苦手なんだ。 そう感じる回数は、昔も今も変わりません。 面と向かって自己紹介を求められると途端に体が固まる。世間話の出だしにつまづき、声が上擦り、どもり、沈黙に陥っては脂汗が滴り落ちる。まだ親しくない相手を見かけたら、声をかけるべきかどうかで迷ったあげく、目を逸らしてやり過ごす。三つ子の魂そのものに、人見知りの性が半世紀を経ても抜けません。 そこで手に取った一冊が『会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション』です。スムーズに話すためには、円滑な会

        AIに絶対できないこと

          意識がない相手との会話

          ホラーではありません。最近、自分がよく会話している相手には、そういえば意識がないんだったと気が付きました。そう、ChatGPT。もはや仕事での調べごとに欠かせないツールになっています。 特に重宝するのが、馴染みのない技術の記事を書くときです。知らない単語や概念があれば、まずChatGPTに聞いてみます。昔ならば、ネットをいろいろ探し回っていたところです。必要な内容がどこにあるのかを見つけるまでに、相当な時間がかかりました。 さらにその前、20世紀の頃には、書店で購入した教

          意識がない相手との会話

          『ベイビーステップ』打ち切り説と、作者の力が及ばない領域

          吾輩はマンガ好きである。 noteでも『違国日記』を枕に原稿を書いたことがあるし、予定稿のリストには「ドラえもんと感情のプロトタイピング(仮)」と題する記事もある。この件も、そもそもマンガが発端だった。「嬴政の発想って、今ならプー⚪︎ンと変わらないよな」と思いつつも『キングダム』の新刊を心待ちにしているし、ずっとヤキモキしていた『BLUE GIANT EXPLORER』の最終巻がようやく出るかと思えば値段の高さに目を剥き、最近のインフレを憂えたりもしている。 だから、マガ

          『ベイビーステップ』打ち切り説と、作者の力が及ばない領域

          偽造現実

          「偽造人間(Conterfeit People)」。哲学者のダニエル・デネットが、この記事で使った言葉です。AIの進歩が生みつつある、対話するだけでは人との違いが分からない存在のことをそう呼んでいます。 同氏は偽造人間の危険性に警鐘を鳴らし、「人類史上最も危険な人工物であり、経済だけでなく人間の自由そのものを破壊する能力がある」(ChatGPT訳を修正)とまで書きました。政治・経済面でパワフルな人々・企業・政府の利用を念頭に、「(偽装人間は)我々を騙し、困惑させ、抗いがたい

          偽造現実

          例の件の話

          例の件について書きたいと思います。自分の反応や変化のスピードがあまりにも早くて驚いたからです。 最初に原作の漫画を知ったのは、1月27日土曜日の日中。その夜には全巻読み終え、翌日には2周目を完走し、さらにその次の1月29日(月)の夜に作者の訃報に接しました。一瞬で背筋が凍りつき、暗澹たる気持ちが全身に広がりました。 ところがです。ほんの1時間もしたら、故人を悼む気持ちが、あっという間に薄れていたのです。最新刊の冒頭にあったドラマ化を告知する文章や、ネット上の一連の発言を振

          例の件の話

          銀行にもナンバーポータビリティを

          声を大にして言いたい。銀行はナンバーポータビリティを導入すべきだと。念を押せば、電話番号の話ではない。口座をすぐさま他行に移せるように、番号を共通にしてほしいのである。 年末に財布を落としてしまった。何か自分の失敗ばかり書き連ねている気もするが、それはまた別の話だ。すぐさま交番に向かったものの、数時間後に届けられた先はコンビニだった。この点についても色々語りたいけれど、話がどんどん逸れるのでやめておく。 手元に戻ってきた時には、もう手遅れだった。カード類は全て止めた後で、

          銀行にもナンバーポータビリティを

          老いと成長、人生の原理

          元をただせば「するめスティック」である。テレビ番組で紹介されたのを見て、すぐに購入してしまった。子供の頃から大のイカ好き。食べ始めたら止まらない。 ところが、思い切り噛んだ左側の奥歯がズキリと痛む。虫歯の多さは昔からだが、いつもの感じとどこかが違う。水を含んでも痛くはないし、放っておけば気にならない。 歯医者に行ったら虫歯ではなかった。どうやら歯根が割れているらしい。だいぶ昔に神経を抜いて、かなり脆くなっていたところに、スルメがとどめを刺したかたちだ。 セカンドオピニオ

