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短編小説の箱庭

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一定のルールがないと逆に上手く息ができなくなってしまいがちの幾兎が、ルールなしで綴った短編を寄せ集めたマガジンです。 淡かったりハッピーだったり黒かったり、いろんなヤツが生息して…
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エンターテイナー

消毒液が今日はやけに染みた。手を見ると真っ赤にふやけていて、ムズムズとしたかゆみが這った。元々弱い肌で洗剤を使った後はよく負けていたのだが、ついにアルコールもダメになってしまったか。そんなことをぼんやり思いつつも、同じように消毒と検温に並ぶ人の波の中じゃ泣き言も言ってられず、そのまま列に流される。
僕の職業を一言で説明するのは難しい。「演者」としてステージ、あるいは画面の向こう側に立つこともあれば

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