自己満足

先日、第一志望の会社から不採用通知のメールが来た。

ミドルベンチャーくらいの規模で、特殊なミッションを掲げている会社であった。インターンにも参加し、説明会や面談などで会社の人と話していく中、この会社しかないと決めつけていた。運命の出会いだとすら思っていた。

自分のやっていること、やりたいことをそのまま体現しているような企業でありながら、会社の規模感などからも推察できるようにそこまで難易度が高くないということから、内定をもぎ取れるものだとばかり考えていた。

現実はそんな甘くなかった。

一次面接に現れたのは、背丈のある、バリキャリ風の女性だった。彼女は僕を面接の部屋まで導くと、机にパソコンを置き、しばらくそれと向き合いながら、僕に投げやりな質問をした。この時からとても嫌な予感がした。

「確固たる想いを持って自分の生き方を決断してきた人たちを応援したい」と、ウェブマガジンを立ち上げた話を僕は彼女にした。様々な人と出会い、時には厳しいお言葉も頂いたが、そのどれもが貴重な体験になったことを打ち明けた。

彼女はその話に対して「それで取材対象の人にはどんな価値を与えられたの?」と言った。僕は「取材した人たちの生き方を広めることはそれ自体に価値があるし、記事が公開されることによって彼らの新しい仕事に繋がるかもしれない」と答えた。

腑に落ちない様子の彼女は「それって自己満足だよね?」と言った。

僕はもう何も言えなかった。そして彼女は「自己満足じゃなくて、別の価値を与えられるとしたら今何ができると思う?」と言った。これはもう「自己満足はやめて、ウェブマガジンとは別のビジネスとしての取り組みをしろ」と言っているようなものではないか。

だから「取材対象が自分の想いを叶える上で、事業における課題などがあれば解決するようなコンサルティング・及び実践支援を行う。例えば人材紹介や、マネタイズ、マーケティングなど、実践的な支援を行うことでしょうか」と思い付きのアイデアを話した。

それに対するコメントは「それは君よりもっと偉いひとがやればいいんじゃない?」である。まさしく一蹴だった。「それよりも今君ができることを教えてよ」と、どんどん本筋からそれて行って、意図が全く不明だった。発想力や分析力を訊ねるにしては、随分投げやりで、話の流れも行き当たりばったり、適当なものだった。

もちろん僕の答え方が悪かったということもある。それにしても、良いところを引き出すというよりは、企業の価値観と合わない点を積極的にあぶりだす様な面接だったように感じる。

その二日後に不採用通知が来た。本当に心から入社を切望していた。どれくらい御社を志望しているのか、それはなぜか、入社が叶えばどんなことがしたいか、それらを全くアピールすることなく、第一志望の選考は一次面接で幕を閉じた。

反省

僕は愚痴が書きたかったわけではない。作品をつくるという観点ではなく、アウトプットの場にしたく、noteを借りることにした。

確かに面接官に対してはとても嫌悪感を抱いたが、自分にも反省するべき点は沢山ある。感じたことを記す。

1.「自己満足だ」と断定されたときに、どういう点でそう判断されたかを訊かなかった

面接において、自分の悪い点を指摘されたときは素直に受け取るべきだと考える人は多いかもしれない。しかし、それでは指摘が事実だと肯定することになってしまい、弁解の余地がなくなってしまう。また弁解ができたとしても、ぼやけた反論になるのがオチだろう。

それよりも、指摘について判断の基準になった要素を訊ねる。そしてそれに対するロジックをピンポイントで話すことによって、相手の疑念を払拭できるのではないか。

2.自分と他者という軸で話さなかった

自分がどうした、どのようなことを感じた、考えた、という自分の軸だけで、他者に対してどんなことができたか、どんな成果を生んだか、という視点が欠けていた。もしくは、そのような二つの視点で分かりやすく話すことができなかった。

そもそも、人に対して明確な価値を生み出せなかったという指摘はとても痛い。これに対して自分なりの答えを用意できていなかった時点で、僕の負けは確定していたのだろう。前者の「自己満足」という印象を与えたのはこういった側面からかもしれない。

3.甘い考えを話した

組織を動かすうえでの困難とそれをどう乗り越えたかという質問に対し、「組織のためを常に思い、頭ごなしに怒らない。理解する姿勢を大事にする」と答えた。

そこにも、他者からの観点が抜けていたことはとても痛い。アウトプットや成果に対する姿勢の甘さが露呈したのだろう。これも自己満足だと指摘された一因のように感じる。

4.質問への答えにキレがなかった

「一番の失敗は何か」という質問に、結論ファーストで答え、その後に内容を解説したが、「結局何が失敗なの?」ともう一度訊かれた。長々と話してしまったこと、質問に対する答えに若干のずれがあったのだろうか。

質問に対する答えに若干のずれがあったとすれば、
「そもそも失敗とは何か?」
前提をそろえてから答える、というのも必要かもしれない。

もちろん、面接官がそういうことを意識せずにぼやけた質問をし、結果ぼやけた回答が返ってきたから「で?」というダメ押しをする、こんな上下構造が無意識化に働いていたとしたら、僕はこの会社をぶっ壊すことを決意するだろう。



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