          老いと成長、人生の原理

          差異化という言葉

          仕事上のやり取りをしていて、ふと「差異化」という言葉を思い出しました。要は「差別化」のことなのですが、自分が働いていた職場では「差別化」を「差異化」と書き換えるのが通例でした。 あるとき「インテリヤクザ」と言いたくなるほど強面の上司に、「そこは『差別化』じゃなくて『差異化』だろう」と低く通る声で諭された印象が今も強烈です。ずっとそういう教育を受けてきたせいか、「差別化」と書くつもりで手が自動的に「差異化」と打っているほど、身に染みついた習性でした。 ただし冷静になると、こ

          差異化という言葉

          「死ぬ気で… 殺す気で 書く」に寄せて

          『違国日記』を読み終わりました。以前から気になっていたマンガで、どうやら最近完結したらしく、Amazonでセールをしていたので試しに読み始めたら、止まらずに最後まで買ってしまいました。面白かった。 でもここで書きたいのは作品の感想ではありません。作中に登場して気になった一言が色々な連想を呼び覚ましたので、とりあえず書き留めておこうと筆を取った次第です。そう、見出しにも掲げた「死ぬ気で… 殺す気で 書く」という台詞。 元々このマンガに興味を持ったのも、この一言があったからで

          「死ぬ気で… 殺す気で 書く」に寄せて

          シンギュラリティが起きてしまった感、あるいは人とAIの思考の決定的な違い

          シンギュラリティは訪れたのか 承前 いきなりですが、文章を書くという領域に限ると、AIが人の能力を超えるときは来たのでしょうか。私はそうだと思っています。シンギュラリティを「人の能力をAIが上回ること」と捉えるなら、シンギュラリティは既に起きたとの立場です。ただし、かなりの留保付きではありますが。 前回書いた通り「知性」という言葉に決まった定義がないのと同様、書く力も数々の評価軸から成る多角的な技能であり、ある面では人を超え、別の点ではまだまだ劣るのが、言語処理能力を

          シンギュラリティが起きてしまった感、あるいは人とAIの思考の決定的な違い

          言語兵器の脅威と対策

          政府広報 言語兵器に対する注意喚起 次の文を注意深く読んでください。 ------------------------------------- ……気がつくと、あなたは横たわり拘束されている。目を開けても真っ暗で、光がないせいか、目が見えなくなったのかわからない。手や足を持ち上げようにも、何かに締め付けられて動かない。肌は露出し、■■だけが衣類で覆われているらしい。  喉の奥にわだかまった重い気分が、胃に向かって沈んでいく。恐慌が走り出す寸前、息が浅くなった瞬間に、液体が

          言語兵器の脅威と対策

          ChatGPTと考えるシンギュラリティ試論

          ゴッドファーザーの発言 ショックで目が覚めました。起き抜けに読んだニューヨークタイムズのニュース、「AIのゴッドファーザーがグーグルを去る、来るべき危険を警告(‘The Godfather of A.I.’ Leaves Google and Warns of Danger Ahead)」。かのジェフリー・ヒントン教授がGoogleを辞めた。しかも、その理由が「AIのリスクについて[Googleの社員という立場に制約されずに]自由に発言できるようにするため」というのですから

          ChatGPTと考えるシンギュラリティ試論

          ChatGPTのフーコー『言葉と物』解釈

          --ミシェル・フーコーが「言葉と物」(英語:order of things)で描いた、「人間」の概念に関する主張を要約してください。 ChatGPT: ミシェル・フーコーの「言葉と物」(英語:The Order of Things)は、西洋文化における知識体系の歴史的変遷に関する著作で、特に「人間」の概念に焦点を当てています。フーコーは、「人間」の概念が一定ではなく、異なる時代や文化によってその意味が変わると主張しています。 彼は、西洋の知識体系が古典時代から現代にかけ

          ChatGPTのフーコー『言葉と物』解釈