[書きとめ] Blue emitting gold nanoclusters templated by poly-cytosine DNA at low pH and poly-adenine DNA at neutral pH

https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2012/cc/c2cc32841k

概要:

クエン酸でテトラクロロ金(Ⅲ)酸を還元した場合、酸性条件下でポリシトシン30merまたは中性条件下でポリアデニン30merを共存させると青色発光の金ナノクラスターが合成された。

背景:

DNAをテンプレートとして金ナノ粒子を合成する試みはこれまでに報告されているが、DNAをテンプレートとして金ナノクラスターを合成した報告はない。
テンプレートとしてDNAを用いることによるメリットは下記の通り。
・アプタマーを応用すれば分子認識の機能を付加できる
・タンパク質と異なり分子サイズが小さく、エネルギー移動に対してリガンドによる阻害を受けにくい
・塩基対の組合わせなどを自由に制御でき、化学合成によって機能化できる
・生体適合性に優れる

美味しいところ:

30merポリシトシンの場合は酸性、30merアデニンの場合は中性でのみ金ナノクラスターの形成が認められた。
蛍光強度の最大値は前者のほうが大きく、蛍光波長は前者のほうが短い(シトシン系:ex~275nm/em~430nm @peak, アデニン系:ex~280nm/em~480nm @peak)
"シトシン選択的"という点に関連する研究として、過去にシトシンのペアのAg+イオンを介在して相互作用することは報告されている。
C-Cのミスマッチを持つdsDNAにAg+イオンを作用させると、Tmが上昇した(=シトシンとAg+が相互作用して二本鎖形成の安定性向上)。
参照:[https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2008/cc/b808686a]
Auを用いる今回の系でも同様の結合が生じているもの推測されるが、ナノクラスター形成が酸性pHに限定されている。
シトシンのpKaは4.6であるため、pHがそれ以上の場合はプロトン化している。
Au3+イオンに対して強く結合しすぎてナノクラスター形成に至らず、逆にそのpH以下の酸性条件下では比較的弱く結合した状態のためナノクラスター形成に至ったと考察されている。
また、ナノクラスター形成に必要なシトシン量を比較すると、Au+シトシンで形成される金ナノクラスターと、Ag+シトシンで形成される銀ナノクラスターとでは後者のほうがより少ないシトシン量でナノクラスターが形成される。
ゆえにpH3条件下におけるシトシンと金の結合作用は、中性条件下におけるシトシンと銀の結合作用よりも弱いと考えられる。
これら2つの観点は論理的に合致している。

感想:

Au表面に対しての相互作用が強いのは、Aアデニン>Cシトシン≧Gグアニン>Tチミンの順であることがこれまでに報告されている。
参照:[https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ja035756n]
バルクの場合とナノクラスターの場合とでは分子が結合するシチュエーションが異なるため、同様の傾向はあてはまらないような気がするが
この報告内容を見る限りでは、全く別物というわけでもなさそう。

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